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 「メリー・ポピンズ」と言うと相当古い(*1)ジュディー・アンドリュース主演のミュージカル映画。ディック・ヴァン・ダイクが煙突掃除人(*2)に扮し、哀愁溢れるチム・チム・チェリーを歌ったりする、ある種のファンタジーだ。ジュディー演じるメリー・ポピンズは、文字通り風に乗ってやって来る不思議なナニー(*3)で、着任早々部屋の模様替えと称し、持って来た旅行カバン(*4)をテーブルの上置くや開いて、中から高さ2mはあろうかと言う帽子掛けだかコート掛けだかをスルスルと取り出してみせる。四次元カバンでもない限り物理的にありえない光景に、メリーの養育対象たる男の子は机の下に潜り込み、カバンの乗っている机の天板(の裏側)を不思議そうに見上げる、と言うシーンがある。
 
 そんな古い映画の懐かしいシーンを思い出したのは、朝雲新聞報じる富士総合火力演習の記事を読んだため。硝煙の臭い溢れる(*5)富士総合火力演習と懐かしのファンタジーミュージカル映画がどう結びついたかと言うと・・・まあ、先ずは朝雲新聞記事をご一読願おうか。
 

<注釈>

(*1) 1964年製作のディズニー映画だと。古いはずだね。
 
(*2) この職業も、絶滅危惧種若しくは絶滅種だよな・・・
 
(*3) 「乳母」とか「家庭教師」とか訳されるが「養育係」と言うのが日本語としては良いのではなかろうか。日本では余り馴染みのない概念だ。
 
(*4) 旅行カバンと傘は、メリー・ポピンズのトレードマークだ。フリルの付いた可愛い傘だが、日雨兼用なのだろうか。なんにせよ彼女は、この傘を開いて風に乗って現れ、風に乗って去る、「風に乗りて歩む者」なのである。
 
(*5) と言うのは、相当誇張だな。現代の火砲銃火器は基本的に無煙火薬を使うから、黒色火薬のような盛大な煙も出なければ、独特の「香ばしい」香りもしない。
 
転載開始========================================= 

総火演 戦車10両がサプライズ 復興願ってノボリ 

  http://www.asagumo-news.com/news.html
 総火演のハイライト、陸・空一体による総攻撃「戦果拡張」の後、全展示を終えた参加戦車が2万3000人の観客の前に整列して停車した直後、各車砲塔のハッチが開き、白い旗のようなものが一斉にするすると上がった。
 「あれ、なんだろう?」。観客が注目する中、74式、90式戦車に掲げられたのは「がんばろう東北」と描かれた幟(のぼり)10本。これは参加部隊から東北の被災者に向けた激励メッセージだった。
 発案したのは川崎朗富士教導団長。川崎団長は3・11の東日本大震災発災時、北東北を守る9師団(青森)副長の職にあった。直後から青森・岩手の被災地の救援にあたり、東北の再生に尽くしてきたが、4月27日付の異動で富教団長へ。総火演を指揮することとなったことから、「富教団としても東北の人たちを激励できないものか」と思索。
 「総火演を東北復興の狼煙(のろし)としたい」という団長の意向を受けた幕僚たちは、各案を持ち寄り、最終的に激励メッセージを掲げることにした。戦果拡張に参加する戦車は10両だったことから、10本の幟を製作し、各車がスタンド前で一斉に掲げられるよう練習して本番に臨んだ。
 会場では直前まで実射を行っていた戦車が、「がんばろう東北」の幟を上げたことに観客もびっくり、どよめきとともに拍手も起こった。これに各車の車長も手を振って応えた。
 スタンドの統裁台からこの光景を見ていた富教団訓練幹部の築城光志1尉は、「観客に喜んでもらえてよかった。われわれの気持ちが伝わり、それが東北復興の狼煙となってくれれば」と話していた。
ヒトマルは可愛い
 装備品展示会場では、東日本大震災で活躍したヘリコプターなどの機能を隊員に尋ねる見学者が多く、説明役の隊員が半ば誇らしげに質問に応じる姿があちこちでみられた。
 人間の体温を感知する赤外線センサーを搭載して生存者の捜索に当たったという陸自の観測ヘリOH1の人垣前では、家族3人と横浜市保土ヶ谷区から訪れた西川昌芳さん(17)が、「ヘリは迫力がある。めったに見られないので面白かった」と感激した様子。
 大阪市から友人と訪れた山口拓さん(27)は、物資や避難住民を空輸した多用途ヘリUH60JAや地雷原処理車の前で記念撮影。「処理車はじゃばらがかわいい。ヒトマル式戦車も砲身がかわいい」と大阪人らしいノリで周囲の笑いを誘っていた。
 火力演習終了後、仮設スタンドではお弁当を広げるカップルや家族連れも多く、非日常のキャンパスを前に過ぎ行く夏の一日を楽しんでいた。
花添えた音楽演奏
 会場に花を添えたのは、富士学校音楽隊と第1音楽隊の計約50人から成る合同の音楽支援隊。前段では1音隊長の伊東札記1陸尉の指揮で「海を越える握手」「ワシントンポスト」などを演奏した。
 中段と終了後は富士学校音楽隊長の勝俣洋和陸曹長の指揮で「富士学校校歌」「男の群れ」のほか、「ガンバレ日本のパパ」「ひょっこりひょうたん島」「マル・マル・モリ・モリ!」など大人から子供まで楽しめる曲を披露。
 さらに東日本大震災からの復興を願って「がんばれ東北」を掲げ、福島の「相馬盆唄」、岩手の「南部牛追唄」、宮城の「大漁唄い込み」がメドレーで奏でられると、東北出身者などからは「ありがとう」「懐かしい」などの歓声が上がり、大きな拍手が送られた。
 宮城地本を通じて被災者枠で招待された気仙沼市の白幡理恵さん(50)は、「大感激しました。津波で自宅が被害を受け、仮設住宅で生活していますが、前日から高速バスを乗り継いで御殿場まで来た甲斐がありました」と話していた。
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四次元ポケットか、四次元カバンか。そう言えば「吊り籠式」砲塔ではあるな。

 我らが自衛隊三軍には幾つも「世界一」がある。当然陸上自衛隊にも「世界一」はあって、その内私の知っている一つに「戦車砲の命中率」がある。(*1)何しろ腕の良い部隊となると、百発百中滅多に外さないらしい。米国で日本・アメリカ・西ドイツ合同の戦車射撃演習があり、我らが陸上自衛隊はハズレ1発のみの好成績で堂々優勝したけれど、演習後の打上パーティーでは、そのハズレ1発を悔いて陸自だけ寂として御通夜状態だったとは、「萌えよ戦車学校」(*2)にも描かれているところ。
 
 上掲の朝雲新聞が報じるのは、その陸自戦車隊が富士総合火力演習で見せてくれたパフォーマンス。
 
1>  全展示を終えた参加戦車が2万3000人の観客の前に整列して停車した直後、
2> 各車砲塔のハッチが開き、白い旗のようなものが一斉にするすると上がった。
3>  「あれ、なんだろう?」。観客が注目する中、
4> 74式、90式戦車に掲げられたのは「がんばろう東北」と描かれた幟(のぼり)10本。
5> これは参加部隊から東北の被災者に向けた激励メッセージだった。
6>  会場では直前まで実射を行っていた戦車が、「がんばろう東北」の幟を上げたことに観客もびっくり、
7> どよめきとともに拍手も起こった。これに各車の車長も手を振って応えた。
 
 私が先述の「メリーポピンズ」の4次元鞄を思い出した理由が分かっていただけただろうか。
 
 戦車に乗ったことのある人は分かると思うのだが、戦車の中と言うのは非常に狭い。「乗り込む」と言うよりは「座席に潜り込む」感じだ。座席に着いたら背伸びも出来ないようなのが戦車だ。この狭い社内に戦車長、砲手、操縦手、74式ならこの上に装填手が加わり、その全員がそれぞれの職責を全うしなければ戦車は動かないし砲撃も命中しない(*3)。富士総合火力演習と言えば年に一度の陸自戦車兵の晴れ舞台だし、本業である射撃訓練に手を抜けよう筈もない。
 その手を抜けない射撃訓練の狭い戦車内に、「がんばろう東北」の幟をどう持ち込んでどう収納しどう展開したのか。同総合火力演習に行かれた方の写真を見ると、幟は高さ約2mで幅30センチほどで、支柱はかなり細いが結構本格的な大きさ。タイトルにもした通り、魔法とは言わないまでも手品ではある。伸縮可能若しくは組立式の竿にして砲弾ラックに格納していたのだろうか。それでも10両の車両が一斉にそれを展開するのは、相当困難と思われる。伸ばすにしろ、組み立てるにしろ、狭い砲塔の中だ。
 
 このパフォーマンス・陸自式手品は、陸自戦車部隊の練度や技量と直接の関係はない。ある意味、「遊び」であるし、見ようによっては「税金の無駄遣い」だ。
 
 だが、朝雲新聞報じる富士学校音楽隊の演奏共々、東日本大震災被災地へのメッセージを送ることの、精神的支援としての意義は大きい。
 
 何しろ陸自全軍の半数は東日本大震災救援復旧に駆けつけているのだ。陸自発被災地へのメッセージには、真実味も、熱意も、込もろうというものだ。
 
 頑張ろう、日本。
 

<注釈>

(*1) 特科部隊=砲兵の命中率も、並みじゃぁないらしいが。
 
(*2) の何型だったかは忘れた。
 
(*3) 特に74式の装填手は、アクションも大きければ、取り扱う砲弾も重いから、大変だ。