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 忘れたくても忘れられない事実だが、東日本大震災とそれに続く福島原発事故を受けての(*1)「脱原発」をスーパーゾンビ・菅直人(当時首相)が言い出す以前には、彼奴は日本の原発輸出成功を、己が功績として誇っていたのである。無論、「他人の功績は全て自分の物。自分の責任は全て他人の物」をドクトリンにしていたと思われる節が多々あるスーパーゾンビ(氏名省略)の事であるから、「原発輸出成功」も「横取りした他人の功績の一つ」でしかないのかも知れないが、独シーメンス社の原子力事業撤退が端的に現す通り、「脱原発」と「原発輸出=原子力技術維持」との両立は、普通に考えれば並大抵のことではない。
然るに、現首相たる野田氏は、管直人の打ち出した「脱原発」方針を放置したまま、対ベトナム原発輸出を容認している。それは商業道徳上も技術的にも、民主党党首としては珍しいぐらいの妥当な判断であると、私なんぞは断じるが、それでは(*2)世の反原発原理主義者たちや放射能ヒステリー患者は納まらない、らしい。
 今回取り上げるのは、読売を除く四大紙+産経のレギュラーメンバー5マイナス1紙に東京、沖縄タイムスを加えた六紙。フルレンジには読売と琉球新報が欠けた形だ。各紙社説タイトルとURLは以下の通り。
 
(1)産経 安全と原発輸出 「脱原発」にとらわれるな  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111107/plc11110703180001-n1.htm

(3)読売【参考】 原発防災区域 教訓を事故への備えに生かせ(11月2日付・読売社説)  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111101-OYT1T01298.htm?from=any

(4)毎日 対越原発輸出 安全確保が大前提だ  http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20111101ddm005070035000c.html

(5)朝日 ベトナム支援―原発輸出は考え直せ  http://www.asahi.com/paper/editorial20111102.html?ref=any

(6)東京 原発輸出 二重基準でいいのか http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011110302000039.html

(7)沖縄タイムス [原発輸出]理解できない使い分け  http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-11-05_25635/ 
 
 例によって比較表の評価項目は、産経と朝日の社説を横目で見ながら決めた。

(1) 原発の安全性

(2) エネルギー政策と原発輸出の関係

(3) 国際社会に対する日本の責任

(4) 越日関係のあるべき姿

(5) その他特記事項
 
比較表の方は例によって、朝日の方の主張を赤字で、産経の方の主張を青字で、両紙にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。
 

<注釈>

(*1) と言うよりは、十中八九政権延命のための思いつきで。その後、朝日を初めとして大いに盛り上がっているが、愚挙にして暴挙であると私が断じている
 
(*2) 或いは、「それ故にこそ」、
 

別れた賛否と自壊した反対論

 
イメージ 1
 
 さて、一覧表はいかがであろうか。

 「原発輸出」と言う題材からして予測できたところであるが、左右の横綱=朝日対産経の対立軸も鮮明に、美事に2グループに分かれたものだ。その鮮明な対立軸とは、「ベトナムへの原発輸出の是非」であろう。ベトナム(を皮切りとする)原発輸出を是とし肯定するのが産経であり、日経がこれに続く。読売は今回休場だ。対して原発輸出を否とし、否定するのが朝日であり、東京、毎日、沖縄タイムスがこれに続く。いつも通りの「産経グループ対朝日グループ」に綺麗に分かれた。
 
朝日グループが原発輸出に反対する理由は、朝日・東京・沖縄タイムスは押しなべて脱原発方針との矛盾を挙げている。私が「脱原発原理主義」と断じ、「原発停止至上主義」の疑いさえある東京が含まれているから、此の三紙が「脱原発方針との矛盾」を理由に原発輸出に反対するのは、「想定内」と言う事になる。

想定外なのは毎日。いや、いつも朝日グループに入って「左の大関」とも言うべき毎日だから、原発輸出に反対するのは充分想定内・予想通りなのだが、その理由が・・・

毎1> ビジネスを優先し、危険と不安を輸出することがあってはならない。

すると何かね。ベトナム政府は金を払って危険と不安を輸入しているのかね。当該毎日社説に触れられるとおり、先行してロシアへ原発2基を発注しているのだから、「日本の原発は危険だが、ロシアの原発は安全だ」と考えない限り(*1)、ベトナムは「危険と不安の輸入」を既に決定している事になる。
 
毎2> この段階で経済的な利益を追求し、無条件に輸出を続けては、国際的な信頼は得られまい。

と、当該毎日社説は主張するが、「危険と不安の輸入」の為かどうかは不明であれ、ベトナムが買いたいと言っている原発を、日本が売らないとするならば、それこそ国際的信頼を失う事になろうが毎日の此の主張・此の社説は、常軌を逸しており、狂気の沙汰である。
 
 だが、常軌を逸して狂気の沙汰である点では、左の横綱・朝日とて負けては居ない。何しろ朝日社説に曰く。

朝1>  ベトナムが電力不足解消への協力を求めたとしても、その答えが原発である必要はない。
朝2>  ベトナムとの友好を進め、発展を手助けすることに異議はない。
朝3> しかしその方法は、いまの日本にふさわしいものであるべきだ。
朝4> インフラ整備や自然エネルギーの開発、人の交流など、多くの分野で協力できる。
 
上記朝1>「原発である必要はない。」として上記朝4>「インフラ整備や自然エネルギーの開発、人の交流など、多くの分野で協力できる。 」と、尤もらしい御託が並ぶが、要はベトナムが買おうとしている原発なんか売らずに、自然エネルギーやその他もろもろと共に別の物を押し売りしろと言っているのである。大体、上記朝1>「電力不足解消への協力を求めて居るベトナムに対し、原発を輸出せずに上記朝4>「インフラ整備や自然エネルギーの開発、人の交流など、多くの分野で協力したところで、電力不足は解消しないではないか。頓珍漢な議論にも程があろう。
それとも何か、自然エネルギーの開発は即座に完了して、私には想像も付かないような制御可能な莫大な電力量が自然エネルギーで発電出来るようになるか、人の交流で人力発電で以って原発並みの発電量を叩き出そうとでも言うのか。御託並べのおためごかしで論点のすり替え以外の価値が上記朝1>~朝4>にあるのか。
もしも無いのならば、そんなシロモノを、よくもまあ新聞社の顔にして、新聞の存在理由と私は考えている社説なんぞに掲げられるものだ。
 少なくとも朝日は、社説を「新聞の存在理由」とは考えていないと言う事が良く判る。「新聞の顔」とは考えているかも知れない。それは私に言わせればとんでもない間抜け面だが、朝日は恐らくは得意満面なのであろう。
 
左の幕下、東京新聞と沖縄タイムスに至っては、表に纏めて主旨を書いた時点で、論評する気さえ失せた。要は脱原発と原発輸出は矛盾する。だから原発輸出に反対だ。としか言っていない。主張は明確だが薄っぺらで、薄っぺらであることで朝日や毎日のような馬脚を現す事は回避した形。これはこれで、社説としては相当恥ずかしいシロモノだと思うんだがね。

日経「右の小結(*2)」だけに、原発輸出を歓迎するが、条件を付ける。

経1>  ただ、それには大きな前提条件がある。
経2> 日越両首脳が署名した文書がうたうように、福島の事故の「徹底的な検証から得られる経験と教訓」を生かすことだ。
 
 つまりは福島事故の反映による安全性向上であり、それは可能であると日経社説は確信している。「日本製原発輸出=危険と不安の輸出」と断じて思考停止してしまっている毎日社説とは好対照だ。
惜しむらくは日経社説、管直人の政権延命の思いつき(と私は確信している)「脱原発」と原発輸出の相関に触れていない。ま、「脱原発」の「だ」の字も出てこない社説によって、一定の主張を間接的に為している、とは言えるが。即ち「脱原発無視」と言う主張を。

産経は「右の横綱」だけあって、原発輸出に賛成し、脱原発との相関もタイトルからして言及する。曰く「安全と原発輸出 「脱原発」にとらわれるな 」。即ち「原発輸出と脱原発は矛盾する」から「原発輸出が正である」と言う主張だ。実に明快であり、私の考えとも(毎度の事ながら)合致する。「福島原発事故の反映」についても縷々述べて、原発の安全性工場がある程度は既になっており、今後さらに向上する事を述べ、

産1>  自然エネルギーの比率を徐々に高め、原発への依存度を低くしてゆくことに異存はない。
産2> しかし将来展望としては、地球温暖化を抑止しながら70億の地球人口を支えるため、
産3> 「原子力を安全に使いこなす」という選択肢も残しておくべきだ。
産4>  「脱原発」に過度にとらわれると、日本のエネルギー政策の幅を狭め、
産5> 国際社会の期待にも応えられなくなってしまう。


として、国内の原発再稼動は安全性を確保した上で推進すると共に、原発輸出で世界の期待に応えろと主張する。上記産4> 「脱原発」に過度にとらわれる 、と言うのが聊か歯に物挟まったような言い方(*3)だが主張は明快だ。
 
 以上から、今回の社説比較を数式として表すならば・・・・

産経 ≧ 日経               
論外:朝日、毎日、東京、沖縄タイムス
 朝日、毎日、東京、沖縄タイムスを「論外」と言う類の少ない評価としたのは、今尚原発推進論者である私と異なる意見であるから、ではない。前述の通り、その社説があまりに頓珍漢、若しくは中身が無いからである。
 

<注釈>

(*1) 何しろ、かつて毎日含む多くのマスコミはソ連は平和勢力で、ソ連の核兵器は平和的と言う恐るべきダブルスタンダード・ダブルシンクを平気で適用していたそうだから、その名残で「ロシアの原発は安全と考えていても不思議はない。多分、チェルノブイリ事故なんて物は西側の悪意ある宣伝として片付けられているのだろう。
 
(*2) もう一寸昇格しても良いかな。今回の社説ならば「右の関取」ぐらいか。
 
(*3) 前述の通り、私は「脱原発なぞ、現時点では愚挙にして暴挙」と断じている。商業紙ほどの責任がないから、と言うのもあろうが。