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今回取り上げるのは、産経と読売を除いたレギュラーメンバー五紙に東京新聞を加えた四紙。大概は「産経対朝日」の対立軸が明確になってから取り掛かる「社説比較シリーズ」だが、今回は故あって「産経抜」きだ。各紙社説タイトルとURLは以下の通り。
(1)産経 (該当なし)
(2)日経 これで冷温停止に進めるのか http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E4E0E2EAE7E4E2E2E1E3E3E0E2E3E38297EAE2E2E3?n_cid=DSANY001
(3)読売【参考】電力不足対策 節電と原発再稼働が不可欠だ(11月3日付・読売社説) http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111102-OYT1T01303.htm?from=any
(4)毎日 小規模臨界 監視と説明の強化を http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20111103ddm005070132000c.html
(5)朝日 核分裂の疑い―炉内の混沌を忘れまい http://www.asahi.com/paper/editorial20111103.html?ref=any
(6)東京 2号機「臨界」 情報開示さらに徹底を http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011110302000040.html
例によると、比較表の評価項目は、産経と朝日の社説を横目で見ながら決めるのだが、今回は「産経抜き」なので比較対象四紙を比較して決めた。読売はタイトルから判るとおり、大分切り口が違うので、参考だ。
(1) 放射性キセノンガス検出の意味
(2) 福島第1原発2号機の状況
(3) 福島第1原発1号機、3号機の状況
(4) 今後の方針
(5) その他特記事項
比較表の方は例によって、朝日の方の主張を赤字で、朝日にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。

今回「産経抜き」社説比較を実施する理由
先ず、先述の「産経抜きで今回の社説抜きを始めた」理由を説明しよう。
端的に言って、本件に関して産経から今後社説が出る可能性はない、と判断したからである。
本件と言うのは新ためて言うまでもないが、福島第一原発事故の近況で、2号機内の空気を除染するシステムで放射性キセノンが検出されたのが発端だ。放射性キセノンは半減期が短い事と、核分裂で生成される事から、これが検出されたと言う事は、比較的最近核分裂が起きた可能性がある。東電はこれを受けて、従来の水による冷却から、中性子を吸収し臨界を止める効果を期待出来るホウ酸水による冷却に切り替えた。「スワ、再臨界か!」「2号機ばかりでなく、1号機、3号機も再臨界している可能性があるのではないか!(1号機、3号機は空気除染を始めていないから、放射性キセノンも検出されていない)」と言う事で、産経以外の各紙がほぼ一斉に社説に取り上げた様だ。ああ、読売の社説は「参考」で、直接「放射性キセノン検出、核分裂反応の可能性」を扱ったものではない。が、原発問題については比較的冷静な日経も取り上げているし、それだけ世間の関心が高い、かどうかは兎も角、マスコミの関心が高い事象と言う事だろう。
何しろ社説のタイトルからして、「小規模臨界(毎日)」「核分裂の疑い(朝日)」と過激な文字が躍り、反原発原理主義者の東京に至っては、「」(カギ括弧)つきとは言え「臨界」と断言してしまっている。
「しまっている」と言うのは、これら社説が出揃った11月3日に、東電から発表があり、検出されたキセノンは自発核分裂によるものであり、核分裂が連鎖的に起きる「臨界」によるものでないと公表され、報告されたから。「自発核分裂」なる現象を、恥ずかしながら私は知らなかったのだが、以下に掲げる産経の用語解説で大意は言い尽くしているようだ。ウィキペディアにはもう少し詳しい解説がある。要は、放射性物質であるウランなどの原子核はその存在自体が不安定であるから、(*1)一定の確率で通常の核分裂の様な中性子の衝突がなくても核分裂してしまう原子があると言う事。ある程度不安定でないと起こらない現象だそうだが、当たり前ながら核物質豊富な原子炉内では常に起きている現象であるし、此の定義からするとそれを防止する方法もなければ、防止する必要もない現象である。したがって、量の多寡はあるものの、原子炉内にキセノンガスがあるのは、核分裂が連鎖する臨界状態か否かに関係なく、当たり前である。と、今回私は初めて知った。
端的に言って、本件に関して産経から今後社説が出る可能性はない、と判断したからである。
本件と言うのは新ためて言うまでもないが、福島第一原発事故の近況で、2号機内の空気を除染するシステムで放射性キセノンが検出されたのが発端だ。放射性キセノンは半減期が短い事と、核分裂で生成される事から、これが検出されたと言う事は、比較的最近核分裂が起きた可能性がある。東電はこれを受けて、従来の水による冷却から、中性子を吸収し臨界を止める効果を期待出来るホウ酸水による冷却に切り替えた。「スワ、再臨界か!」「2号機ばかりでなく、1号機、3号機も再臨界している可能性があるのではないか!(1号機、3号機は空気除染を始めていないから、放射性キセノンも検出されていない)」と言う事で、産経以外の各紙がほぼ一斉に社説に取り上げた様だ。ああ、読売の社説は「参考」で、直接「放射性キセノン検出、核分裂反応の可能性」を扱ったものではない。が、原発問題については比較的冷静な日経も取り上げているし、それだけ世間の関心が高い、かどうかは兎も角、マスコミの関心が高い事象と言う事だろう。
何しろ社説のタイトルからして、「小規模臨界(毎日)」「核分裂の疑い(朝日)」と過激な文字が躍り、反原発原理主義者の東京に至っては、「」(カギ括弧)つきとは言え「臨界」と断言してしまっている。
「しまっている」と言うのは、これら社説が出揃った11月3日に、東電から発表があり、検出されたキセノンは自発核分裂によるものであり、核分裂が連鎖的に起きる「臨界」によるものでないと公表され、報告されたから。「自発核分裂」なる現象を、恥ずかしながら私は知らなかったのだが、以下に掲げる産経の用語解説で大意は言い尽くしているようだ。ウィキペディアにはもう少し詳しい解説がある。要は、放射性物質であるウランなどの原子核はその存在自体が不安定であるから、(*1)一定の確率で通常の核分裂の様な中性子の衝突がなくても核分裂してしまう原子があると言う事。ある程度不安定でないと起こらない現象だそうだが、当たり前ながら核物質豊富な原子炉内では常に起きている現象であるし、此の定義からするとそれを防止する方法もなければ、防止する必要もない現象である。したがって、量の多寡はあるものの、原子炉内にキセノンガスがあるのは、核分裂が連鎖する臨界状態か否かに関係なく、当たり前である。と、今回私は初めて知った。
> 【用語解説】自発核分裂
> 中性子が放射性物質にぶつかることで発生する通常の核分裂と異なり、中性子の衝突がなくても起きる。
> 原子炉内ではキュリウム242や244が自発核分裂する主な物質としてあるが、ウラン238なども起こす。
> 核分裂の際に放出される中性子が、まれにウランなどに当たって新たな核分裂を引き起こすこともあるが、
> 基本的には単発的な核分裂が発生するのみで、核分裂が連鎖する「臨界」には至らない。
> 中性子が放射性物質にぶつかることで発生する通常の核分裂と異なり、中性子の衝突がなくても起きる。
> 原子炉内ではキュリウム242や244が自発核分裂する主な物質としてあるが、ウラン238なども起こす。
> 核分裂の際に放出される中性子が、まれにウランなどに当たって新たな核分裂を引き起こすこともあるが、
> 基本的には単発的な核分裂が発生するのみで、核分裂が連鎖する「臨界」には至らない。
原子炉内でキセノンガスが検出されても微量であれば何の問題でもなく、(*2)東電発表どおり自発核分裂によるキセノンガス検出であるならば、産経が社説に取り上げる題材とはなるまい。産経抜きで(多分シリーズ初)「社説比較」シリーズ記事にする所以である。
無論、東電の発表そのものを疑う事は出来る。だが、それならば、「東電の発表には疑義がある」旨、明言しなければならないだろう。
(1)東電が放射性キセノンガスの検出を発表した。
無論、東電の発表そのものを疑う事は出来る。だが、それならば、「東電の発表には疑義がある」旨、明言しなければならないだろう。
(1)東電が放射性キセノンガスの検出を発表した。
(2)放射性キセノンは核分裂に伴って生成されるものだ。
(3)故に、福島原発原子炉内では、今だ核分裂が起こっている。
(4)上記(3)は未だに原子炉内が不安定な状態であることを示している。
(4)上記(3)は未だに原子炉内が不安定な状態であることを示している。
(5)危険だ!年内に冷温停止なんて出来るものか!原発廃止!!!etc
と言う論理は、自発核分裂と言う現象がある以上、上記(3)から(4)の間が論理的飛躍である。「東電発表は嘘だ=自発核分裂以外の核分裂が発生している」とし、「連鎖した核分裂反応=臨界が起きている」と断言しない限り、この飛躍は出来ない筈だ。
無論、自発核分裂と言う現象を知らないか、知らない不利をすれば、上記(3)から(4)への論理的飛躍は可能で、容易だ。
以上を踏まえて、前掲の社説比較表を御覧になるのも、また一興だろう。
へ続く
<注釈>
(*1) 不安定であるからこそ、放射能と言う形でエネルギーを外に放出するのだから。(*2) 注意。放射性キセノンガスの量が示すのは、原子炉内の自発核分裂を含む核分裂の多寡と、核分裂後の経過時間である。放射性キセノンは、半減期が短い放射性物質だから、生成されててもドンドン減っていく。何にせよ、少ない検出量のほうが安全=「核分裂の回数が少ないor核分裂が起きてから自艦が経過している」と言う事である。