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 見方によってはこれほど面白い見世物も仲々稀有だろうと思われるのが、今月1日以来の菅直人及び彼奴の率いる現政権をめぐる政治状況であろう。

 何しろ6月1日に現・菅直人政権に対する不信任決議案が出され、憲政史上最多の衆院議席数を誇る民主党の数の威力の前にはそんな不信任決議案は吹き飛んでしまう筈なのが、「我が敵」小沢一郎やら喜ばしくも忌まわしきことに前首相たる鳩山らの蠢動により「不信任案可決」の可能性と期待が高まり、窮余の一策、不信任決議案議決直前に菅直人が「震災対応に目処がついたら退陣する」と辞意を表明するや「我が敵」も「ルーピー」も忽ち腰が砕け散って不信任案は民主党から二人しか賛成せずに圧倒的多数で否決され、不信任案否決で危機を乗り切るや菅直人は「震災対応目処とは、原発事故対処に目処が立つ来年1月が目安」と言い出し、「2次補正予算に目処だ立つ6月末ごろ」と言うルーピー鳩山の見解と真っ向から対立するばかりか、まだ半年以上も首相の座に居座るのを辞意表明なんぞといえるかと言う至極当然の非難が集まると言う体たらく。それでも菅直人は蛙の面に小便だし、「Trust Me!」でオバマ大統領をペテンにかけ「(昨年)5月までに普天間基地決着(*1)」を放り出して首相を辞め、首相は辞めたが「今期限りで議員も辞める」約束は反故にして未だ議員であり続ける「方便」鳩山(*2)が「それは嘘だ!」と怒ろうとも、それは狢同士の喧嘩でしかあるまい。ま、現首相と前首相が狢の喧嘩をやっているってのは、実に喜劇的で滅多見られない見世物ではあるが、他方で日本と日本国にとってはこの上も無いような悲劇でもあるし、況や現状が、管直人の外国人献金問題さえ霞ませてしまうような戦後最大の危機にして大震災・津波・原発事故の災厄三連装を喰らっている状況においては尚更だ。
 
 それでも、かくもめまぐるしく状況の変わる中と言うのは、各紙社説担当者にとっては実に悩ましくもご苦労な状況であろうし、他方でそのご苦労の結果である社説を「社説比較」として俎上に載せてしまえる当ブログにとっては、千歳一隅とも言えるほどの好機でもある。
 
 であるからして、普段は一回分の記事をまとめるのに相当労力が要るしやたらにはやれない「社説比較シリーズ(*3)」を、たてつづけにやってしまおうなんて気にもなる。
 
四大紙+四紙社説比較-内閣不信任案提出2
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35390119.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35390147.html
 
 今回取り上げるのは、前回「社説比較シリーズ」取り上げた「菅内閣不信任案提出」の翌日、菅直人がその「首相「退陣」表明」で民主党内を「一つにまとめ」て、「内閣不信任案否決」を勝ち取った翌日の各紙社説。これまた美事なまでに産経から朝日までのレギュラーメンバー5紙に加えて、東京、琉球新報、沖縄タイムスまで同じテーマで出揃った社説群。その一覧とURLは、以下の通り。
 
(1) 産経【主張】首相「退陣」表明 「死に体」で復興はできぬ  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110603/plc11060303030006-n1.htm
(3) 読売社説 首相退陣表明 「ポスト菅」で強力政権を作れ(6月3日付・読売社説)  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20110602-OYT1T01165.htm?from=any
(4) 毎日社説:菅首相退陣の意向 もう混乱は許されない  http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110603k0000m070130000c.html
(5) 朝日社説 菅首相辞意表明―不毛な政争に区切りを http://www.asahi.com/paper/editorial20110603.html?ref=any
(6) 東京社説 菅首相辞意表明 政治停滞脱する契機に  http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011060302000066.html
(7) ① 琉球新報社説:首相退陣表明 これ以上国民を欺くな 志と政策実行力で競え   http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-177780-storytopic-11.html
  ② 首相退陣時期 早期辞任で政治空白回避を  http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-177829-storytopic-11.html
(8) 沖縄タイムス社説 [内閣不信任案否決]早期退陣し収拾図れ こんな政治は要らない http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-06-03_18718/
 
 比較表のほうは、例によって朝日の方の主張を赤字で、産経の方の主張を青字で、両紙にはない主張で各紙独自の物は太字下線で示した。四大紙+四紙だから、いつもよりも一寸ワイドな表になっている。
 
 評価項目は以下のように設定した。例によって、朝日社説と産経社説を両にらみにした上で、だ。
 
 (1) 不信任案提出の意義
 (2) 菅直人が退陣すべき時期
 (3) 次の政権へ向けての手順
 (4) 民主党の政策担当能力
 (5) 退陣表明の問題点
 (6) 民主党「造反」議員について
 (7) 自民党について
 (8) 留意すべき事項
 評価項目も調度8項目で、さらにワイドになった比較表だ。ただし「言及なし」が目立ったために琉球新報社説は6/3と6/4の二日分の社説を「合わせ技」で載せている。
 
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 さて、表として概観すると、例えば評価項目番外の「主旨」の欄で産経の青字、朝日の赤字、それ以外の各紙の太字下線が入り乱れている。斯様な状態は普通は「各紙の論調が分かれた」ことを意味しそうだが、どうも見ていくと違うようだ。産経が従来どおり早期の菅直人退陣と解散総選挙を要求するのに対し、朝日は、流石に菅直人擁護理論も当人の「辞意」の前には歯切れが悪く「次期首相をじっくり選らべ」と主張。朝日と産経が例によって例のごとくのコントラストを示したのに対し、この二紙以外の各紙は「復興基本法成立と(第二次)補正予算編成(沖縄タイムス)」「復興基本法成立(琉球新報)」等と条件をつけながらも、管直人の早期退陣を求めているためである。さらに注目に値するのは、東京と毎日の2紙が「ポスト管・新首相の下での早期の解散・相違選挙実施」を主張している点。この状況は、前日の「菅内閣不信任案提出」時点での社説比較が「産経&読売」対「朝日グループ=その他6紙」に美事に二分されたのに対し、朝日グループの中で朝日だけが未だ管直人の続投に恋々としておるように見える。朝日は管直人のお抱え新聞かね。
 尤も、先回社説比較で産経と同グループと判定された読売は、前回解散・総選挙をきっぱり否定していただけに、今回も解散・総選挙には触れず、ポスト菅の新首相の下で、日本の総力結集を訴えている。
 
 さらに顕著なのは、評価項目(7)「自民党について」である。産経が早期の解散総選挙を主張し、そのために野党なかんづく自民党に追及の手を緩めるなと発破をかけ、問責決議にも積極的であるのに対し、他の朝日はじめとする7紙はいずれも現職の菅内閣に対してかポスト管の新首相に対してかの差はあっても、兎に角民主党政権への協力を、かなりの字数を裂いて要請している。
 恐らくは、その差を生んでいるのが評価項目(4)「民主党の政策担当能力」であろう。産経が「民主党に政権担当能力はない。」と断じているのに対し、他の7紙は全て「言及なし」であり、「民主党には政権担当能力がある」と言うのが前提になっている。そうであればこそ民主党が主導の政権に「自民党の協力」を要請できてしまうし、ポスト菅の新首相に解散総選挙を求めるにしても、「総選挙が可能なほどに被災地が復興してから」と条件もつけてしまえるのであろう。
 
 だが、一寸頭を冷やして考えてみて欲しい。「被災地が復興するまで次の選挙はない。それまでは、現民主党政権が少なくとも絶対に続く(*4)。」となれば、「民主党政権延命のためには、被災地は復興しないほうが良い。」と考え、実践してしまうのが民主党ではないか。永久に被災地が選挙出来るレベルまで復興しなければ、永久にとは言わぬまでも、今の任期一杯まで民主党政権を続けられる。
 民主党にとって幸いなことで我が国と国民にとって不幸なことにはその方法もある。即ち福島第一原発事故を長引かせることによって、それは可能である。

 左様、私は今でも、管直人の震災翌日福島原発視察がベントを遅らせたのではないかと疑っているし、海水注入中止の指示ないし示唆が管直人若しくは民主党政府から出たであろう事は、尖閣諸島沖体当たり攻撃中国「漁船」船長の釈放指示が出ていたであろう事ほどではなくとも、確実であろうと考えている。だから、菅直人が福島原発事故対処を妨害し、被災地の復興を遅らせることで政権の延命を図ると言うことは、大いにありうると主張する。
 
 それを防ぐためにも、産経主張の通り、「無理矢理でも直ちに解散・総選挙」と言うのが、正しい選択と、思えてならない。
 
 ポスト管とて期待は出来ぬ。そ奴が、民主党の党首である限り。「解散総選挙を延期するために、被災地の復興を遅らせる」ことによるメリットは同じだから。
 
 況や、管直人の現政権を、たかだか「不信任案否決」ぐらいで、支持するなぞ、私には、正気の沙汰とは思われない。
 
 ああ、無論、その、正気の沙汰とは思われないような「共通公約に安全保障と言う項目のない」連立政権に政権交代させてしまったのが、一昨年夏の衆院選挙結果と「政権交代」であるから、正論ならぬ正気の論理とて、通るとは限らないのが世の中であり、民主主義なのであるが。
 
 大分話が「社説比較」からそれてしまったが、例によって数式化すると、以下のようになろうか。
 
 朝日<沖縄タイムス≒琉球新報≒読売≒日経≒東京≒毎日 << 産経
 
 今回の朝日社説は、私に言わせれば、論外と言うべきだろう。
 

<注釈>

(*1) 繰り返す、昨年5月である。しかも、決着である。
 
(*2) そのほかに、一夜にして戦場にはいかないことになった「友愛ボート」だの、一昨年末までの普天間基地移設問題決着延期にクリントン長官の理解を得たと大嘘を吐き、クリントン長官の抗議を受けて「日米関係は大事だと言うことで一致した。」と訳の判らぬ弁明と前言撤回などなどなど、それこそ、枚挙に暇がない。
 
(*3) 必然的に、インターバルは開き気味の。何しろ、レギュラーメンバーは四大紙+産経の5紙であるから、単純に考えて「社説を斬る」シリーズの5倍の労力がかかる。
 
(*4) 而して、その選挙の後には、民主党がまだあるかどうかも少々怪しいし、政権党では多分、絶対に、ない。