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海水注入は継続していた…原発・吉田所長が判断  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110526-00000705-yom-sci
読売新聞 5月26日(木)15時29分配信
 東京電力の武藤栄副社長は26日、福島第一原子力発電所1号機で東日本大震災の発生翌日に、同社が冷却用の海水注入を中断していたとされる問題で「注入中断はなく、継続していた」と発表し、21日に政府・東電統合対策室が公表した調査結果を訂正した。
 同原発の吉田昌郎所長が、事態の悪化を阻止するためには注水継続が必要と判断し、中断を見送っていたという。
 統合対策室はこれまで、東電が3月12日午後7時4分に海水の試験注入を始めた後、原子炉の「再臨界」の可能性を懸念した官邸の意向に配慮し、同25分に独断で注入を中断したとの調査結果を公表。
 しかし、公表翌日の22日には、班目春樹・内閣府原子力安全委員長が、再臨界に関する自分の発言内容が異なると抗議し、調査内容を訂正していた。
 1号機では震災後、炉心溶融(メルトダウン)と水素爆発が相次いで発生。海水注入の中断によって、圧力容器の損傷が悪化した可能性が指摘されていた。 最終更新:5月26日(木)15時29分
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奇怪な事態だが、責任追及は続行すべし。

 混乱した状況には、情報の錯綜がつき物である。情報の錯綜が混乱した状況を生み出すと言うことも勿論あるが、例えば戦場に於ける戦況なんてのは昔から「情報の錯綜」且つ「混乱した状況」の典型であり、この混乱・錯綜状態は「戦場の霧 Fog of War」と呼び習わされている。震災翌日で1号機に水素爆発が発生した福島原発対処と言うのも、戦場に近い状況であった事は、想像に難くない。
 戦況を知る情報源が、人間による斥候伝令情報から、電信、無線、航空偵察、衛星偵察さらにはIT技術と情報収集伝達手段を発達させてきた現代に於いても、「戦場の霧」は払拭されたわけではなく、指揮官の判断は、常に不足し不正確な情報に基づく物であり、多分に指揮官自身の心眼と度胸、或いは運による所大であるのが常だ。
 
 「運の良い者でなければ、将軍にはしない。」と豪語したのは、確かナポレオンであったと思うが(*1)、未だに日本の自衛隊三軍の最高指揮官(*2)である菅直人の運、否、悪運は、ひょっとすると相当強いのかもしれない。
 
 報じられているのは福島原発海水注水が震災翌日の3月12日夜に1時間ほどにわたって中断したとされる先行報道の続報。新たにわかった事実として、
 
1> 同原発の吉田昌郎所長が、
2> 事態の悪化を阻止するためには注水継続が必要と判断し、
3> 中断を見送っていたという。
 
と報じられている。
 これ即ち、菅直人直々の命令か、政府の命令か、菅直人の顔色を窺ったか、いまだ定かではないが兎に角東電本社が下した「海水注水中断」指令を、吉田福島原発所長が命令無視して、海水注水を続行していた、と言う事だ。
 
 言うまでもなかろうが、これは福島原発事故対処と言う点では朗報である。先行記事にもした通り、私の最新とは到底言い得ない原子力知識を以ってしても、海水注水中断は事態を悪化させこそすれども好転させはしない。毎日社説がその中断の影響を軽視しようとも、斑目安全委員長が「海水注水による再臨界の可能性」を「殆どゼロと言う意味で『ゼロではない』。」等と国会答弁のような事を( それも震災翌日で1号機水素爆発があった日の夜に、事もあろうに菅直人の前で。)抜かそうとも、この見解に修正を要する物ではない。
 
原子炉海水注入中断 政府、今度は斑目委員長に責任転嫁か http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35322615.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35322644.html 
(4-2)紙+2紙社説比較-福島原発海水注水中断  
http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/35327763.html
 
 而して、何をどう判断してかは兎も角、「海水注水中断」と決定されたのを覆し、その朗報をもたらしたのは、吉田福島原発所長の独断専横であり、ある意味「敵前反抗」である。
 
 さて、当該報道が「今度こそ」真実であり、菅直人と民主党政権に対する責任追及を免れるためのでっち上げでないと仮定(*3)の上で考えるならば、吉田署長の「敵前反抗」は東電本社の誤判断を訂正した現場判断であり、結果として「無為に生じたかも知れない約1時間の海水注水中断を免れた。」のであるから、これは賞賛されて然るべきである。
 
 対して東電本社の方は、「海水注水中断」指令の根拠を審らかにすべきだろ。菅直人の命令か、斑目委員長の圧力か、政府の命令か、「東電独自の判断」かは知らないが、誤判断と誤った命令を下した事は明らかで、その責任は菅直人ないし政府の命令、ある意味「指揮権発動」がない限り免れ得ない。
 で、当該報道以前はそれこそ原子炉にダメージを与えるような誤判断「海水注水中断」を命じていたのではないかと責任を追及されていた菅直人やら民主党政権の御歴々は、少なくとも「原子炉に実害を与えた」と言う責任だけは免れた形。さぞや安堵していることだろう。谷垣自民党総裁が悔しがるのもある意味無理はない。東電の発表そのものに疑義が呈される事も致し方ない。が、菅直人ないし政府が東電に対し「指揮権発動」し海水注水中断を命じたのではないか、或いは直接命じずとも、態度や顔色で間接的な命令を与えたのではないかとの疑惑は、今だ残っている。その命令なり顔色なりによる実害がなかった、吉田所長の好判断で実害を防げた、と言うだけだ。
 
 因みに今回報道以前の報道から、東電から海水注入の事前報告は確かにあったと政府自身が認めており、先日の国会答弁で菅直人が主張した「海水注入の報告は無かったのだから、海水注入中断の命令を出す訳がない。」と言う主張は既に崩れている。如何に枝野が「海水注入の事前報告はあったが、海水注入開始するという実施報告は受け取っていない。」と強弁しようとも、事前報告があれば「海水注入はやがて実施される」と言う認識はあるのだから、それに中断命令を出す事はありうる。菅直人は今フランスであろうが、帰国後に相応の弁明が必要であろう。
 
東電は海水注入を事前報告 菅首相「報告はなかった」と矛盾  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110525/plc11052501300001-n1.htm
海水注入の事前報告、枝野氏認める  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110525/plc11052512370010-n1.htm
 
 とどのつまり、私の結論は、当該報道を得ても余り変わるものではない。
 
 福島原発は、吉田署長の「敵前反抗」により、「海水注水中断」の悪影響を免れた。
 だが、その幸運は、「海水注水中断」を決定したプロセスの責任追及を免じる物ではない。
 その責任は、一義的には東電本社と言う事になろうが、先述の通り国会での弁明が崩れた菅直人や、「殆どゼロと言う意味で『ゼロではない』』と言ったと斑目安全委員長についても、追求されるべきだ。
 

<注釈>

(*1) つまり「俺は物凄く運が良いんだ。」と豪語したようなものだ。欧州大陸席捲からナポレオン法典まで、数々の大業を為したのだから、それぐらいの豪語は許されようが。
 
(*2) と言う事は、将軍中の将軍と言う事でもある。自衛隊にも将官=将軍は居るのだから。
 
(*3) なにしろ彼奴らは、昨年尖閣諸島沖で海保庁巡視船に体当たり攻撃を仕掛けた中国「漁船」船長の釈放=国外追放を、未だに「地検の判断であり、政府はこれを諒とした。」と抜かし、責任を取ろうとしないのだから、東電に圧力かけて嘘を言わせるぐらいはやりかねない。