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 今回取り上げるのは産経対朝日に毎日を加えた三紙。四大紙マイナスニ紙+産経と言う形だが、朝日と毎日は礼例によって似たり寄ったりだから、実質「朝日対産経」のいつもの対立に毛が生えた程度だ。各紙社説タイトルとURLは以下の通り。
 
(1)産経 エネルギー計画 原発再稼働の道筋を示せ  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111003/plc11100303000000-n1.htm

(2)毎日 原子力政策大綱 議論の土台を明確に  http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20111003ddm004070039000c.html

(3)朝日 原発政策―まず首相が大方針を  http://www.asahi.com/paper/editorial20111003.html?ref=any
 
 例によって比較表の評価項目は、産経と朝日の社説を横目で見ながら決めた。
 
(1) 野田首相に求めること

(2) 現民主党政権に求めること

(3) 電力会社に求めること

(4) その他
 
 
イメージ 1
                                        朝日vs毎日vs産経 社説比較表-原発政策
 
 比較表の方は例によって、朝日の方の主張を赤字で、産経の方の主張を青字で、両紙にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。と言っても、今回赤/青/黒に塗り分けられる対象は毎日だけだが。
 比較表を作るまでも無く、タイトルからして産経と朝日の対立軸は明確だ。それどころか、朝日社説は殆どタイトルで言いたいことは尽きている。美事なタイトルと言うべきか、薄っぺらな社説というべきか。私としては心情的には後者だ。

 要は朝日「野田首相は脱原発の「野田ビジョン」を明示し、原発政策の原点に据えろ。」であるのに対し、産経「エネルギー政策は電力の安定供給が目的であり、そのためには原発再稼動が必須。電力安定供給の目処もないまま「脱原発」の風潮に流されるな。」と、私が再三繰り返してきたのと同様の主張である。このため産経は原発反対メンバーを大幅に増やした経産省総合資源エネルギー調査会も槍玉に挙げる。
 
 一方毎日はと言うと、朝日の「大方針」「野田ビジョン」を「議論の土台」と言い換えただけで、案の定朝日に毛が生えただけ。生えた「毛」が「脱原発」の根拠として「国家戦略室「エネルギー・環境会議」の出した「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間まとめ」と言うタイトルは仰々しいが眉に唾つけざるを得ないシロモノ(*1)を引用する事と、野田首相のみならず日本政府として「議論の土台」を示せと求める事である程度。なんとも情けない「毛」であり、同工異曲と言うよりは、大同小異だ。
 
 以上から、例によって今回の社説比較を数式で表すと、以下の通り。
 
 朝日 ≒ 毎日 <<< 産経
 
 脱原発原理主義者に何言っても始まらないのだろうが、エネルギー政策を論じるのに、首相の言葉尻を捕らえた「脱原発」や怪しげな文書に出てきた「減原発」を金科玉条に祭り上げ、電力の安定供給に全く触れないと言うのは、狂気の沙汰だ。
 

<注釈>

(*1) ちっとも国家戦略を立案していない国家戦略室の、それも「革新的エネルギー・環境戦略」として、読むに値するまともな報告が出てきているとは、全く思えない。
 

転載開始========================================= 

産経【主張】
エネルギー計画 原発再稼働の道筋を示せ  

2011.10.3 02:59
 日本のエネルギー政策の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに、3日から経済産業省が着手する。
 東京電力福島第1原発事故を受け、原子力発電の目標を引き下げる方針だが、まずは国を支える電力の安定供給のための具体策をはっきり示してほしい。
 それには、安易な「脱原発」は許されない。野田佳彦政権は原発再稼働や安全性をより高めた原発開発を含め、総合的なエネルギー政策を打ち出す責務がある。
 昨年6月に決定した現行の基本計画は、2009年度に約30%だった原子力発電の比率を原発14基の新設によって、30年には50%超に高める目標を掲げた。しかし、事故のため白紙撤回し、来年半ばまでに全面的に見直す。
 日本がいま直面するエネルギー問題とは、原発の再稼働が果たせていない中での電力不足の解消である。今夏は東日本で使用制限を発動し何とか乗り切ったが、来夏の電力供給見通しを示すことはできていない。
 電力不足を放置することは、産業の空洞化に拍車をかけることにもつながる。日本経済の弱体化はさらに進んでしまう。
 国内にある全54基の原発のうち、現在稼働しているのは11基にとどまり、再稼働がなければ来春にはゼロとなる。それだと来夏には全国平均で9%、原発利用度の高い関西電力では20%近い電力不足に陥ると試算されている。
 このように原発再稼働は喫緊の課題である。基本計画では再稼働の必要性を政府として共有し、具体的な道筋を示す必要がある。
 その点、問題なのは基本計画を策定する経産省総合資源エネルギー調査会のメンバーが大きく変更され、原発に反対する委員が大幅に増やされたことだ。
 枝野幸男経済産業相は「バランスの取れた議論ができるよう選んだ」と説明するが、安定供給の見通しもないまま「脱原発」の風潮に流されてしまう恐れはないのか。国益などの高い視点に立った、冷静な議論を求めたい。
 一方、日本は火力発電の増強のため、原油や天然ガスの輸入を増やしている。燃料費の増加は年間3兆円以上と見込まれる。例えば、韓国では輸入元の一元化などで価格を引き下げる工夫をしている。日本も安定的かつコスト減の対策を実行すべきである。
 

毎日社説:原子力政策大綱 議論の土台を明確に  

 中断していた「原子力政策大綱」の見直し作業を原子力委員会が再開した。「3・11」以降、原発の現実的なリスクがはっきりした以上、もはや以前の延長線上で議論を進めるわけにはいかない。
 日本が政策の要としてきた核燃料サイクルをどうするのか。原発増設の基本方針をどう転換するのか。原子力政策のあり方を一から見なおす必要があるのは明らかだ。
 しかし、再開後の初会合では、そうした方向性は明確にされなかった。脱原発を念頭にゼロからの議論を主張する委員がいる一方、原発立地自治体や原子力業界の委員からはこれまで通り原発推進を求める声が聞かれた。
 このままでは、目的も道筋もあいまいなまま、議論が進むことになるのではないか。それを避けるために、政府はめざす政策の方向性を議論の土台として示しておく必要がある。
 野田佳彦首相は就任当初、「原発の新設は現実的に困難。寿命がきたものは廃炉に」と発言し、「減原発」路線の踏襲を明らかにした。
 ところが、その後の発言は、必ずしも一貫していない。米国での国連演説では、従来の原発輸出を継続する姿勢を示した。事故の検証や各原発の安全評価が終わっていないのに、定期検査中の原発の再稼働に積極的な姿勢も見せている。
 首相の意思がはっきりしないようでは、大綱の議論も迷走する。
 政府は原発事故後、国家戦略室に「エネルギー・環境会議」を設置している。7月には「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間まとめを公表している。
 この中では、「減原発」を基本理念に掲げた。原子力政策がエネルギー政策の一環である以上、大綱もこの基本理念に沿って議論を進めるのが筋だろう。野田首相にはその点を明確にしてもらいたい。
 経済産業省の総合資源エネルギー調査会も「エネルギー基本計画」の見直しを今月から開始する。議論の無駄な重複や混乱を避けるため、それぞれの組織の関係を明確にしておくことも欠かせない。その中で大綱の位置づけもはっきりさせておきたい。
 細野豪志原発事故担当相は、原子力委に、まずコストの検証を求めた。「原発は発電コストが安い」という推進側の言い分には疑問符がついており、中立的な立場で検証してもらいたい。
 現行の原子力政策大綱を策定する過去の会議では、電力会社や立地自治体などの関係者が利益代表として陳情とも受け取れる発言を繰り返した。今回は、そうした発言を廃し、本質的な議論を促す議事運営を望みたい。

朝日社説 原発政策―まず首相が大方針を 

 原発・エネルギー政策をめぐって、中長期の計画を見直す作業が動き出した。
 内閣府の原子力委員会が9月末、原子力政策大綱の改定作業を再開。3日には、関係閣僚らで構成するエネルギー・環境会議が野田政権下で最初の会合を開き、経済産業省が事務局を務める総合資源エネルギー調査会もエネルギー基本計画の見直しに向けた議論を始める。
 野田首相は就任時、菅前政権の「脱・原発依存」を踏襲すると述べた。だが、9月の国連での演説などでは原発の輸出や定期検査後の再稼働について積極的と取れる発言をし、首相がどの方向を向いているのか、分からなくなった。
 政権発足後初めての国会論戦でも、原発やエネルギー政策の根幹についての議論は深まらないままだった。
 これまで原発推進を担ってきた原子力委員会やエネルギー調査会は、今回の見直しにあたって、従来の政策に批判的な委員を増やしたりしてはいる。
 しかし、議論の方向性やそれぞれの役割がきちんと位置づけられているとはいえない。このままだとエネルギー政策の立案が拡散・混乱しかねない。
 まずは、野田首相が自ら進めようとする脱・原発依存の全体像をしっかりと語るべきだ。
 その際、基本となるのはエネルギー・環境会議が7月末にまとめた「中間整理」だ。同会議は、当時の菅首相が経産省への不信から設けた組織だが、中間整理には原発依存度の低減に向けた課題が網羅されている。
 野田首相は同会議をエネルギー政策立案の最高機関として位置づけ、中間整理からの「次の一歩」を踏み出してほしい。
 例えば、古い原発の存廃。首相は「老朽化したものは廃炉にする」と語るが、通常40年とされる原発の寿命について現行規定では60年までの延長を認めている。早く、「40年まで」と明示すべきだ。
 自然エネルギーの普及では、菅前首相が「2020年代のできるだけ早い時期に発電量の20%に」という目標を掲げた。野田首相も、その方針の堅持を明言してはどうか。
 そうした包括的な「野田ビジョン」を示したうえで、脱原発に向けた工程表やコスト試算、法整備の進め方などの検討を調査会や委員会に指示するのが、政治主導というものだろう。
 この冬の電力不足対策をにらんで、電力会社にきちんとデータを開示させるといった短期的な課題もある。首相の明確なメッセージを求める。
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