無理難題-東京新聞社説「自衛隊と災害派遣 災害派遣をより本格的に」を斬る

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 東日本大震災において、我が自衛隊三軍が震災救援・復旧さらには福島第1原発対処にまで動員され、自衛隊史上最大の動員体制の元、黙々と作業に従事し、相当な成果を挙げている事は、いかに自衛隊嫌いマスコミが多い報道体制下でも隠れもないところである。また、それだけ自衛隊に対する期待も大きいし、膨らんでいるのも確かだろう。
 
 であればこそ、東京新聞などと言う胡散臭い新聞(*1)も、社説に大きく自衛隊の活躍を取り上げている。取り上げているが・・・・ま、先ずは東京新聞社説をご一読願おうか。
 
 例によって私の突っ込みは、注釈として後に付けてある。
 


<注釈>

(*1) と言って悪ければ、「朝日新聞によく似ている。」と言い直そう。私にとっては、同義語に近いが。



東京新聞社説 災害派遣を寄り本格的に-精神分裂

自衛隊と大震災 災害派遣をより本格的に  http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2011032802000050.html
2011年3月28日
 東日本大震災に派遣されている自衛隊が、菅直人首相の指示した十万人を超えた。自衛隊は災害派遣に、どれだけ力を注いでもやり過ぎることはない。(*1)
 被災地に派遣されている自衛官は約十万六千人、航空機約五百三十機、艦艇約五十隻─。政府の中央防災会議が定めている大規模地震の「首都直下地震対処計画」の派遣規模にほぼ匹敵する。
 自衛隊も被災者である。東北地方を担任する仙台市の陸上自衛隊東北方面総監部の隊員の家族のうち、死者・行方不明者は約三百人。隊員は悲しみをこらえ、住民の救援にあたっている。(*2)

◆ロシア機が挑発飛行
 航空自衛隊松島基地(宮城)では戦闘機を含む二十八機が水没した。隊員が災害派遣に駆り出されているため、修理できず、格納庫にしまい込まれている。
 この間、日本周辺が静かだったわけではない。震災発生後の十七日と二十一日、ロシアのIL20偵察機やSu27戦闘機が日本海を日本に向かって南下し、複数の基地からF15戦闘機が緊急発進する事態になった。被災時の日本の防空体制を確認する目的としか思えない挑発行為である。(*3)
 自衛隊は東日本大震災対処を最優先としているが、本来任務の防衛警備はおろそかにできない。難しいかじ取りが求められている。(*4)
 東日本大震災に派遣された隊員数は、二日目から二万人、五万人、六万六千人と増え続け、八日目に十万人を突破した。発生から五日目以降も一万人台で推移した一九九五年の阪神大震災と比べ、素早く動員できたことが分かる。
 阪神大震災では当初、兵庫県知事からの災害派遣要請がなく、自衛隊を送り込めなかった。その反省から自衛隊法が改定され、震度5弱の地震発生で自衛隊は自主派遣できるようになり、速やかに出動できる根拠法令が整った。(*5)
 阪神大震災以降、地方自治体はこぞって自衛隊との災害訓練を求め、実際に起きた新潟県中越地震、岩手・宮城内陸地震などを通じて、自衛隊と地方自治体の連携はさらに強まった。陸上自衛隊の各部隊には倒壊家屋から被災者を救出する二種類の人命救助システムが配備され、この器材を活用した訓練も始まった。
 今回、陸海空自衛隊を統合運用する災害統合任務部隊が初めて編成され、君塚栄治東北方面総監が一元的に指揮をとっている。こうした要因がうまく絡み合っている。それでも被災者救援は十分ではない。連携が足りない分野もある。原発事故への対処である。

◆連携拒んだ電力会社
 東北方面総監部は二〇〇八年、「宮城県沖でマグニチュード(M)8の地震が発生した」との想定で二県二十二市町と民間企業が参加する実動訓練「みちのくアラート」を実施した。ただ、想定の被災地から福島県を外したことと、本社が東京にあって調整が困難だったことから福島第一、第二原発を抱える東京電力は参加していない。
 それだけではない。全国に五十四基の原発を持つ電力各社が「原発は多重防護により安全」と主張し、自衛隊との連携を求めない現実がある。経済産業省が主体の原子力総合防災訓練で、自衛隊が担うのは住民避難の支援や空中の放射線観測といった原発から離れた場所での活動にとどまっている。
 訓練もしていない福島第一原発での放水作業を可能にしたのは、防衛省が九九年に起きた茨城県東海村のJCO臨界事故の再来を想定して、化学防護車の放射線対策を強化したり、鉛入りの放射線防護服を開発したりと準備したからである。招かれざる客が正装して待機していたのが今回といえる。
 自衛隊の災害派遣は毎年五百回から九百回の間で推移し、〇九年度は五百五十九回あった。福島第一原発へ出動した核・生物・化学(NBC)兵器の専門集団である中央特殊武器防護隊は九五年、東京で起きた地下鉄サリン事件でも前身の部隊が出動している。

◆防災予算と十分な訓練を
 この際、確度が高い災害派遣にいっそう力を入れることにしてはどうか。昨年十二月に閣議決定された「防衛計画の大綱」は、「本格的侵攻の可能性は低い」とし、戦車、大砲といった冷戦型の装備を大幅に減らす一方で、陸上自衛官の編成定数は十五万四千人と一千人の削減にとどめた。(*6)
 普通科(歩兵)が増えるであろう陸自に各種災害に備えた専門部隊を新設するのは難しくない(*7)。過剰な武器の購入費を防災に必要な装備の購入に回し、訓練時間も増やす(*8)。国際災害でも「まじめで礼儀正しい」「高い技術を持っている」と派遣先国から絶賛される自衛隊である。国防と災害派遣。二正面での活動を期待したい(*9)。


<注釈>

(*1) 一寸待てや。自衛隊の本分は国防だ。幾ら災害派遣だとて、国防を疎かにするのは本末転倒だ。従って当然「災害は件に力を注いでやり過ぎる」と言うことはあり得る。

(*2) この辺りは、マスコミには珍しく、自衛隊・自衛官を人間扱いしている。

(*3) この辺りも、先行記事にしたところであるし、私も同意する。

(*4) と、其処まで分かっているのに・・・・

(*5) 法令がいくら整っても、実際に動くのは自衛隊だ。確かに阪神大震災では法令がネックになったのだろうが、「8日で10万人」と言う自衛隊史上最大の動員を実現した我が自衛隊三軍は、法令整備以上の大業を成したと言って良い。

(*6) 「一千人の削減にとどめた。」って、兵員を減らして居ろうが。装備も減らし、兵員も減らし、「国防も疎かにするな」と言いつつ、災害派遣任務はもっと増やせって、虫が良いにも程があろう。

(*7) 「国防を疎かにしない」は一体何処へ消えたんだ?

(*8) 「過剰な武器」ぃぃぃ?馬鹿も休み休み言え。

(*9) 人員減らす。装備も減らす。武器も減らす。災害救助任務だけ増やす。これが「ニ正面作戦」なものか。
 東京新聞社説氏も認めるとおり、「国防をおろそかにしてはならない。」のであり、国防を疎かにしての災害救助など、喜ぶ手合いは多かろうが、本末転倒だ。



東京新聞社説に垣間見える歪な自衛隊観



 さて、如何なものであろうか。
 
 先述した通り、胡散臭い=朝日に良く似た東京新聞が、その社説で好意的に自衛隊を取り上げていること自体が先ずは珍しい事である。またそれは、自衛隊三軍を日本の誇りと考える私のような人間にとっては一種の朗報に違いない。
 
 が、手放しに喜んでいられないのが、流石は東京新聞と言うべきか。

 何しろ冒頭の一文からして飛ばしてくれる。

1> 自衛隊は災害派遣に、どれだけ力を注いでもやり過ぎることはない。

 この冒頭文は最後の結論とも呼応しており、その意味では上手い書き出しと言えるが、主張しているところに私は全く同意できないし、当該東京新聞社説の中でも主張が分裂気味である。何しろこの断言に続くのが、自衛隊が如何に大規模に動員されており、自らも被災しつつ救援活動に当たっている事や、一方でロシア偵察機・戦闘機の領空接近に触れて、以下のように結論付ける。
 
2> 本来任務の防衛警備はおろそかにできない。難しいかじ取りが求められている。

 言うまでもなかろうが、上記1>と2>は本質的には矛盾している。上記1>は「何が何でも災害派遣優先」であり、上記2>は「難しいかじ取り」とぼやかしつつ、防衛警備が本来任務と認めている。
 
 その矛盾は東京新聞社説の最後の一文で美事に「解決」する。

3> 国防と災害派遣。二正面での活動を期待したい

 早い話が、「国防も災害派遣もどっちもやれ」である。国防が本来任務であるって言う上記2>は一体何処へ消えたんだ??
 
 どうもその根拠は、昨年漸く出された「防衛計画の大綱」にあるらしい。社説には次のような記述も見える。

4> 昨年十二月に閣議決定された「防衛計画の大綱」は、
5> 「本格的侵攻の可能性は低い」とし、
6> 戦車、大砲といった冷戦型の装備を大幅に減らす一方で、
7> 陸上自衛官の編成定数は十五万四千人と一千人の削減にとどめた。

 「とどめた。」じゃなかろうに・・・員を減らし、装備を減らし、「本格的侵攻の可能性は低い」と断定してしまっては、国防と言う本来任務を疎かにしている事は明らかではないか。「冷戦型の装備」と言うが、その冷戦型の装備なればこそ、福島第1原発に74式戦車が出動できるのであるし、出動する戦車が1974年制式採用で米国で言えばM60、ロシアで言えばT-55かT-62相当の旧式戦車なのは陸自に戦車が少ないからだ。

 さらに言うならば、東京新聞社説は今回の東日本大震災に於ける自衛隊の損害もはっきりと認識しているのである。

8> 航空自衛隊松島基地(宮城)では戦闘機を含む二十八機が水没した。

 であると言うのに、社説の結論部分には、次のような記述さえある。

9> 過剰な武器の購入費を防災に必要な装備の購入に回し、訓練時間も増やす。

 一体、我が自衛隊三軍の何処に「過剰な武器」なんて物があるというのか、私にはサッパリ見当がつかないが、東京新聞社説氏の頭の中では、レンホウ式仕分け理論よろしく殆どの自衛隊装備が「過剰な武器」に分類されているのだろう。
 先述した東京新聞社説の結論、

3> 国防と災害派遣。二正面での活動を期待したい。

が虚しく響くばかりである。

 人員は減らす。装備も減らす。災害救援任務は増やしてその訓練も増やす。必然的に国防任務の訓練は減る。それでも「国防は本来任務だから疎かにするな。」と等級新聞社説は主張している。
 
 虫が良いにも程があろうが。
 
 だがしかし、自衛隊に対し誠に勝手で虫の良い要求を出している東京新聞社説にも、誉めるべき点があることは認めよう。それ即ち、社説に自衛隊の東日本大震災救援活動を取り上げ、それもその功績を好意的に取り上げている点だ。東日本大震災発生以降に自衛隊を好意的に社説に取り上げたのは、産経と東京のみである事は、特筆大書して良いだろう。