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 中国共産党の建党90年祝賀会が7月1日、北京で開かれたのを受けて、多くの新聞が社説に中国共産党90周年に因んだ社説を載せている。単に載せているばかりでなく、社説としての意見が分かれているから、これは「社説比較」シリーズにとっては格好のネタだ。今回比較するのは日経を除く四大紙に産経、東京の二紙を加えた五紙。各社説とURLの一覧は以下の通りである。
 
 (1)産経 中国共産党90年 覇権主義拡大に歯止めを  http://sankei.jp.msn.com/world/news/110701/chn11070103140003-n1.htm
 (2)日経 (該当なし)
 (3)読売 中国共産党90年 責任大国への道のりは遠い 
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110630-OYT1T01147.htm?from=any
 (4)毎日 中国共産党90年 毛賛歌では逆コース  http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20110702ddm005070173000c.html
 (5)朝日 中国共産党―「世界最大」の度量示せ http://www.asahi.com/paper/editorial20110630.html?ref=any#Edit2
 (6)東京 党90周年胡演説 「調和社会」に道示せず  http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011070402000042.html
 
 例によって比較表の評価項目は、産経と朝日の社説を横目で見ながら決めた。正味の所、評価項目(1)と(2)は境界が曖昧で、両者は混在している部分があるのは否めない。
 
(1) 中国の現状
(2) 中国の問題点
(3) 中国共産党90年の意義
(4) 中国共産党に対する要望
(5) 我が国の取るべき対応
(6) その他特記事項
 
イメージ 1
 
 比較表の方は例によって、朝日の方の主張を赤字で、産経の方の主張を青字で、両紙にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。
 
 で、比較表にしてみると・・・存外空白「(言及なし)」が目立つ。これは、各紙の社説の切り口が相当に異なっていて「評価項目」として取り上げた上記(1)~(5)の「横串」にひっかからなかった事を意味する。それだけ中国共産党90周年祝賀会と言うイベントが捉えにくい物であったと言う事だろう。
 
 唯一全紙が言及しているのは評価項目(2)「中国の問題点」だ。その内容も、貧富差拡大による不公平感と言う点ではほぼ全紙共通している。
 
 それに特化しているのが東京新聞で、党幹部による企業の私物化について縷々詳細に述べている。それどころか東京社説のメインテーマは、党幹部による企業の私物化が阻害している「和諧社会の実現」であり評価項目(3)「中国共産党90年の意義」ではその和諧社会への道筋が不明だと嘆き、評価項目(1)「中国の現状」では幹部への精神論だけだと嘆息し、結論は評価項目(4)「中国共産党に対する要望」で和諧社会へ向けての新味のない演説では中国社会への不安が消えないと不安がる。評価項目(5)「我が国の取るべき対応」については一言半句の言及もない。
 これでも日本の新聞が、日本の読者へ向けた社説だろうか。これでは「東京新聞」は「とうきょうしんぶん」とは読み難い。「トンキンシンブン」と改称すべきだ
 
 東京新聞とは逆に評価項目(4)が「(言及なし)」で評価項目(5)に記載しているのが産経新聞である。それどころか、評価項目(5)に記載しているのは今回産経だけだ。その産経の評価項目(5)は、産経社説の締めの一節でもある。
 
産1> 日本は強固な日米同盟を土台に、
産2> 東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなどと連携して
産3> 中国の膨張に歯止めをかける必要がある。
産4> その上で民主化を粘り強く働きかけるべきだ。

 
 この結論さえ明確ならば、残余の項目への言及は不要であろう。
 
 読売社説は全紙共通の評価項目(2)の他は評価項目(4)「中国共産党に対する要望」にのみ言及がある。これは、読売社説の大半が評価項目(2)「中国の問題点」に対する言及である事による。領海権や海洋権益をめぐる中国の強硬姿勢や、中国新幹線などの特許・知的財産権問題、貧富格差から少数民族弾圧まで言及した上で、評価項目(4)で中国共産党に要望するのは、「大国としての責任」であり、従来のような威圧的強硬姿勢の撤回であり、次世代の習政権に期待してこの社説を締めるのだが・・・なんと甘っちょろい期待であることか。
 自国のマスコミを「党の口舌=宣伝機関」としか思っていないような中国共産党が、日本の大手紙とは言えマスコミ社説の諌言なぞ歯牙にもかけよう筈がない。それを「大国の責任」とでも言えば中国がそれなりの振る舞いをし始めるかのような期待を抱かす読売社説は、やはり、ミスリードと言うべきだろう。
 
 これが毎日ともなると、さらにトーンダウンだ。評価項目(3)で中国共産党を「史上、最も成功した共産党」と誉めそやし、評価項目(1)で中国のインターネット検閲を非難するものの、評価項目(2)では貧富格差是正の難しさに理解を示し、評価項目(3)で毛沢東回帰しているようでは「大きな期待は持てない」と言う程度。まるで、毛沢東回帰さえしなければ、大した問題は発生していないかのようだ
 
 さらに朝日ともなると・・・・もういけない。評価項目(1)(3)は絶賛の嵐と言って良く、評価項目(2)は中国共産党政権の立場を理解しまくり。結論で締めとなる評価項目(4)では「ほ、本当は複数政党制が良いんだけど、それはム、無理だろうから、非党員をたくさん起用したら。ど、どうかな。」と来たもんだ。挙句の最期の一文は・・・・ 
 
朝1> 世界最大の党の度量に期待したい。
・・・(絶句)・・・・「大男、総身に知恵が廻りかね。」とも言うし、組織が大きければ度量が大きいとは限るまい。むしろ共産党のような組織では逆であろう。
 そう言や手前ぇは以前の社説比較では、「自民党の度量」に期待していなかったっけ。「菅直人や民主党はガキだから、大人になれ。」と。ま、朝日社説が度量にかける期待とはその程度、と言う事か。
 
 以上から、例によって数式化を試みるならば・・・
 
 東京 ⊂ 朝日 ≒ 毎日 < 読売 << 産経
 
 今回のワースト社説は東京だが、朝日も良い勝負だぞ。
 ま、予想通りか。