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子母沢寛(しぼさわかん)作「勝海舟」は幕末三舟の筆頭にして江戸幕府大政奉還の立役者、勝麟太郎義邦、号して海舟を主人公とした歴史小説である。
幕末維新と言う時代を背景に、「勝海舟の波乱万丈の半生を描く」と言えば格好良いが・・・勝の小粋な江戸っ子振りやら、四季折々の風物詩やらが印象に残る、異色の歴史小説だ。あとは勝海舟の荒唐無稽と、それを諫める副主人公の掛け合いが実に生き生きと描かれて居る。幕末維新という動乱を背景としながら、ホームドラマじみたシーンを生き生きと描いてしまうのは、子母沢寛の並々ならぬ小説家としての技量だろう、と、素人歴史小説評論家(※1)たる私は断じてしまう。
この小説の異色な印象の一つを為すのが、海舟の父・勝小吉の小気味良い啖呵であろう。それこそ生粋ののべらんめえ調であるから、その調子の良いこと。
幕末維新と言う時代を背景に、「勝海舟の波乱万丈の半生を描く」と言えば格好良いが・・・勝の小粋な江戸っ子振りやら、四季折々の風物詩やらが印象に残る、異色の歴史小説だ。あとは勝海舟の荒唐無稽と、それを諫める副主人公の掛け合いが実に生き生きと描かれて居る。幕末維新という動乱を背景としながら、ホームドラマじみたシーンを生き生きと描いてしまうのは、子母沢寛の並々ならぬ小説家としての技量だろう、と、素人歴史小説評論家(※1)たる私は断じてしまう。
この小説の異色な印象の一つを為すのが、海舟の父・勝小吉の小気味良い啖呵であろう。それこそ生粋ののべらんめえ調であるから、その調子の良いこと。
例えば、知識ばかりで実践が伴わない頭でっかちを評して「野郎の本箱」と痛罵する。本箱と言っても今日我々が図書館などで見るようなラックや書棚ではないだろう。それこそ本を入れておく箱、イメージとしては段ボール箱ぐらいの木製であろう。本当に、本の入る箱だ。
Walking Dictionary「歩く辞書」(※2)と英語で言えば、博学を誉める言葉だが、勝小吉の言う「野郎の本箱」は、本=知識は詰まっているがそれを抜いたらタダの箱。歩きもしないから、大した役には立たないことを皮肉っている。また逆に、知識ばかり集めてただの「本箱」になることを戒めている。
ところで、インターネットや検索技術が発達し、Wikipediaの様なフリーのデータベースが存在する現在に於いて「知識」と言うのは比較的簡単に収集できる。
厖大なテキストデータをコピーペーストして表紙さえつければ、それらしい報告書なり調査結果なりは簡単に出来てしまうのが現在だ。(※3)
が、軽く一読或いはそれすらせずに検索し、収集したデータや「知識」は、果たしてどれぐらい己が血となり肉となっているだろうか。「知識が知恵に」なっているだろうか。
一読すらしていないのであれば、画像データがスキャンされた程度。イメージでさえ残るかどうか怪しく、「知恵」になぞなりようがない。
それでは人間はタダの検索ツールに成り下がる。キーワードを選び出し、検索結果をホチキス止めするだけの存在に。
子母沢寛が描く勝小吉ならば、「野郎の本箱」どころか「野郎の空箱」と、痛罵するところではなかろうか。
「江戸から東京に変わって、たった百年かそこらで、人間てぇやつは酷く馬鹿になりやぁがったね。」 と。
厖大なテキストデータをコピーペーストして表紙さえつければ、それらしい報告書なり調査結果なりは簡単に出来てしまうのが現在だ。(※3)
が、軽く一読或いはそれすらせずに検索し、収集したデータや「知識」は、果たしてどれぐらい己が血となり肉となっているだろうか。「知識が知恵に」なっているだろうか。
一読すらしていないのであれば、画像データがスキャンされた程度。イメージでさえ残るかどうか怪しく、「知恵」になぞなりようがない。
それでは人間はタダの検索ツールに成り下がる。キーワードを選び出し、検索結果をホチキス止めするだけの存在に。
子母沢寛が描く勝小吉ならば、「野郎の本箱」どころか「野郎の空箱」と、痛罵するところではなかろうか。
「江戸から東京に変わって、たった百年かそこらで、人間てぇやつは酷く馬鹿になりやぁがったね。」 と。
<注釈>
(※1) ただの歴史小説好き。読むばかりで、書いたことすらないからなぁ。
(※2) 私の知人に、「歩くジェーン年鑑」と呼ばれている人が居た。軍艦年鑑として著名なジェーンに例えられ、古今東西ハードとしての兵器の話なら大概できると言う人だった。またの名を「大先生」と呼ばれたのは、やはり博学の故である。
(※3) 検索のコツと言うのは、それなりに在るのだろうが。以前、ウエストランド・ワイバーン=ター ボプロップ単発雷撃戦闘機について調べようとしたら、どこぞのSFに「ワイバーン戦闘機」と言うのが在るらしく、その情報ばかり引っかかってきた。
つまり、私は「検索のコツが良く判っていない」事になるな。
つまり、私は「検索のコツが良く判っていない」事になるな。