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 毎日が「検証・大震災」と銘打って、その中で10万人体制を敷いた自衛隊の被災地での活躍や米軍の支援を報じている。毎日にしては珍しいぐらいだ。
 
 以下、その一部を転載しよう。

転載開始==========================================================================================

検証・大震災:不信洗った、ヘリ放水 原発から白煙…政権「世界に見放される」  http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110422ddm001040072000c.html
放水用バケツを下げて飛び立つ陸自ヘリ=陸上自衛隊提供 ◇自衛隊が前面、米に覚悟示す
 晴れ渡る空に陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47が2機、巨大なバケツ(容量7・5トン)をつり下げて仙台市の陸自霞目(かすみのめ)駐屯地を飛び立ったのは、東日本大震災6日後の3月17日朝だった。東京電力福島第1原発3号機からは白煙が上がる。使用済み核燃料プールの水が沸騰した放射性水蒸気だ。海水をくんで放水し、プールを冷やす前代未聞の作戦だった。

 「炉心溶融が進行していれば、放水によって水蒸気爆発を起こすおそれもある」。菅直人首相らは「最悪のシナリオ」を危惧し、防衛省は搭乗隊員向けにできる限りの防護策をとった。放射線を極力遮断するため戦闘用防護衣の下に鉛製ベストを着込み、床部にはタングステン板を敷き詰めた。原発上空に停止せず、横切りながら放水する方式とした。

 「ヘリ放水開始」。午前9時48分、テレビ画像のテロップとともに映像は世界に生中継された。計4回(計約30トン)の放水で1回目が目標に命中したが、爆発は起きなかった。日本政府が命がけの作戦を開始した--。ニュースが伝わった東京株式市場では全面安の展開だった日経平均株価の下げ幅が緩んだ。

 「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」。作業終了から約10分後、菅首相はオバマ米大統領に電話で伝えた。その後、米国防総省は藤崎一郎駐米大使にこう伝えた。「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」

 翌18日、米原子力規制委員会(NRC)代表団や在日米軍幹部と、防衛、外務当局や東電など日本側関係者が防衛省でひそかに会合を持った。米側の一人はヘリ放水を称賛した。「よくやりましたね」

 相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御できない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした。

    ◆

 「原発の状況が分からない」。米国のいら立ちは震災直後からあった。NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は「情報開示に慎重だった」といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。

 14日には「トモダチ作戦」に参加していた米原子力空母ロナルド・レーガンが乗員から放射性物質が検出されたとして三陸沖を離れ、16日にはNRCのヤツコ委員長が下院公聴会で「4号機の使用済み核燃料プールには水がない」と証言。17日未明にルース駐日米大使が日本の避難指示より広範な原発から半径50マイル(約80キロ)以内の米国人に圏外避難を勧告した。一連の言動は日本への不信と強い危機感の表れと映った。

 日米がかみ合わない中、打開に動いたのは防衛省だった。15日に東電側と相談して「3号機は上空、4号機は地上から」という放水作戦を立案。水蒸気爆発を懸念した菅首相は防衛省に「地上の前にまず上空から」と指示した。隊員から戸惑いの声も漏れたが、「やるしかない」と陸自幹部は覚悟を決めた。

 16日の夜には北沢俊美防衛相と制服組トップの折木良一統合幕僚長が「放射線量の数値が高くても踏み切る」と「17日決行」を決める。「隊員の命にかかわる作戦だ」。17日朝、折木統幕長が東電から「安全」を確認すると北沢防衛相に最終的なゴーサインを告げた。

 「今日が限度と判断をした」。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と行われなかった。【震災検証取材班】

====================================================================================転載完了

 自衛隊の勇気が日米同盟を救い、政府は自衛隊の勇気を利用した訳だ。

 確かに自衛隊の勇気は日本の財産だ。その自衛隊の最高指揮官であるはずの日本国首相たる菅直人は、その勇気の使い所、見せ所を決める権限を有している。それぞ正しく最高指揮権であり、統帥権。極端に言えば、自衛隊に「死ね。」と命じることが出来る権利だ。
 
 自衛隊の勇気の使い所・見せ所として、福島原発事故対応と言うのも悪くないだろう。実効の程は確かに疑問だが、使用済み燃料貯蔵プールに陸自ヘリから放水すると言う方法は、視覚的インパクトもある程度在るし、「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」と現・民主党政府が米政府に対し力みかえる材料には持って来いだ。報道記事によれば、その後実際に米側の支援を本格化させたというのだから、勇気の見せ所として有効であったと言えよう。
 
 その米側が「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」と表明した自衛隊の勇気発揮が、直接的な人的被害・損耗に繋がらなかったのも幸いだ。鉛ベストを着用し、タングステン板(*1)を敷き詰めて、ホバリング(空中停止)せずに移動しながらの放水で万全を期した事も報じられている。何しろ我が自衛隊はあれこれ制限制約はあるが我が軍隊だ。我が軍隊がその勇気を発揮すると、とんでもない人的損耗となりうる事は、先の大戦=大東亜戦争(太平洋戦争)が実証していよう。人類共通の財産である勇気も、勇気ある者も、徒に浪費消耗して良いものではない。否、勇気/勇気あるもの徒な浪費消耗は、人道上ばかりか勇気そのものの価値に対する冒涜である。
 
 章題には批判的ニュアンスが読み取れようが、政府が自衛隊の勇気を利用するのは、ある意味当たり前だ。軍事は政治の手段であり、政治目的のために利用される軍事手段の一つが「自衛隊の勇気」なのだから。
 
 問題は・・・政権交代以前の野党時代から防衛予算の圧縮に汲々とし、昨年末に漸くまとまった防衛計画の大綱でも何のかのと自衛隊三軍の縮小ばかり求め(*2)、防衛関係費を防災対策費用共々華々しい「事業仕分け」の犠牲として削除し、「自衛隊は暴力装置」と公言する仙谷を震災後に内閣に官房副長官として返り咲かせ、「自衛隊は違憲だから反対」と主張し続けながらソマリア沖ではちゃっかり海上自衛隊に護衛を依頼するピースボートの首魁たる辻本をボランティア何とかに抜擢し、防衛相次官通達で自衛官の基本的人権と言論の自由を蹂躙している民主党が、民主党政権が、その党首にして首相たる菅直人や防衛相たる北沢が、かくも図々しくもぬけぬけと、自衛隊の勇気を利用し、政府失策のツケを自衛隊に押し付けている事である。
 
 それでも黙々と任務を果たし、菅直人及び民主党政権のツケを払い利用されている自衛隊の勇気と、任務に対する真摯さに、私は満腔の敬意を表明する。
 
 と同時に、上記のような実績を積み重ねつつ、文民統制である政府政権であるというのに胡坐をかいて自衛隊の勇気を良いように利用する現民主党政権や菅直人に、今更ながら深い嫌悪感を覚える。
 
 確かに、斯様な自衛隊の勇気を利用せず、被災地被災者の被害損害を拡大するよりは、格段にマシなのではあるが・・・納得できるものか。


<注釈>

(*1) 厚さにも拠るが、結構な重量の筈。タングステンは、徹甲弾の弾芯にも使われる、高密度金属だ。それ故に、放射線遮蔽効果が高いのだろうが。

(*2) ほぼ唯一の例外が、海自潜水艦の増勢だな。