恣意的「民主主義」は、「自称・民主主義」である。

http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35980232.html より続く
 
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 さて、如何であろうか。
 
 改めて解説するならば、引用した三本の記事のうち、最初の記事はその後の経緯を報じている。石垣市と与那国町、竹富町の教育委員「全体会合」で育鵬社版を不採択、東京書籍版を採択した決議について、文部科学省が「法的に無効」との見方を示した事が報じられている。また記事の末尾には石垣市と与那国町の教育委員は「(中学)公民は育鵬社」と県教委に報告する/した事が付記されている。
 
 これを受けての2番目の記事は沖縄タイムスの社説。案の定、文科省の見解に噛み付いている。
 
 3番目の記事は此処までの経緯と特に「育鵬社版を不採択、東京書籍版を採択」とした「全体会合」の法的有効性について論じた産経の【正論】だ。
 
 先行記事との重複覚悟で経緯をまとめると、以下のようになる。
 
 (1) 八重山地区は「愛国心を強調し、改憲志向が強い「新しい歴史教科書をつくる会」系の育鵬社の教科書」を採択した。

 (2) 上記(1)の八重山地区の採択を、石垣市、与那国町の両教育委員会は追認した。

 (3) 上記(2)までで八重山地区の教科書選定手続きは完了したはずだが、これが問題視された。

 (4) 上記(3)を受けて、9/8石垣、竹富、与那国3市町の教育委員全員による「全体会合」が行われ、2012年度から使用する中学公民教科書に東京書籍版を多数決で採択した。
======================此処までが先行記事時点の経緯  愚問承知で琉球新報社説のダブルスタンダードを問う! http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35958019.html

 (5) 上記(4)の報告を文科省は受けたが、同時にその有効性を否定する文書が石垣市と与那国町の両教委から提出されていたため、上記(4)「全体会合」の決議は「法的に無効」との見解を示した。

 (6) 9/16に県教委から文科省に報告しなければならない教科書の需要数について、9/13現在で石垣市教委は「公民は育鵬社」と県教委に報告済みであり、与那国島教委も同様に報告する方針である。
 
 以上の経緯を踏まえての上掲2番目の沖縄タイムス社説であるが・・・端的に言って支離滅裂だ。確かに琉球新報と沖縄タイムスと言う「沖縄二紙」の社説はレベルが低いものが多いが、こいつはまた一段と「来て」いる。3番目の藤岡氏の記事と一部重複するが、それを覚悟で見ていこう。
 当該社説の前半は、上記(5)に至る経緯を沖縄タイムスなりに纏めているが、当然かも知れないが上記に私が纏めた(1)~(3)とは異なる。どこが異なるかと言うと、
 
 (1A) 上記(1)は「石垣、竹富、与那国の3市町による八重山地区協議会が育鵬社を採択した」である。「教科書の最終的な採択権は各教委にある」

 (2A) 最終的な教科書採択権のある各教委の内、「石垣市、与那国町は育鵬社版、竹富町は東京書籍版を採択した。」

 (3A) 「八重山地区の3市町は同一教科書を採択しなければならない」為、県教委が乗り出した。これは、協議会規約に「県教委の指導・助言を受け、役員会で再協議することができる」とあるためである。

 (3B) だが、その役員会は決裂した。
 
 上記(4)~(5)の経緯は沖縄タイムスも認めるところである。また、上記(4)で登場する3市町教育委員全員による「全体会合」が「協議会規約にもない」イレギュラーないし非合法な物である事も、間接的ながら沖縄タイムスも認めているところだ。
 
 で、沖縄タイムス社説は上記野経緯を受けてまず「ならばどういう解決法があるのか」と開き直り、社説中ほどで、
 
沖1>  文科省が、協議会の選定結果を有効とし、全体会合の採択結果を無効としたのは、
沖2> 話し合いによる一本化へのさらなる努力を求めたものだ。
沖3> 想定していない事態を招き、制度の不備が露呈した形だ。
 
と、教科書選定制度の不備を非難する。「教科書選定制度の不備が露呈した」と言うのは私も同意しないではないが(*1)、「想定しない事態」を招いたのが文科省の「全体会合」採択無効だと言うのは、理解できない。「想定しない事態」を招いたのは、指導しながら役員会を決裂させ、「全体会合」なるものを設置してこれに「教科書採択権」を与えようと言う県教委であろうが。
 
 続くパラグラフでは
 
沖4>  協議会は3市町教委から諮問を受け、選定する答申機関である。採択機関ではない。
沖5> 協議会の多数決は認め、全体会合の多数決は無効とするのはご都合主義だ。
 
 と、まことしやかに沖縄タイムスは主張する。「まことしやか」と私が言うのは、先述の通り協議会は正式な諮問機関だが、「全体会合」は県教委肝いりだろうが、教科書採択権を自称しようが、イレギュラーな存在であることに変わりはなく、前者の「多数決」は諮問機関としての正式な決定だが、後者の「多数決」は「アンケート調査結果」でしかない。それを「同じ多数決だから同列に扱え」と言うのは「全ての議会議決よりも世論調査結果を優先しろ」と言う主張と同様に暴論だ。第一、ご都合主義と言うのならば上記(3B)で協議会規約にもある役員会が決裂したからと、「教育委員全体会合」なるものを作ってこれに教科書採択権を与えると言うほうが、余程ご都合主義であろうが。
 
 さて、そんな「後ろめたさ」が沖縄タイムスにあるからか、当該社説の後段は益々酷くなる。まずはお定まりの玉津教育長に対する個人攻撃で、今回は「教育長の政治的中立性」を問題視しており、「教育委員会には政治とは一線を画した独立性、中立性、公平性が求められる。」と高らかに宣言する。一見尤もな主張であるが、そうであるならば沖縄の全教育委員は普天間基地移設問題にも駐留米軍問題にも一切口を出さない筈である。で、実際はどうなのかね。特に竹富町の教育委員殿に、私は大いに関心がある。(*2)
 
 〆の段になるとさらに酷い。
 
沖6>  子どもたちは地域の中で育つ。地域が教育にかかわり、保護者の意向を尊重するのは当然である。
沖7>  地域から支持されない教科書をなぜ、あえて、子どもたちに使わせたいのか。
沖8> 多くの「なぜ」に答えるべきだ。地域の声に耳を傾けないのはおよそ教育の名に値しない。
 
 どうも沖縄タイムスには「育鵬社の教科書は地域から支持されない」と言う自信があるらしい。そうなるように報道し、そう言う世論調査結果でもあるのかも知れないがなんとも奇妙な話ではないか。

 「報道のし方」に自信があるのならば、それは沖縄タイムスが世論を煽動する術に自信を持って居ると言うことであり、宣伝術洗脳術に対する自負だ。「党の口舌」としてはそれは重要かつ重大な事ではあろうが、ジャーナリズムとしては自殺であり存在理由の自己否定だろう。
 世論調査結果があるとしても、非常に怪しい。新しい教科書と言う物は、生徒達に配布されるまで、ごく一部の関係者しか見る事の叶わぬモノだ。世論調査の対象となった「地域の住民」の大半は伝聞によってしか「育鵬社の教科書」を知ろう筈がない。その伝聞の相当部分は沖縄タイムスらが担っているのだから、これは先述の「宣伝洗脳術に対する自信」と同根だろう。
 
 言い換えれば、上記沖6>~沖8>は、「教科書採択は地域住民の声にも配慮しろ」との主張であるが、その背景に「地域住民の接する事が出来る教科書情報は、我々マスコミが統制出来る」と言う自信ないし自負がある。その自信ないし自負は、民主主義とはほど遠い物である。
 
 沖縄県教委に対する糾弾は、上掲3番目の記事産経【正論】の藤岡氏に譲るとしよう。
 

<注釈>

(*1) 私に言わせれば、「教科書選定制度の不備を突かれた」のであるが。 
 
(*2) 散々自慢している通り、当ブログは一時期個人のブログとしては相当しつこく普天間基地移設問題を追っていたからね。  普天間基地移設問題の経緯シリーズ (26)までの記事は以下URLに独立させた。
(27) 鳩山首相の負の遺産―普天間基地移設問題経緯(27)―  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/32800905.html
(28) 選挙対策あって政策なし―普天間基地移設問題の経緯(28)―  http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/33419360.html