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 聊か旧聞に属するが、AFP通信が報じるのは、米国発「反格差デモ」のその大元・米国に於ける実態。何でも、「要求を明確にせよ」とのプレッシャーを、デモ参加者たちは頑として跳ね返しているのだそうだ。
 
 「反格差デモ」についてはつい先日「日本上陸」と喧伝されたが、反格差とは殆ど相関がつかない「反原発」と並んでデモすると言う報道に呆れ返って記事にしたのも記憶に新しいところ(*1)。そんな変なデモは日本だけかと思っていたが、どうも本家本元の米国でも似たような状況があるらしい
 
 此の報道で初めて知ったのだが、所謂「反格差デモ」には「ウオール街を占拠せよ!」とか「我々は99%だ!」とかインパクトのある(シュプレヒコールにしやすい)標語こそあるものの、未だ(*2)明確な、成文化された、「要求」が無いのだそうだ当該記事は報じる。
 
1>  全世界に広がった抗議行動 「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」が始まって2か月になろうとする今、
2> 彼らはメディアや著名評論家たちから強いプレッシャーをかけられている。
3> 通常の抗議運動に付き物の「要求項目」を掲げよ、というのだ。
4>  しかし、ウォール街に近いズコッティ公園(Zuccotti Park)を占拠し続けるデモ参加者たちは、
5> このプレッシャーを頑としてはね返している。
6> 新たに配られているビラには「1つや2つで済む単純な要求などない」と書かれている。
 
 1つや2つで済む単純な要求などないと言うならば、10や20でも、いや100でも構わないが、兎に角要求を明確にすべきであろう。それは上記3>「通常の抗議運動に付き物どころか、通常のデモならばそのデモ自身の存在理であって、シュプレヒコールは単なる掛け声だ。
 例えば今は珍しくなったが労働争議における「ガンバロー!」とか「要求貫徹!」なんてシュプレヒコールは、そのシュプレヒコールそのものは、「エイ、エイ、オー(*3)」と同様の殆ど掛け声であって意味を為さず、要求として別途「賃上げ」だとか「待遇改善」だとかが明示されるから労使交渉も実のあるものになる。これが格差をなくせ!のスローガンのみで、そもそも要求が明文化されていないのならば、それは先行記事にした通り「金をよこせ!」の婉曲表現でしかなく、「反格差デモ」は強請りタカリの公言に他ならない。早い話が図々しい乞食。下手すりゃ恐喝か強盗だ。
 
 私ほどに「反格差デモ」にシニカルな者は少ないのかも知れないが、そのシニカルな言い方を変えさせるような条件は今のところ無い。「不当に本来得るべき利益を得られない状態で居続ける」と言うのを訴えたいのならば、その判っている筈の「本来得るべき利益」を明示し、どこがどう「不当」なのかを訴えるべきである。それは「要求を明確にする」事で自ずと明示される筈である。その要求明確化もしないで「格差反対」しか唱えないようでは、「俺様は貧乏なのに金持ちが居るのは許せん」を「均しからざるを憂う」と言い換えたところで強請り・タカリ・恐喝・強盗以上のものにはなるまい略奪を始めて(*4)暴徒として鎮圧されるのがオチだ。
 
 だが、そうは考えないからこそ、こんな「要求項目を明示しない反格差デモ」を続けているのであろう。
 
7> ベテラン運動家のジャネット・コブレン(Janet Kobren)さん(68)は、次のように語る。
8> 「要求を作ることはできる。でも今まで見てきた限り、連帯ができてはデモをし、要求を訴え、
9> でも最後はただ家へ帰る、これの繰り返しだった」
10>  柵で囲まれた政府庁舎の前に立っては特定の項目を要求する類の人びとについて、コブレンさんは
11> 「一体、誰と話そうとしているのか。親に向かって『あれをして、これをして』と言っているティーンエージャーのよう」
12> と手厳しく批判する。
13> 一方でコブレンさんが称賛するのは、「ウォール街を占拠せよ」が掲げる「純粋な」運動観だ。
14> すなわち「政府や金融業界が腐敗している時に、それらを相手に変革を要求しても無意味だ」という考えだ。
 
 つまり此のコブレンさんは、
 
 ① 要求項目を明示してもそれは適えられない 

 ②「ウォール街を占拠せよ」を掲げるのみなのは「純粋な運動」で素晴らしい

 ③「政府や金融業界が腐敗している時に、それらを相手に変革を要求しても無意味だ」
 
のであるから、求めているのは「要求項目を掲げてこれを適えようとする変革」ではなく「「ウォール街を占拠せよ」」を掲げて腐敗した政府や金融業会を一掃する、良く言えば革命」、早く言えば「打ち壊しである。流石は「ベテラン運動家」と言うべきだろう。

 だがしかし、「ウォール街を占拠せよ」を掲げて「金をよこせ」と絶叫し、「我々は99%だ!」とウオール街を占拠なり政府を打倒なりして革命が成就したとしてもその革命政府はウオール街に蓄積された富をばら蒔いた後は、一体何をする心算か。「要求事項が明確ではない」と言う事は、此の革命後のビジョンも明確ではないと言う事だ。
 革命の手本とも言えるフランス革命や、革命の手本を自称したロシア革命では、少なくともある程度の革命後のビジョンを持っていたはずであるが、それでも革命後に出現したのはそんなビジョンとはほど遠い、血で血を洗うような恐怖政治だった。「ウォール街を占拠せよ」で樹立した革命政権ならば、そんな酷い事にはならなさそうだが、革命政権を樹立した瞬間に空中分解するだろう
 
15> パトリック・ウィルソン(Patrick Wilson)さんは、
16> ゴールは単純な1つの要求で言い表せる範囲を越えたところにあると述べた。
17> 「米国にあるのは少数者による寡頭政治。僕たちに必要なのは、民衆による民主主義だ。
18> ウォール街から始めて全米に広げ、米国中を占拠して、ここへ戻る。
19> 唯一の要求は『この国を民衆の手に返せ』ということだ」
 
 この国を民衆の手に返せと言うのは「反格差」よりは具体的だ。実現への道のりも「格差をなくす」よりは近いだろう。だが、これだけでは、やはりシュプレヒコールの域を出ない。米国の民主主義が独立性の高い州を単位とするものだけに「少数者による寡頭政治」となりやすいと言うのは説得力を持つ議論だが、ならば、「大統領の直接選挙制」だとか、「州単位の議席配分の見直し、例えば全国区の完全比例代表性」だとか、要求事項を明確化できそうなものだ。それを敢えてせずにやはりこの国を民衆の手に返せ』と言うだけならば、革命は成っても、政権空中分解はやはり免れそうに無い。
 
 それすらも、革命が成れば、の話しだ。
 
 全世界を駆け巡り、デモの一部が暴徒と化したところもあるとは言え、「反格差デモ」は今のところ大規模な暴動にも革命にも結びついていない。反格差とは言い条、喰うには困らないようならば、いくら「金よこせ!」と言った処で、乞食の迫力にさえ負けよう。況や自らの身命を銃火に曝すなんてことにはなりそうにないから、反格差デモは、せいぜいが反格差暴動に「発展」する程度で、反格差革命にさえなりそうにない。お陰で革命政権樹立時の空中分解は心配する必要もなく、「要求って何だ?」などと言う間抜けな議論に現を抜かせる訳だ。実に平和な話しだ。
 
 辛辣だろうか。シニカルだろうか。「99%の貧者」に対して冷酷であろうか。
 断っておくが、私は我が国でもトップレベルの教育を受けたという事は両親への感謝と共に認めないといけないが、「1%の富裕者」ではない事には、それこそ全財産を賭けても良い。かと言って自らを「99%の貧者」と主張する気も全くないが。
 
 私が反格差デモ参加者達に言う事があるとしたら、「頭を冷やせないし顔を洗って出直して来い!であろう。
 反格差」は標語ではあっても要求ではなく、「反貧困」と同じぐらい古い「人類共通の敵」だ。これに打ち勝つ方法なんて物は、未だに発見されていない。タダ、緩和する・弱らせる方法がわかっているだけで、それらの方法とて副作用があるのが普通だ(*5)。
 それほどの難敵に対し、「こう立ち向かおう」すらなく、タダ「倒せ!」では、応援団にはなっても、実行者にはなれない。コブレンさんの説が正しいのならば、正に革命が必要な此の挑戦に、作戦どころか戦略も目的も無しに、何が為せるものかよ
 
 如何に、反格差デモ実施者。
 如何に、国民。
 
 さて、最後になったが、タイトルにした「反格差デモと民主党の類似性」について述べておこう。
 
 端的に言えば、どちらも原則が明文化されて居ない事だ。反格差デモは上述の通りその要求項目を明示せず、民主党は結党以来未だに綱領がない。どちらもその本質的存在理由であるはずなのに、だ。
 さらには、反格差デモにはスローガンとシュプレヒコールばかりがあり、民主党にはツギハギだらけのズタ襤褸でおまけに財政的裏づけが無いから継続性が怪しいマニュフェストがある、ばかりである。
 スローガン/シュプレヒコール/マニュフェストは俗耳に入りやすく、仲々受けが良いが、実施実行現実化となるとからっきしだ。だが、受けだけは良いので、流行語になったりするし、選挙期間は強い追い風になる、事もある。
 
 かくも共通点のある両者であるから、その未来も似たような物になろうと、私は断じるのだが・・・さて、如何であろうか。
 

<注釈>

(*1)  「世界同時」反格差デモの怪しさ―「日本では反原発も訴える」!? http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/36148727.html 
 
(*2) 少なくとも此の記事が出た10/21時点では
 
(*3) 「鋭、鋭、応!」なんて漢字で書くと意味ありげだが、当て字だろう。
 
(*4) 国によっては略奪を始める以前に
 
(*5) 例えば、資本主義のアンチテーゼとして成立し、一時は世界の半分を支配した共産主義の副作用は強烈であったし、未だに残っていよう。 共産主義を考える1―20世紀の悪夢は、悪夢のまま終わるか?― http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/31863998.html