報じられているのは、尖閣諸島沖における中国「漁船」衝突、もとい、海保庁巡視船に対する体当たり攻撃を撮影した海保庁のビデオがネット上に流出した「らしい」と言う記事。
「らしい」とつけたのは、海保庁なり政府なりが公式にこの動画を「本物の海保庁撮影ビデオ(の一部)」とはまだ認めていないからである。が、当該記事にもある通り、海上保安庁関係者の証言として「恐らく本物だ」と報じられているし、海保庁は本物と見て流出経路の調査を開始している。また、以下の記事にも国会内で30人限定に公開されたビデオとの類似点が指摘されている。
【尖閣ビデオ流出問題】民主・川内氏「国会で見た映像と同じものもある」「政府の危機管理問われる」 http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101105/crm1011050850009-n1.htm
尤も、上記記事にて民主・川内氏は、
> 「みずき」に対する衝突は「角度が違うのではないか」と指摘した。
としている。
これは、①ネット上に流出した「みずき」衝突ビデオは贋物である(*1) ②「みずき」と中国「漁船」は何度も接近しており、国会で公開されたシーンとネット上に流出したシーンは別の接近を撮影している(*2) ③「角度が違う」と言うのは民主・川内氏の勘違いである(*3)。 の何れかと思われる。
少なくとも「よなくに」との衝突動画は本物の可能性が高そうだ。
まずは己が目で、その「流出ビデオ」を確認するが宜しかろう。
特に留意すべきなのは、後者記事の以下のコメントであろう。
> 福島瑞穂社民党党首
A1>「車が道路でちょっとコツンとぶつかるような、
A2> あてて逃げるという映像だ。
A3> (挑発行為は)離れてるし、分からなかった。
A4> 反日デモがエスカレートしている状況だ。
A5> 国民に公開することは慎重であるべきだ」
> 小林興起(こうき)衆院議員(民主党)
B1>「向こうが逃げまどって、当たっちゃったということだ。
B2> 衝撃があるような当たり方じゃない。
B3> ぶつかる瞬間はカメラの位置からして見えない」
> 川上義博参院議員(民主党)
C1> 「公開はタイミングを逸している。
C2> 外交カードとして持っておくのが日本にとってベストだろう」
<注釈>
(*1) 「よなくに」との衝突動画が本物ならば、「みずき」だけ贋物と言うのは考えにくいが、逆にそこを突いて贋物をつかませるという手もある。
(*2) これが一番ありそうなケースに思われる。
(*3) これが2番目にありそうなケースだな。何しろメモ帳こそ許可されたものの、カメラも録音機も持ち込み禁止の国会内公開だったそうだから。
(*4) 何しろ、国会内で30人限定公開されたのは6分ほどのビデオであるのに対し、ビデオ全体は2時間ほどに及ぶとされている。
今回流出した動画の合計約44分の方が、国会で「限定公開」された動画よりも大分長いのだ
1.中国の反応
これらの報道で見る限り、当該衝突ビデオ=証拠物件Aを「中国漁船が海上保安庁巡視船に体当たりした証拠」と見る方が少数派で、「日本に都合の良い部分だけ編集したのは明らかだ=Youtubeで公開されている部分は中国にとって不利だ」と認めるものすら少ないようであるから、いや、心此処にあらざれば、見るとも見えず、と言う所か。
或いは中国共産党政権60年の歴史は、中国人民にダブルシンクを強制するほどに完成した、と言うべきか(*1)。
無論、日本の国会での「30人限定公開」に際しても、同じビデオを見ての国会議員諸センセイ方の反応は一様ではなく、先述の通り社民党・福島瑞穂議員やら民主党・小林興起議員みたいな例もあるから、「心が此処にない」或いは「ダブルシンクを完全に習得した」のは何も中国人民ばかりじゃぁなさそうだ。
それにしても・・・いやまあ、言論の自由なんて薬にしたくてもないような国だと思えば、哀れといえば哀れだが、中国「人民」の公言のあきメクラぶりは驚嘆に値する。中にはこう言わないと地位や生命財産が危うい人もいるのだろうけれども、それはそれで「中国の特殊性」の証左だ。
ついでだから報じられている中国「人民」の反応にいくつか突っ込んでおこう。例によって適当なところで区切って引用符「>」をつけた。
> 「日本の軍艦(原文ママ)がわが漁船をはさんで損害を与えた。
> わが領海内であり、
> 侵略と攻撃に遭遇する死地にあって、自衛のための普通の行為だ」、
それなら中国「漁船」の損傷は左右両舷に出来、海保庁巡視船の損傷は片舷ないし舳に出来そうなものだ。それ以前に、一体どの動画をどう見るとそういう結論になるんだ???
さらには、「はさんで損害を与え」ようとしている「日本の軍艦」に対し、中国「漁船」が一体どんな「自衛のための行為」を行なったんだ??
体当たり攻撃が「自衛のための行為」であるならば、その損害は自業自得だろう。「日本の軍艦が中国の漁船をはさんで損害を与えた」事にはなるまい。
> 「中国側の船は正常に操業・航行していた。
> 鬼子(日本人を指す)が航路を妨害した」
> 「漁船の進路をさえぎらなければ、ぶつからなかったんじゃないのか?」
悪いのは常に相手側か。それを言うなら、「中国漁船が前進なんかするから衝突したんだ。航路を妨害したって、止まればよいだけだろう。」とも言える。
裁判じゃ強いかもしれないが、自分で成長を止めてるんだぜ。それ以前にまず、人間になるべきではあろうが。
> 「中国庶民はみな、強烈な愛国心を持っている。
> 漁民は身をもって、国に報じた。支持しつづける」
「身をもって国に報じた」と言うのは、日本の海保庁に逮捕されて釈放されたことを言っているのか?であるならば、なんとも「強烈な」愛国心だな。中国じゃそんなんで「強烈な愛国者」になれるんだ。安いもんだね。
それとも、中国「漁船」による海保庁巡視船への体当たり攻撃の事を指しているのか?もしそうなら。「強烈な愛国心」なんて動機や「支持」は兎も角、中国「漁船」が体当たり攻撃をかけたと言う、犯行事実は認めるのだな。
前述の「漁船の進路をさえぎるほうが悪い」なんて奴らに比べれば、マシな方だ。
> 「YouTubeの動画も全部見たが、
> 衝突と領土問題はニワトリとタマゴの問題と同じであり、
> ビデオの公開が歴史問題の解決の役には立たない
典型的な議論のすり替えだな。それにこのビデオは、衝突事件の解決には役立つ。領土問題は、尖閣には存在しない。
> 「明らかに小日本が船尾を我々にぶつけてきた!」
普通の船は、後進でもかけなければそんな動きは出来ない。後進は遅い。ぶつけにくいぞ。
中国漁船にぶつけるのに、わざわざビデオ撮影しながら、そんな面倒くさい攻撃しかけようなんて考え付くのは、中国人ぐらいだ。
> 「ここはまだ消されてないのか」
おんやぁ?日本側の悪事の証拠ならば、消されないのは喜ぶべきだろう。
喜べないと言うことは、この動画が中国に不利であると判断できるだけの理性と悟性は有しているのだな。上出来、上出来。
<注釈>
(*1) もしそうなら、反政府暴動の鎮圧に躍起になる苦労はあるまいに。