TPPは国論を二分している。が、二分するが故に、旗幟の鮮明さが必要だろう。

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 上掲記事を補足するならば、TPPについて産経は基本的に「TPP参加賛成派」なのであるが、【正論】の中にはTPP参加反対の意見も散見される(*1)。「新聞社としての意見が一貫していない」とも言えるが、社説・オピニオン欄は愚か投書欄まで「新聞社の意見で一貫している」様な朝日新聞よりは遥かにマシな状態であろう。何度も書くが、異論・異説に対する寛容は民主主義の根幹であり、自由な報道機関が民主主義の守護者たりうる(*2)所以でもある。同じ新聞紙面に新聞社とは異なる意見が掲載されて居ると言うのは、新聞社の度量と自信を示す物であろう。
 
 だが逆に言えば、それだけTPPを巡る参加可否の議論は、意見が分かれて居ると言うことだろう。案の定で朝日はじめとする三赤新聞、特に下っ端の沖縄二紙は「米国追従」としてTPP参加には反対している。中国を外しているTPPは「中国包囲網」となる可能性無きにしも非ずだから、中国は良い顔していないし、それ故の三赤新聞のTPP反対であろうと考えると、「TPP参加交渉開始を表明する」事は少なくとも我が国益ではありそうだ。
 
 だが一方で、「ゴーマニズム宣言」で有名な「右翼」と目されている漫画家・小林よしのり氏は「TPP参加反対」を唱えている(*3)し、産経【正論】で「TPP参加反対」を主張する自民党・稲田朋美議員も「右翼」とされているから、「殆ど生まれつきの右翼」たる私としては心穏やかではない。見渡す限りにおいて、左翼=TPP反対派と言うのは一貫しているようであるが、右翼はTPP賛成派とは限らないようであるから。
 左翼がTPP反対一枚岩で、右翼がTPP賛否分裂であるならば、世論はTPP反対に傾きそうな物であるが、経団連がTPP賛成を表明し、農協がTPP反対を表明するなどして、全体としては「国論二分」で「ややTPP賛成派有利」な様である。(*4)
 
 世論動向・世上は上記のようであるが、では自民党のTPP政策、と言う前に、私の立場を明確にすべきだろう。私はTPPを、どう考えているかを。
 
 「第一印象」は、「三赤新聞がこぞって反対する以上、これは国益に違いない。」と言う半ば「カン(*5)」である。より具体的には「中国様の国益に反することだろう」と言う「予測」。事実、三赤新聞、特に下っ端の沖縄二紙は、首相たる野田の「TPP参加交渉開始表明」を「対米追従」「傲慢な米国中心主義」等と非難しているし、TPP賛成派の産経は同表明を「日米首脳会談のお土産(*6)」とも評しているから、「TPP参加は日米関係をより深化させる」と言う期待ないし懸念は、TPP賛成派/反対派に共通する物のようだ。つまりは「衆目の一致するところ」と言えよう。「米国中心、中国外し」と言うのが現状TPP参加国の枠組みであるから、かかる期待(ないし懸念)は少なくとも可能性あるものだ。
 
 であるならば、今回首相たる野田が為した「TPP参加交渉の開始表明」私は賛同するものである。国家の安全保障は最上位の優先事項と考える私としては、「対米追従」は「対中追従」や「日米中三角関係」なんぞより遥かに重視すべきと考えており、そう考える最大の理由は「中国は敵」であるからだ。
 無論、安全保障とて最優先とて国益の一つである以上、払う(かも知れない)犠牲と利益の比率=コストパフォーマンスは忘れるべきではない。TPPについて賛否両論が分かれ、世論調査結果でも「メリットとデメリットの説明が不足」とする意見が多いのは、一つには言うところの「TPPのメリットとデメリット/コストとパフォーマンス/利益と犠牲」が明確になっていないからであろう(*7)。そのデメリットの方を懸念すれば否定論になろうし、メリットの方を期待すれば肯定論ともなろう。
 
 先述の通り「衆目の一致する」対中牽制と日米同盟深化を除けば、TPPに期待されるメリットは「21世紀の開国」とも表現される市場の開放による経済的利益にあるようだ。経団連がTPPを推進するのもこのためである。一方でその「市場の開放」は我が国産業に対する打撃となると考える農協などはTPPに反対をする。共産党や社民党が強調するのもこちらの打撃・デメリットの方だ(*8)。先述の産経「正論」にて、稲田議員は指摘している。
 
稲1>  コメにかける関税をどうするのか。輸入食品、医薬品、化粧品の安全基準はどうなるのか。
稲2> 海外の弁護士や外国人労働者の規制なくして、国民の生活や雇用は大丈夫なのか。
 
 流石は自民党議員と言うべきか、指摘も懸念も首肯出来るものが多々ある。これらの事項に対しTPPがどう影響するかは、現状審らかではない。と言うよりは、大枠合意までしか未だ為されていないTPPに於いては、其処まで詳細はまだ決まっていないと言うのが真実であろう。つまりは、開始したばかりのTPP参加交渉次第と言う事である。
 
稲3> ISD条項(投資家と国家間の紛争条項)による司法権、立法権の侵害の問題や最大の非関税障壁とされる国語は守れるのかという
稲4> 文明の危機の問題として議論しなければならない。
 
と言う指摘も同じく稲田議員が表明しているところ。これらの内、特に国語なんぞは絶対に死守すべき物であるとは私も同意する。例えば「英語を公用語或いは準公用語にしよう」等と言うのは日本文明の自殺であり、皇祖皇宗に対し申し訳ないどころの話ではない。それこそ、罪万死に値するものと考えるが、やはり「開始したばかりのTPP参加交渉次第」である。何しろまだ、決まっているのは大枠だけで、その大枠すら詳細は不明なのであるから。
 言い換えるならば、少なくとも稲田議員の様な「TPP反対派」が抱く懸念は尤もである。故に、それを考慮し、「守るべき物を守るようにTPP交渉を進める」と言う選択肢はあるはずだ。先述の安全保障上のメリットと合わせて考えるならば、「守るべき物を守るようにTPP交渉を進める」心算で、此の時点で「TPP参加交渉の開試」を宣言する事は、同意できる事である。民主党政権下の民主党党首にしては、珍しいことであるが。
 
 だが、その一方で、
 
稲5> 民主党に国益がかかる外交を任せておけようか。
 
と言う、稲田議員の指摘にも私は諸手を挙げて賛同する。第一、民主党政権発足以来、「国益追求の手段にして、弾丸を使わない戦争」である外交なんぞ、殆ど見た覚えが無いのであるから、なおさらだ。TPP交渉は、正しく、「国益の追求」であり、「弾丸を使わない戦争」となろう。故に、民主党政権なんぞには任せて置けない。
 
 つまり、私のTPPに対する立場は以下のように要約出来る。
 
 (1) TPP参加は安全保障上のメリットたる公算大である。故に、首相たる野田が実施したTPP参加交渉開始表明は正しい。

 (2) 同時にTPP参加交渉は、正しく「国益の追求」であり、「弾丸を使わない戦争」となろう。故に民主党政権には任せられない。

 (3) 従って、首相たる野田は、可及的速やかに解散総選挙を行い「民意を問う」べきである。
 
 私の意見が上記の通りであれば、私が自民党のTPP政策に求める物は、自ずから明らかであろう。
 
 [1]  自民党は「TPP参加反対」で世の関心や、それ以上に社民党や共産党の歓心を買うべきではない

 [2]  自民党の取るべき上策は、「TPP参加反対」の旗を降ろし、「TPP参加対象の絞込み」「対TPP絶対死守目標の設定」などの条件闘争とすることである。

 [3] 自民党の取れる中策は、あくまで「TPP参加反対」を主張して野田政権を追い込み、解散総選挙に持ち込むことである。

 [4] 自民党の取るべからざる下作は、TPPへの参加可否を不明のまま、「拙速だ!」「説明不足だ!」と愚痴にも似た政権非難を続ける、現状の続行である。
 
 如何に、自民党。
 如何に、国民。
 

<注釈>

(*1) 【正論】弁護士、衆院議員・稲田朋美 普天間のツケをTPPで払うな  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111107/plc11110703160000-n1.htm
 
(*2) 少なくとも「守護者となることを期待される」
 
(*3) 尤も小林氏は、脱原発も唱えているようだから、私からするとエネルギー政策では論敵と言う事になりそうだ。
 
(*4) 内閣支持率42%に急落 TPPに不安感56% 野田首相の指導力なさに批判  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111114/stt11111411480000-n1.htm 
 
(*5) 残りの半分は、三赤新聞に対する私の「偏見」かもしれないが。
 
(*6) 
但し、あまり受けの良くなかった「お土産」 
 
(*7) より大きそうなのは、「回答の選択肢の一つとして、それが挙げられている事」でありそうだが。世論調査なんてのは、質問表や回答欄の作り方でも、変わってくるものだそうだから。 
 
(*8) 本音のところはわからない。が、「中国様の利益」になるこをを、社民党や共産党が見逃そうか。