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米国人は米国の利益を目指す(理の当然)

 さて、如何であろうか。
 
 先ずは、美事な論説である。
 
1>  日本の周辺諸国による戦闘機の開発状況をよくみれば、
2> FXは、性能面でそれらに優る力を持っていることが求められ、
3> 価格や産業上の参加程度にのみ基づいて選択されるべきではないのである。
 
としてコストや技術的貢献よりも戦闘機としての性能そのものを重視するよう求め、「真の第5世代戦闘機であり、防衛省が望んで已まなかったF-22と同等」を売り物に、F-35をF-Xトするよう求め、さらに一歩踏み込んでF-22の後継となる「第六世代戦闘機」の「真の日米共同開発」まで訴える。正に「理想的な米国人の主張」と言うべきだろう。私が米国人であったならば、やはりこのように論じた事だろう。
 だが、私は日本人であり、日本の利益=国益を最大化したいと願う。であるからして、ジェームス・アワー氏の唱える「理想的な米国人の主張」には必ずしも同意できない。
 
 今回のF-X選定は、老朽化したF-4EJファントムの代替機であるから、機数がほぼ固定的である。であればこそ論ずべき論点はおのずと絞られて、主な物は以下の三点になる。
 
 ①コスト。これは調達コストもさることながら、運用期間中のライフサイクルコストも含まれる。
 
 ②我が国防衛産業への技術的貢献度。ライセンス国産/ノックダウンン生産(国内は組み立てのみ)/完全輸入。ライセンス生産ならばその国産比率 

 ③戦闘機としての性能・能力。これはNCWネットワーク中心戦に於ける適合能力を含む
 
 先行記事で私は上記②を重視してユーロファイター・タイフーンを推奨したのに対し、上記1>~3>の通りジェームス氏は上記③を絶対視してF-35を推奨する。但し、F-X=F-4EJの代替機としては上記③を絶対視するジェームス氏だが、上記②の論点を忘れた訳ではない。
 
4>  日本がFXに第五世代機(F-35)を選択するのであれば、
5> 日米両国はすぐにも、第六世代機を真の共同開発にすることについて検討を開始すべきだと思う。
6> それは、ロシアや中国における開発を考えた場合、
7> 日米両国にとって、共通の価値を21世紀遅くまで継続し維持するために必要となりそうだ
 
 上記4>~7>の言うところは、上記②のメリットはF-X=F-4EJの代替機よりもむしろその次、我が国のF-15J後継にして米国のF-22後継となるべき第六世代戦闘機の日米共同開発として結実させるべきだという事であろう(確信)。
 
 「F-22の後継機」と言うと聊か気の早い話とも思えるが、チラホラと情報はあって、「レーザー砲装備」なんて噂もある。F-22が米空軍限定で且つ少数生産に止まった理由の一つが「第六世代戦闘機の開発」でもある(*1)。だいたい、「新鋭機が配備されたのならば、後継機を計画開始すべきだ。」とは偉大な飛行機設計家クルト・タンクの言(*2)でもあるし、色んな所に( 変な所に?)大国としての余力があるアメリカが、早晩「F-22の後継機」を真剣に検討し始めるのは間違いないだろう。
 
 それ以上に間違いないのは、我が国の「F-15J後継機」の検討だ。それが「第六世代戦闘機」を、少なくとも目指す事もまず間違いようがない。何しろ、僅か40機ばかりのF-4ファントムの後継機種としてF-22を大本命としていたぐらいだから。
 
 問題は、我が国にとっての問題は、「F-15J後継機」を日米共同開発とするか、国産とするか、と言う事だ。
 
 無論、第六世代戦闘機を目指すべき「F-15J後継機」を国産とするのは大変に困難だ。殊に、私が主張するような「第5世代戦闘機もどき」のユーロファイター・タイフーンをF-Xに選定したならば、いくらノーブラックボックスでも「真の第5世代戦闘機」の技術情報は入って来ないのだから、なおさらだ。但し産経正論でジェームス氏が主張するようにF-35をF-Xに選定したとしても、こちらはブラックボックスありが前提だから、折角「真の第五世代戦闘機」を採用しても、その技術は開示されず、我が国防衛産業に資さない可能性は、大いにある。

 一方で「国産戦闘機の開発」は今のF-2がFS-Xと呼ばれる以前からの我が国の宿願である。そのF-2の生産が遂に終了してしまった事や、「一応国産戦闘機」たるF-1が「辛うじて超音速」であって、高翼面荷重=重さの割には小さな翼で低空飛行中の突風対策としている以上高い空戦性能は望めない事を勘案すると、いまや悲願と言っても良いぐらいだ。

 であるならば、産経主張で米国人ジェームス氏が主張する「第六世代戦闘機の真の日米共同開発」に、相応のメリットを認めつつも、日本人たる私は、やはり異を唱えざるを得ない「F-15J後継機こそ、国産で第六世代戦闘機を目指すべきだ。」と。
  
 さらに言うならば、「F-15J後継機」として「第六世代戦闘機」が我が国に必要であるという事情は、F-X=F-4EJ後継機の選定機種に拠らない。どの機種がF-Xに選定されようが、第六世代戦闘機はF-15J後継機に必要である。F-XにF-35を選定する事で日米連携が強化され、ジェームス氏の訴える「第六世代戦闘機の真の日米共同開発」へ向けた好条件でありうることには私も同意する。だが、我が国に必要なのは「F-15J後継機としての第六世代戦闘機」であって、「第六世代戦闘機の真の日米共同開発」ではない。
 
 拠って、私は新ためて主張する。

 抑止力とは、「相手に戦争を仕掛ける気をなくさせる力」だ。その抑止力には技術力も含まれる。
 F-35はユーロファイターよりもステルス性等の点で優れた性能を有する。だが、現状報じられる程度のライセンス率では、ノーブラックボックスを謳うユーロファイターの方が、我が国防衛技術の向上・維持には資するだろう。総合的にはユーロファイターをF-Xとする方が、我が国の抑止力は向上する。従って、やはりF-Xにはユーロファイター・タイフーンを選定すべきである。
 
 F-15J後継機に第六世代戦闘機を配備すべきなのはほぼ自明である。だがそれは、少なくとも現時点で日米共同開発に絞るべきではない。今度こそはの、国産戦闘機を目指すべきであり、そうであればこそ、F-X=F-4後継機主選定とF-15J工期役主選定との相関は、少なくとも現時点では薄い。また、その相関は、現時点では薄くするべきである。
 
 「F-35のステルス技術全面開示」でも打ち出されれば、私のF-X選定機種も大いにF-35に傾くだろう。だがそれも「F-15J後継機」としての国産戦闘機に資するから、でもある。
 

<注釈>

(*1) 尤もこれは、一寸どころか大いに胡散臭い。「F-22を生産注視して、次の戦闘機を開発する」と言うのは、普通は、「F-22の能力不足」を意味する。そのくせ多国間で鋭意共同開発中のF-35の制空戦闘能力は「F-22並み」ないし「F-22以下」だ。「予算カットの口実」に聞こえて仕方がない。
 
(*2) 嘘。若しくは大いに意訳。クルト・タンクが言ったのは「競馬馬がもてはやされているのなら、騎兵の馬の出番があるに違いない。」で、メッサーシュミットMe109に競争試作で敗れた際に、Me109の欠点である繊細さ・華奢さを克服したような戦闘機が必要になるだろうと断じた言。その「騎兵の馬」として登場したのが、後のFw190で、頑丈さには定評があるが、遂に「Me109の後継機」とはならなかった。