3.斑目委員長、「海水注入で再臨界の恐れ」発言を名誉毀損と訴える。

 
応援いただけるならば、クリックを⇒ https://www.blogmura.com/
 
 それでも私は先述の通り、原子力の専門家ではないし、最新の研究どころか此処10年の研究さえも怪しいような時代遅れだ。何か私の知らないような現象で、例えば海水中の不純物が大いに中性子を反射するなんて事が起きる事が知られていないとも限らない・・・或いはそれでも水蒸気爆発や水蒸気による圧力上昇は原理的には「再臨界」より先に問題になる筈だから、原子炉の圧力容器は水蒸気爆発なんぞモノともしないような頑丈な容器である可能性もある(*1)・・・
 
 だが、まあ、私の「素人考え(*2)」も、そう外した物でもなかったようだ。
 
 報じられているのは、問題の「海水注入による再臨界の危険性」を言ったと指名された斑目内閣府原子力安全委員長の反発と、政府発表の訂正。
 
斑1>  「そんなことを言ったら私の原子力専門家の生命は終わりだ。
斑2> 名誉毀損(きそん)で冗談ではない」
 
との事であるから、斑目安全委員長自身が政府の発表を真っ向から否定した形だ。これが学問的事実(*3)であるならば、否定するのが当然だろう。それこそ、学者としての存在理由に関わる。少なくとも民主主義体制を取っている我が国の学者としての存在理由に。
 
斑3> 「(真水を)海水に替えたら不純物が混ざるから、
斑4> むしろ臨界の可能性は下がる」
 
とも報じられているから、海水中の不純物、主として塩分も、上述したような「中性子線反射効果」は無い様である。
 これを受けての政府対応は以下のように報じられている。
 
政1> 政府は班目氏の発言は
政2> 「そういう(再臨界の)可能性はゼロではない」
政3> だったと訂正した。
 
 なんともはや。
 
 「可能性はゼロではない」とはまた便利な表現だ。何しろ部屋の中の空気中の酸素分子が全部部屋の反対側に偏ってしまって窒息死してしまう確率だって、凡そ10の72乗分の1(*4)の極めて低い確率ではあるが、ゼロではない。それぐらいの低い確率でなら「再臨界の可能性がある」とは、斑目委員長と言えども「学問的良心に従い」認めざるを得ないかも知れない。
 
 が、上述斑3>~斑4>の通り、海水注入による不純物はむしろ臨界の可能性を下げるのならば、「海水冷却により再臨界が発生するケース」と言うのは、先述の「冷却水が既に格納容器底に貯まった核燃料を覆っていない」ケースしかあり得ない。その場合は先述の通り、再臨界よりも先に、水蒸気爆発と水蒸気による圧力上昇こそ警告すべきである。再臨界が起こるとしても、その二つを「乗り越えた」後の事だ。
 
 言い換えよう。
 
 斑目委員長が学問的良心に従っている限り、また、よほどひねくれた答え方をしない限り、「海水冷却により再臨界に至る可能性はゼロではない。」と発言した公算は低い。即ち、政府の修正発表ですら、虚偽である公算大である。

 

<注釈>

(*1) それが工業製品である限り、無限に強度などありはしないから、安全余裕はあるとしても、「絶対に壊れない」と言う事はありえないのだが。原子炉格納容器は特殊鋼で出来ている筈だが、所詮は鉄は鉄だろう。
 
(*2) ここでも告白しておくならば、「素人考え」と言い条、「海水注入で再臨界の可能性があるとの警告があった」と政府見解を右から左に流すだけの報道記者なんぞより、よほど自信はある。少なくとも、其処に疑義を差し挟むだけの自信が。本来ならばそんな自信を、報道記者自身が持つべきなのだが。軍事でも、科学でも、だ。
 
(*3) そしてまた、学問的事実は客観的に検証されうる。「政治的事実」とは違って。
 
(*4) 以前計算したとおり。仮に人間が3分息をとめていられるとして、斯様な事態に遭遇して窒息死してしまう目にあうまでの期待時間は、3分×10^72 = 1年は365日×24時間×60分=525600分 ≒ 5×10^5分 であるから、3×10^72分 = 6×10^66 年になる。地球誕生以来50億年は5×10^9年でしかないから、その約10^57倍・・・
 

4.本質を見誤るな。問題は「政府の介入で海水冷却が中断してしまった」か否かだ。


 所で、今回問題なのは「海水注入によって再臨界となる可能性がある」と斑目委員長なり誰やらナリが主張したか、どうか、ではないだろう。
 
 「「海水注入によって再臨界となる可能性がある」との主張の有無に関わらず、政府の介入で海水冷却が中断されたか、否か。」だ。何故ならば、その海水冷却中断は、事態を悪化させこそすれ、改善はしないからだ(*1)。それが政府の介入によるならば、政府の責任は免れない。
 
枝1> 「東電がやっていることを(政府が)止めたことは一度も承知していない」
 この枝野の主張どおり、海水冷却中断が政府の介入によるものでないならば、誰がその中断を決定し、その中断の根拠は何かが問題である。その根拠が「海水注入によって再臨界となる可能性がある」との主張であるならば、その主張は誰がなしたか、斑目委員長はその可能性を「ゼロではない」と認めたのかが問題になる。
 
 いずれにせよ、本件は、追及され、解明されるべきである。
 
 事は斑目委員長の名誉だけの問題ではない。
 
 福島原発事故対処の、責任体制問題である。
 
 左様、菅直人がやたら乱立させたナントカ委員会カントカ会議の優先順位と決定・決断・決裁手順の問題である。
 
 と言う事は、だ。斑目委員長だろうが誰だろうが「海水注入は再臨界の恐れがある」との主張があろうがあるまいが、菅直人の責任と言うのは、免れようがないのだがね。
 
 日本国首相と言う最高指揮官にして最高責任者ならば、理の当然のことではあるが。

 

<注釈>

(*1) IBさん主張のように、冷却も制御も放棄して、メルトダウンも再臨界も放ったらかして、土砂山にでも埋めて敵前逃亡を決め込むのなら、別だろうが。