応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
現状からすると俄かには信じ難いような話だが、かつて、ポルトガルは世界帝国だった。
世界帝国も世界帝国。スペインと共にローマ教皇立会いの下で地球を真っ二つに分割し、「こっちの半球はスペイン領。こっちの半球はポルトガル領」と定めたトリデシラス条約なんてぇものを締結しちまったぐらいの世界帝国だ。勿論、その半球に住んでいる住民の意思なぞ、知るどころか気にかけもしない。それどころか、異教徒の有色人種(※1)なぞ人間とは思っていなかった事は、賭けても良いぐらいだ。南米最大の国ブラジルが、南米で唯一ポルトガル語圏で、それ以外の南米諸国がスペイン語圏なのは、此のトルデシラス条約に依るから、「妄想的な世界征服条約で、実害は殆どなかった。」等と澄ましていられる条約ではない。我が国が同条約に従って植民地となる事を回避できたのは、いくつかの幸運と先人達の努力の賜物である事を、忘れるべきではない。
閑話休題(それはさておき)
AFP通信が報じるのはそのポルトガルの近況。何でも、ギリシャに端を発した経済危機により、イタリアやスペインまで怪しくなってきた欧州経済事情を受けて、ポルトガルから旧植民地へと職を求めて脱出するポルトガル人が増えて居ると言う報道。その「旧植民地」の一つにBROICSとも賞されるブラジルであるし、何しろ地球の半分を支配しようとした世界帝国ポルトガルであるから(※2)、職を求めて脱出する「旧植民地」には事欠くまいが、報じられているのはブラジルと・・・アフリカ南西部のアンゴラである。
1> 数十年間続いた内戦が2002年に終結したアンゴラは、
2> 石油ブームが国家再建の追い風となり、2012年には12%の経済成長が見込まれている。
と報じられているから、ロシアを救った石油ブームがアンゴラにも追い風になっているらしい。昨今の「脱原発」ブームで、少なくとも当面の間石油、石炭、天然ガスと言う火力発電所の燃料は高値安定が見込めるから、ロシアもアンゴラもホクホクであろう。
他方、ポルトガル本国のある欧州はと言うと、
3> ギリシャ、アイスランドに端を発し、
4> 域内第3位、第4位の経済を持つイタリア、スペインまでもが脅威にさらされている欧州債務危機の中
と報じられており、別の報道ではドイツの国債まで金融機関の応募が調達予定額を大幅に下回る異例の「札割れ」を発生したと報じられている。「イタリアが3位で、スペインが4位かよ(※3)」とか、「"脱原発"なんて恰好つけるからだぜ(※4)」とか言う突っ込みはさて置き、EU域内も仲々容易ならぬ事態である(※5)。
で、職を求めて、ブラジルやらアンゴラやらへ脱出するポルトガル人が増えて居ると言うのだから、思えば遠くへ来たものである。
5> ポルトガル人にとって旧植民地、とりわけブラジルとアンゴラは言語的、文化的に親しみ深い
と言う、シレッとしたAFP報道には、可也頭に来るがね。
己ら、ブラジルやアンゴラ土着の言語、文化、宗教を、植民地化によって滅ぼした、少なくとも弱体化させたのであろうが。
<注釈>
(※1)勿論、私はその一人だ。
(※2) そうは言っても、その後、相当部分は後発の世界帝国であるイギリスやフランス等に取られてしまうのであるが。その意味では、トルデシラス条約も、その立会人になったローマ教皇も、「実害は少なかった」とは言えそうだが。(※3) こうして見るとEUって、結構「経済的牽引車」が少ない経済連合体だよな。客車の方が随分増えているし。
(※4) 先頃ドイツ政府が宣言した「脱原発」方針が、直接「ドイツ国債札割れ」につながったと、主張するつもりはない。が、それに続くシーメンス社の原発事業撤退=原子力技術放棄は、「ドイツ国債札割れ」と言う異様な事態の一因となったであろう事は、想像に難くない。(※5) そう、M9級の地震を喰らった訳でもなければ、原発事故が起こった訳でもなく、どうしようもないほど無能で権力に執着するだけの国家元首を頂いている訳でもなさそうであるにも拘らず。