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 「社説を斬る」シリーズで再三指摘している通り、東京新聞は脱原発を自己目的化した、脱原発原理主義者である。であるならば、玄海原発再稼動ともなると放っては置けないのだろう。その玄海原発が定期点検で止まっていたのなら、菅直人思い付きの「ストレステスト」のために暫く稼動できないのだが、今回止まったのは操作ミスでしかないから、九電の腹一つで再稼動は可能になるから、脱原発原理主義者としては由々しき事態だ。
 
 ま、先ずはその東京社説、御一読願おうか。
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東京新聞社説 玄海原発再開 不信はまた深まった

 
 九州電力という会社は、よほど世情にうといのか、それとも聞く耳を持たぬのか。人為ミスは機械の故障以上に恐ろしい。なのに拙速な再稼働。原発に対する不安と不信はまた一層深まった。
 九州電力は、定期検査で運転停止中の玄海原発2、3号機の再稼働をめぐり、第三者を装った社員らが再稼働の希望を寄せた「やらせメール」問題で、「原発再開のためなら何でもするのか」と指弾を受けたばかりである。
 その後、この問題について自ら設置した第三者委員会と、佐賀県知事の関与をめぐって対立したが、最終報告書の再提出にも応じていない。経営トップの進退問題も、うやむやにしたままだ。
 その上、今度は検査ルールのすき間をつくような、4号機の強引な再稼働である。
 4号機の自動停止は先月四日。運転中の部品交換作業の手順に誤りがあったため、異常を検知した発電タービンが止まり、それを受けて原子炉も停止した。運転中の作業を考慮に入れていなかった手順書の不備が原因だった。
 今回は幸い大事には至らなかったが、人為的なミスこそ恐ろしい。どんなに安全に設計された機械も、人がその操作や扱いを誤れば、致命的な事態を引き起こす。
 今回の自動停止は、結果が出るまで数カ月間の停止を余儀なくされるストレステスト(耐性評価)の対象外ではあるだろう。だが、人為的ミス、あるいは手順書の不備といった初歩的ミスを軽く見るかのように再稼働を急ぐ様子は、経済産業省や地元首長らの動向も含めて、市民感覚とは、かけ離れたものといわざるをえない。
 政府は一日、九電管内にこの冬、前年比5%以上の節電を求めることを決めた。それに呼応するかのような再稼働の強行は、国民の不安より政府の意向、安全よりも経営の安定を優先させる消費者不在の企業風土をあらわにしてはいないだろうか。
 4号機は、来月すぐに定期検査に入る。引き続き停止させたまま、機械だけでなく手順書を隅々まで点検し、現場の作業員から本社の管理部門に至るまで、ミス防止の再教育に十分な時間を費やすのが筋ではないか。
 そして、その経過と結果を地元首長だけでなく、国民全体に正しく説明すべきだった。これでは、原発だけでなく、この国のエネルギー行政に対する不信がますます募るだけだ。
 
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誰の「不信」が深まったのか

 さて、如何であろうか。
 先行記事にした通り、佐賀新聞は「地元の同意なき再稼動」を非難しようとして失敗した(*1)。地元の同意は一定レベルで裏書されたし、時事通信報道では地元同意を得ようとする九電の努力まで報じられてしまったのでは、佐賀新聞の立つ瀬はなかろう。取材不足が事実隠蔽による、自業自得ではあるが。
 
 だから、であろうか。東京新聞は、九電に対する不信と「人為的なミス」に対する不安を煽る事に決めたようだ。前者は兎も角(*2)、後者はなるほど上手い手ではある。
 
東1>  今回は幸い大事には至らなかったが、人為的なミスこそ恐ろしい。
東2> どんなに安全に設計された機械も、人がその操作や扱いを誤れば、致命的な事態を引き起こす。
東3>  引き続き停止させたまま、機械だけでなく手順書を隅々まで点検し、
東4> 現場の作業員から本社の管理部門に至るまで、ミス防止の再教育に十分な時間を費やすのが筋ではないか。
 
 いやはや、言いたい放題だ。東1>「今回は幸い大事には至らなかったのが正しくその恐ろしい」人為的ミスをカバーする「安全に設計された機械」のおかげであるというのに、安全設計の功績は無視して「人為的ミスの恐ろしさ」を煽り、手順書の点検とと再教育が完了するまで原発を稼動させるなと言うのだから、脱原発原理主義でもまだ足らない。原発停止至上主義とでも呼ぶべきか。手順書の点検も再教育も結構な事ではある。が、原発を止めたまま実施なければならないことではない。再稼動し、発電させながらでも出来ることだ。正に東京新聞が認める通り「幸い大事に至らなかった」のは、今回と同じ人為的ミスに対しては安全と実証されたと言う事でもある。
 
東5>  九州電力という会社は、よほど世情にうといのか、それとも聞く耳を持たぬのか。
東6> 人為ミスは機械の故障以上に恐ろしい。なのに拙速な再稼働。
東7> 原発に対する不安と不信はまた一層深まった。

 
 当該社説冒頭でかましてくれる東京新聞であるが、章題にもした通り、此の「不安と不信」は一体誰のものか。先ず第一に東京新聞のものではあろう。第二に、昨今大いに羽振りの良い各種反原発・脱原発団体のものでもありそうだ。「広く国民・市民一般と、東京新聞は主張したいであろうし、世論調査でもすればその主張も裏書されるかも知れない。 
 だが、九電は電力会社である。政府でも議会でもない。公共性が高いとは言え、一企業だ。その営業活動・企業活動が世論に直接掣肘される謂れは、全くない。
 今回人為的ミスにより図らずも停止してしまった玄海原発を再稼動させなければ、それだけの可制御な発電余裕が減るばかりでなく、「日に3億円」とも言われる火力発電の燃料代が嵩むのである。今の時期だからまだ「火力発電の燃料代が嵩む」で済んでいる。即ち「火力発電によって停止した原発分の発電」が可能であるが、これから寒くなると再び電力需要は増加する。下手をすればそれこそ、計画的ならざる停電を惹起してしまう。
 
 停電を起こさない事が、電力会社の最優先課題だ。であればこその一企業でありながらの高い公共性だ。それは世論やら風潮やら流行やらに阿って人気取りをする事なんぞより、遥かに重く、重大な、電力会社の責務だ。
 
 九電は東京新聞や、先行記事で取り上げた佐賀新聞や、各種反原発団体や、「市民の声」の非難をおかして玄海原発の再稼動に踏み切った。先行記事にもした通り、県知事と町長の「地元の了解」も取り付けての原発再稼動である。避難する向きは避難するだろうし、不安がるものは不安がるだろうが、天地俯仰に恥じるところなぞあるものか。
 
 むしろ私は、九電の断行を讃えるし、その「勇気」を多とする。九電よ、良くやった。前進せよ、九電。
 
 無論、私は再三繰り返すとおり、今尚原発推進論者だ。但し、原発推進原理主義でもなければ、原発稼動至上主義でもない。その分東京新聞よりも柔軟でもあれば、その分主張が「弱く」もあろう。
 
東8>  そして、その経過と結果を地元首長だけでなく、国民全体に正しく説明すべきだった。
東9> これでは、原発だけでなく、この国のエネルギー行政に対する不信がますます募るだけだ。
 
と、東京新聞社説は結ぶ。
 全く彼我の見解の相違、否、乖離は、目も眩むほどだな。私が我が国のエネルギー行政に不信があるのは、正に東京新聞が信奉する「反原発・脱原発」の兆候ゆえなのだから。
 

<注釈>


(*1) 丸い卵を四角く切る法―玄海原発再稼動を巡る報道を題材に  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36231190.html
 
(*2) 世上では非難轟々であるらしい「やらせメール」であるが、私はこいつが非難の対象かと言う処に大いに疑問を感じている。「第三者を装う」と言うのは虚偽ではあろうし、社員は原発に直接利害関係があるのも事実だが、直接利害関係者たる社員が「やらせメール」と非難されているような意思表示を、してはいけないものなのかね。

原発関連記事

(1)「原発如きが人類を滅ぼすオーバーテクノロジーなものか  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35039419.html
 
(2)石棺幻想 -福島原発事故処理法としての石棺方式を考える  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35166775.html     http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35166813.html
 
 (3) 私の原発推進論―または私が福島原発事故を経てなお原発を推進する理由。―前進せよ、人類。   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35630668.html
 
 (4)原発如きが人類を滅ぼすオーバーテクノロジーなものか-ホーキング博士「銀河系の知的文明はオーバーテクノロジーで100年と持たずに絶滅」   
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35039419.html#35711429
 
 (5)余剰電力は防衛力である-脱原発騒動と電力不足に状況によせて   
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35687699.html
 
 (6) 私の「自然エネルギー推進論」―フクシマ後も原発推進の立場から― 
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778036.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778053.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35778071.html
 
 (7) ドイツ降伏-独シーメンス社 原子力事業から撤退   http://www.afpbb.com/article/economy/2828751/7793213   http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36006950.html

【抜粋】東京新報社説を斬る!シリーズ

(1)「脱原発」の自己目的化-東京新聞社説「上関町長選 原発マネーと別れよう」を斬る!  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36039847.html

(2)やっぱり脱原発原理主義-東京社説「原発と社会の倫理」を斬る!  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36065678.html  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36065834.html 

(3)さらなる自己目的化-東京新聞社説「経団連 脱原発から目をそらすな」を斬る  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36048486.html