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復活の道―東日本大震災で水没したF-2復活は1/3程度との見通し

 報じられているのは、先頃日本を襲った東日本大震災と、その後の津波を松島基地が喰らったために、海水で洗われる羽目に陥った我らがF-2「支援」戦闘機の修理見通し。ある程度予想された事態とは言え、やはりF-2復活は困難である事が報じられている。
 
1> 東日本大震災の津波で水没した航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)のF2戦闘機18機のうち、
2> 復活可能なのが最大3分の1の6機しかないことが
3> 18日、防衛省の調査で分かった。
4> 各機の部品を集めて修理するのに5年ほどかかり、
5> 修理費は1機当たり50億~60億円とみる。
 
 さらに同じ報道は、F-2戦闘機のことを、
 
6> 1機当たりの機体価格が約120億円
 
とも報じるから、今回水没したF-2の修理費は、機体を新造する価格の半分ほどにも達した計算だし、
 
7> 平成23年度第1次補正予算では、水没F2の検査費などで約150億円を計上した。
 
とも報じられているから、この検査費を復活する筈の6機に割り振ると、調査から修理までの費用は1機当たり75億~85億円。上述の新造機体価格の7割近い金額である。但し、F-2は既に調達が終了して生産ラインも閉じてしまっている(*1)から、仮に追加新規調達を決意しても、上記6>の120億円では買えない筈だ。
 修理費が新造の7割と言うのは、一見勿体無いような価格だが、無理からぬと想うところでもある。現代のジェット戦闘機は電子機器の塊で、価格の大半は電子機器が占める。さらに普通の飛行機は水密構造ではない上に、今回被ったのは津波で、塩水だ。電子機器にとっては水でさえ禁物であるのに、塩水はさらに厳しい。回路が塩水を被っては、ショートさせまくったようなものだし、金属部分を腐食させる。F-2の場合、主翼などの主要構造の一部が複合材化されているから、この部分は塩水に対しては通常のアルミ合金よりは強そうだが・・・
 
 復活するのは海水を被った機体の1/3の6機。修理費用は量産時の7割。なおかつ修理期間が5年。やはり、相当な痛手だ。
 
 だが、本質的な問題は、松島基地のF-2の18機が失われた事ではないことを、想起すべきだろう。

 本質的な問題は、松島基地に配備されたF-2訓練部隊の、訓練機能がF-2訓練機18機分失われ、仮に上記の通り予算がこの次の第二次補正予算でついたとしても、そのうち6機分が5年かけて復活するだけ、と言う、松島基地F-2訓練機能の低下だ。
 
8> 空自の検討では、
9>  (1)実戦部隊のF2を教育に転用
10> (2)米国に派遣し、F2の機体のベースとなっているF16の課程で養成
11>  (3)F15で養成後、F2に機種転換
12>  -を組み合わせる案が有力となっている。
 
とも報じられているから、空自としては松島基地の訓練機能低下をナントカ挽回しようしているものと見える。上記(1)はF-2実戦部隊の、上記(3)はF-15訓練部隊の、それぞれ戦力低下を意味するし、そうでなくても我が自衛隊は常に数が足らないのだから、松島基地F-2訓練によるF-2パイロットの確保と練度向上は、相当優先とが高い事だろう。空自が検討すると言う上記(1)~(3)の組み合わせならば、それもナントカ可能なように思われる。
 無論、最善の手段は、訓練用にF-2Bを追加発注し、生産再開することではあるが、上記(1)~(3)は次善の策ではある。
 否、この策は次々善で、次善の策は、「訓練用のF-15を追加生産してF-15訓練部隊に配備の上、上記(3)を実施する」かも知れないが、F-15の新規生産も相当高価だから、やはりこの策に落ち着くのだろう。
 
 とは言え、松島F-2訓練部隊、F-2部隊、ひいては我が国にとっても厳しい状況であることは変わりがない。
 
 頑張ろう、日本。
 
 いろんな意味で。

 

<注釈>

(*1) 武器輸出が認められていれば、F-2の生産は終っても、生産ラインはまだ維持されていた可能性はあるな。輸出を目指してデモ機を数機生産していた可能性も。
 誰がF-2を買うか、と言うのは大問題だが。日本独自の対艦ミサイル運用能力はあるが、価格じゃF-16に遠く及ぶまい。