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 産経webから転載するは、中国関連の二つの記事。
 中国軍事専門家・平松茂雄の【正論】は、中国にとって空母保有と言うのが長年の宿願である事を歴史的経緯を含めて説き、空母単独のみならず海軍戦力の拡充と言う長期戦略的目標の達成状況から、軍事的兵器としてばかりでなく、政治的兵器、言わば「砲艦」としての中国空母の意義を強調し、これに備える事を促す。極東随一の海洋国たる我が国とってはかなり厳しい内容だ。
 
 もう一つの石平氏のChina Watchは、中国で広く見られる焦燥感を取り上げ、これがあたかも革命前夜の様相であることを期待する。
 
 言うまでもないが後者の予測が正しいならば、前者が懸念する中国海軍戦力、なかんづく空母は革命の荒波に飲み込まれて、少なくとも当面役には立たなくなることが期待しうる。或いはひょっとして、先ごろ試験公開にまでこぎつけたワリャーグがソ連崩壊の煽りで「ソ連海軍空母」となれずに中国へ転売されたように、現在建造中噂の中国国産空母が建造中止されたり転売されたり(*1)と言う事が期待出来るかも知れない。
 
 だが、百年兵を養い一日に備えるのが国防。
 
 中国に革命が起きてくれる事は、我が国にとっての慶事であり、そうなる事を希望もし、工作もするべきであろうが、それに全面的に期待し、我が国の安全保障を依存する事はできない。
 
 我が国としては、中国空母に備え、対中最前線たる自由中国の独立を確保しつつ、革命工作を進め、対中冷戦を覚悟するべきであろう。
 
 Achtung! China!!
 

<注釈>

(*1) 誰が買うかな・・・中国国産空母。
 
 
転載開始========================================================================

【正論】
中国軍事専門家・平松茂雄 中国空母時代の到来を見据えよ 

 中国は、1990年代初期に購入して改装した旧ソ連製航空母艦ワリヤーグ(約6万トン)の試験航行を、10日に行った。中国が空母の時代に入る意味を、わが国は真剣に考えなければならない。
 中国の最高指導者は、空母が単なる戦闘の手段ではなく、極めて有効な政治的手段であることをかなり早くから認識していた。
 ◆毛に染み付いた空母への執念
 49年10月の中華人民共和国誕生を前に、米国は中国大陸には関与しないとの立場を表明し、東アジアの防衛線として、アリューシャン列島から千島列島、日本列島を経てフィリピンに至るラインを敷いた。「アチソン・ライン」である。朝鮮半島と台湾は防衛線の内に入っていない。他方、中国は建国当初から、「台湾統一」の意思と計画を持っていたものの、台湾海峡の渡海作戦を行うだけの海空軍力に決定的に欠けていた。
 50年6月に朝鮮戦争が勃発すると、その戦火が台湾に波及することを恐れた米国は、「台湾海峡の中立化」を宣言して空母を派遣した。米防衛線は一気に、韓国と台湾にまで西進したのである。
 その後も、米国は中国による台湾侵攻を阻止すべく、ことあるごとに中国に対し、核で威嚇したほか、空母を台湾海峡に派遣して軍事威圧を加えた。55、58の両年の2度にわたり大陸沿海の島(一江山島・大陳島、金門島)をめぐって中国人民解放軍と蒋介石軍が戦った際などが、そうだった。
 72年2月のニクソン大統領の訪中が切り開いた、79年1月の米中国交正常化は、必然的に東アジアからの米国の後退を促していく。米空母のプレゼンスはしかし、なおも維持された。中国の悲願である「台湾統一」は、今日に至るまで達成されないできている。
 このように米国の核と空母の脅威にさらされ、さんざん煮え湯を呑(の)まされてきた経験から、空母に対する執念は建国初期の段階から毛沢東らに染み付いて、後の指導者たちに受け継がれてきた。その保有計画が具体化したのは、核開発が進展した70年代に入ってからである。73年から国連海洋法条約の討議が始まって、世界が「海洋の時代」に入ると、中国も海洋進出に乗り遅れまいと、空母保有に向けて動き始めたのである。
 ◆「海軍発展戦略」で本格化
 保有計画が本格化するのは、86年に「海軍発展戦略」が作成されてからである。「海軍発展戦略」の概略は、こうだ。2000年までの第1段階で、各種艦艇の研究開発・建造と人材育成を行う。20年までの第2段階で、大陸基地発進の中距離航空機部隊と攻撃型通常潜水艦を主要な攻撃力とし、ヘリコプター搭載中型洋上艦船を指揮・支援戦力とする。そして、50年までの第3段階で、空母を核とし、対空・対艦・対潜作戦能力を有した洋上艦船と潜水艦で構成される空母戦闘群を保有する。
 ちなみに、20年は1921年の中国共産党創建から1世紀、2050年は前述の中華人民共和国誕生から1世紀だ。こうした息の長い戦略に基づき、空母保有計画はゆっくりとではあるが、着実に進んできているのである。
 ◆85年に豪空母も購入し研究
 80年代に入り、中国ではヘリコプターを搭載した艦船が登場し、91年1月には艦載ヘリコプター部隊が編成されている。その間の85年、中国はオーストラリアから空母メルボルン(1万6000トン)を購入している。英国が建造した時代遅れの空母であり、役には立たないと嘲笑する見方もあったものの、中国は退役するこの空母を安価で購入して、徹底的に研究した。老朽化した代物であっても、空母を知らない者にとっては実物教育に勝るものはない。必要な知識をすべて吸収したうえで、スクラップにしたのではないか。
 それから20年余を経たいま、上海の長江河口に近い長興島の造船所では、ワリヤーグのような「スキージャンプ台」式でなく、電磁式カタパルトで艦載機が発進する新しい空母が建造されており、遠くない将来に完成するという情報がある。2020年代になると複数隻が建造されるとみていい。
 こうみてくると、中国は早くから空母保有という軍事的野心を抱きつつも、至って慎重であることが分かる。中国は、当面の目標を「台湾統一」に置き、空母を必要不可欠とはしてないからだ。
 中国はすでに、米国の主要都市を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)、中国周辺の米国の同盟国とそこにある軍事基地を射程に収める中距離弾道ミサイル、台湾の政治中枢・軍事基地を一挙にたたける短距離弾道ミサイルを1000発以上保有し、米空母の台湾接近を阻止できる対艦弾道ミサイル、通称「空母キラー」も開発し配備し始めているのだ。
 中国は、これらの軍事力で「台湾統一」を達成した暁には、太平洋とインド洋に本格的に進出してくるだろう。そうなると、空母は必須となる。中国はそれに向けて国のすべてを注力している。
 今後10年が、わが国と中国の力関係の分かれ道となってこよう。肝に銘じなければならない。(ひらまつ しげお)

13億人の社会的焦燥感 激変と混迷の「乱世」突入への前兆

中国高速鉄道事故 中国浙江省の温州南駅に集まり、抗議の座り込みをする高速鉄道事故の遺族ら=27日午前(共同)
 1日付の『中国青年報』が興味深いインタビュー記事を掲載した。インタビューの相手は共産党中央党校の呉忠民教授であり、テーマは「中国社会の焦燥感」についてである。その中で記者は、「現在の中国社会では普遍的な焦燥感が蔓延(まんえん)している」と述べ、呉教授の見解を聞いたところ、返ってきた答えはこうである。
 「現在、焦燥感なるものがこの社会ほとんどすべての構成員に広がっている。低層の労働者や農民も、より良い社会環境に恵まれている政府の幹部や民間の経営者も、そして豊かな沿岸地域の住民も貧しい内陸部の住民も、ほとんどすべての中国人がある種の焦燥感に取りつかれ、大きな不安に駆り立てられている。焦燥感がこれほど広がっているのは中国の歴史上でも珍しいケースであり、戦乱の時代以外にはあまり見たことのない深刻な状況である」
 共産党政権の高級幹部を養成する中央党校教授の立場にある者が、中国社会の現状についてこれほど深刻な認識を示していることに筆者は大いに驚いたが、呉教授の指摘した通り、「社会的焦燥感」がかくも広がっていることは中国の長い歴史でも「珍しいケース」であろう。
 そして世界史的に見ても、ある国において、労働者からエリートまでのすべての国民がえたいの知れぬ焦燥感や不安に駆り立てられているような状況はたいてい、革命や動乱がやってくる直前のそれである。
 呉教授がここで、「戦乱の時代以外に見たこともない」との表現を使っていることも実に面白い。要するに今の中国の社会的心理状況は既に、「戦乱の時代」の状況に類似してきているということであろう。
 こうなったことの原因について、呉教授は改革開放以来の中国社会の変化の激しさや国民の生活満足度の低下などを挙げているが、筆者の私の認識からすれば、貧富の格差の拡大や腐敗の蔓延が深刻化して物価も高騰し経済が大変な難局にさしかかっている中、改革開放以来の中国の経済成長路線と社会安定戦略がすでに自らの限界にぶつかって行き詰まりの様相を呈している。
 それこそが「社会的焦燥感の蔓延」を生み出した深層的原因であろう。もちろん、このような社会的現象の広がりはまた、中国社会が今後において激変と混迷の「乱世」に突入していくことの前兆でもある。
 実際、現在の中国における騒乱や暴動の多発はまさに、「乱世」の到来を予感させるものである。今年6月の1カ月間を取ってみても、6月10日から連続3日間、広州市近郊の町の新塘で起きた出稼ぎ労働者の大規模暴動を始め、土地収用問題が引き金となって浙江省台州市で発生した集団的騒乱事件、河南省鄭州市で土地収用の補償をめぐって起きた村民の騒動、湖南省長沙市の市庁前で繰り広げられた土地収用反対の市民の抗議デモ、同じ湖南省の婁底市で電力会社の高圧電線塔計画に反対するために展開された抗議運動など、まさに「焦燥感」によって駆り立てられた民衆の反乱が全国に広がっている様相だ。中国社会全体はあたかも「革命前夜」のような騒然たる雰囲気となっていることがよく分かる。
 そして、7月に起きた高速鉄道事故では、露骨な情報隠蔽を行った政府当局の横暴と人命軽視に対し、民衆の不満と反発が爆発寸前にまで高まった。この一件を見ても、13億国民の「社会的焦燥感」がやがて大きなエネルギーと化して急激な変革を引き起こすに至る日はそう遠くない。そう私は確信している。
                   ◇
【プロフィル】石平
 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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