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要は「沖縄県民に野生動物並みの保護を!」-「保護」も「扱い」の一種だろうに

 さて、いかがであろうか。
 
 当該社説の眼目は、社説タイトルにもなり、社説の締めにもなっている、次のフレーズだろう。
 
1> これは人権問題だ。
 
 仲々インパクトのあるフレーズではある。だが、その根拠として沖縄タイムスが社説で述べる議論は、疑問符がつくどころか、私には到底納得し難いものがある。
 
 先ず初っ端で沖縄タイムス社説は、MV-22の飛行安全性を取り上げる。開発段階での事故頻発を挙げ、
 
2> 日米両政府はそこに県民の生活があることを無視できるのだろうか。
 
とMV-22配備に同意した日米両政府を非難し、以下のように断じる。
 
3> 危険性を認知しながら放置するだけでなく、
4> 安全性に疑問がある軍用機を配備する両政府の冷徹さは理解を超える。
5> 事故は必ず起きる。どれほど人知を尽くして防波堤を築こうが、いつか予期せぬ落とし穴にはまる。
 
 まるで、MV-22が事故を起こすために沖縄に配備されるかのような書きっぷりだ。事故は少なくとも配備された米国の財産であるMV-22を失わせる物であるし、射出座席なんて文明の利器もないMV-22では、その事故はほぼ乗員の死傷に直結している。さらにMV-22で運搬されている乗組員の方こそ落下傘や救命胴衣が常備されていない分、事故の際にはさらに厳しいことになる。機体を含む器材の損失、人員の死傷、いずれも米国にとっても米海兵隊にとっても不幸な事態である。戦闘によるものならば損害をある程度甘受する米海兵隊とて、平時の事故で損害を被ることは極力避ける。米海兵隊員は、アルカイーダのテロリストのような消耗品ではないし、米国としては、消耗品には出来ない。つまり、MV-22にせよいずれの機体にせよ、発生するかも知れない事故は、米国にとっても米海兵隊にとっても重大なのであり、「安全性に疑問のある軍用機を配備する冷徹さ」と言うのは、少なくとも米政府に対しては不当な評価である。
 
 さらに言えば、事故に際して必ず被る米国・米海兵隊の損害に対して、事故の際落下した機体その他により基地周辺住民が被る損害は間接的で、比較的蓋然性が低い。事故が洋上で起きれば、基地周辺が被る物理的損害は皆無と言う可能性もあろう。(*1)そりゃ巻き込まれるのアメリカ人ではなく日本人で、軍人ではなく民間人で、MV-22に搭乗していた訳でもないから事故に対する覚悟も無いであろうとは思うが、事故に際して必ず巻き込まれ死傷もするだろう米軍人を無視して(*2)、事故によっては巻き込まれるかもしれない周辺住民=沖縄県民=日本人(の筈)のみを取り上げて「人権問題」と主張するならば、沖縄タイムス社説は「沖縄県民で無ければ人ではない。(*3)」と主張していることになるが、それで間違いはないか。
 
 如何に沖縄タイムスがバカ新聞、もとい、アカ新聞とは言え、正々堂々と社説で人権問題となる主張を行なうとは考えにくいのであるが、当該社説の後段も実に酷い物である。こちらでは、米国に配備されるMV-22の飛行制限に触れて、これを誉めそやすのである。
 
6> オスプレイを使った訓練は、
7> 河岸、湖岸、春に出現する水たまりなど環境変化に敏感な生息域を十分に考慮することを義務づけ、
8>環境マップで示された立ち入り禁止区域を避けるよう指示する。
9> 沖縄とは基地周辺の環境が違いすぎる。
10> 繁殖期に気を配り、春季の池さえ保護する米軍と、
11> 住宅や学校、病院上空で容赦なく爆音をまき散らす在沖米軍が同じ集団とは信じがたい。
 
 上記6>~11>が意味する所は二つあろう。
 
 一つには、沖縄タイムス社説はMV-22を上記4>「安全性に疑問がある軍用機」としながらも、その実戦配備そのものは非難の対象とせず、言い換えれば周辺住民を巻き込まない事故、もっと言えば沖縄県民に関係ない事故については全く関知していない。言うまでもないが前述の通り、MV-22が事故を起こせばその乗員は死傷する可能性が高いのだが、それは無視されている。沖縄県民に売るだけの沖縄タイムスと言う営利団体としてはそれで宜しかろうが、一体どの面下げて「これは人権問題だ」等と銘打つ社説を掲げるのかね。
 
 もう一つの意味は、この主張が、普天間基地周辺の沖縄県民を野生動物扱いしていると言うことである。
 
12> 野生動物が神経質になる繁殖期に騒音は最も有害であることや
13> 「ヘリが100メートル圏内に入るとフクロウは巣から逃げた」との論文を随所に引用する

 
とも述べているから、「基地周辺住民を野生動物並み保護しろ」と主張していることになる。「沖縄基地周辺住民の扱いが野生動物以下の扱いだから人権問題だ。」と沖縄タイムスは主張したいのだろうが、普天間基地周辺の沖縄県民を野生動物扱いしている事に変わりはない。それは、人権問題ではないのかね。
 
 だがしかし、沖縄タイムス自らが認めているところにより、その「沖縄基地周辺住民の米国基地周辺野生動物並みの保護」は実現しないだろう。上記9> 「沖縄とは基地周辺の環境が違いすぎる。」のであるから。

 それ即ち、現行日米合意どおりに辺野古へ普天間基地を移設するならば、米国西海岸で実施されているような「野生動物保護」が出来る可能性はあろうが、現在の普天間基地に対し「周辺住民を米国基地周辺の野生動物並みに保護する」ことは不可能であろう、と言う事だ。
 
 もっと言うならば、鳩山由紀夫の「民主党党首としての(口)約束」である(*4)「最低でも県外」なてキャッチフレーズを煽って普天間基地の辺野古移設を「困難」若しくは「不可能」な事態に陥れた沖縄タイムスにも、そのような事態の責任はあると言う事だ。
 
 さて、此処に到れば当記事のタイトルに「こりゃ(沖縄タイムスの)自滅だな」とした理由は明白であろうと期待する。沖縄タイムス社説は沖縄は普天間基地へのMV-22配備を「人権問題」と糾弾しつつそのMV-22に乗り組む米軍人の人権は無視し、その「人権問題」を引き起こしている責任を都合よく忘却しているから、である。
 
 如何に、沖縄タイムス。
 

<注釈>

(*1) それでも「精神的損害」とかナントカ、理屈はつきそうだが。
 
(*2) 何故ならば、MV-22事故に米軍人が巻き込まれるのは沖縄に限らないのに対し、沖縄タイムス社説はMV-22の沖縄配備しか問題にていないから。そりゃ米軍人で沖縄タイムスを買ってれている顧客は少ないかも知れないが( 私が米軍人であったら、見るのも嫌だろうな。)、だとしたら沖縄タイムスは「顧客で無ければ人ではない。」と考えていることになる。実に美事な商業主義であり、非人道的商業主義と呼ぶべきだろうな。
 
(*3) もしくは「米国軍人は人ではない。」と言う主張。これはこれで、人権問題または国籍差別の職業差別だろう。
 
(*4) と、民主党公式見解ではなってしまった。