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転載開始================================================================
毎日社説:イラク撤退演説 戦争の真の理由を語れ    http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100902k0000m070091000c.html
 演説上手なオバマ米大統領にしては精彩に欠けたようだ。イラクでの戦闘終結を米国民に告げる重要演説なのに、表情が重く、笑みもこわばって見える。イラク戦争の「負の遺産」が、ずっしりと大統領にのしかかっていたからだろう。
 オバマ氏はイラク戦争反対の立場を取って大統領に当選したが、この日の演説では、イラク戦争を始めたブッシュ前大統領の「米軍への支援、国への愛」などをたたえ、「戦争を支援した愛国者もいたし、反対した愛国者もいた」とバランスをとるのがやっとだった。巨費を投じてアフガニスタンとイラクで戦争を始めたことを指摘したが、厳しいブッシュ政権批判とはほど遠い。
 現政権が露骨に前・元政権を批判しないのは米国の政治的慣習である。11月の中間選挙を控え、イラク戦争を支持した保守層の反感を買うのはまずいという計算もあろう。だが、多くの犠牲者を出した戦争を振り返れば、米国の反省材料は数多い。前政権に遠慮せず、オバマ政権による厳しい総括が必要ではないか。
 そもそも何のための戦争だったのか釈然としないのだ。米国の大義名分は「大量破壊兵器」だったが、91年の湾岸戦争以降、国連はイラク査察を何度も行い、フセイン政権の抵抗を押して大統領宮殿の内部も調べている。イラクが同種の兵器を大量に保有しているはずがないという声は、安保理内でも強かった。
 戦争開始の前月(03年2月)、当時のパウエル国務長官が安保理で説明した「移動式生物兵器製造施設」は、あろうことかアルコール依存症の協力者の作り話だった。01年の同時多発テロに関してネオコン(新保守主義派)などは国際テロ組織アルカイダとイラクの「共謀」をにおわせたが、これも後に根拠なしと判明した。専門家が首をかしげる怪しい話が堂々とまかり通ったのだ。
 01年の同時多発テロで多くの国民を失った米国の強い危機感も手伝っていただろう。だが、米情報機関の誤った情報に基づいてイラク戦争を決断したというブッシュ政権の弁明は信じがたい。むしろ大量破壊兵器を口実として、とにかくフセイン政権を打倒したかったとしても、ではその理由は何か。アラブ世界には「米国の同盟国イスラエルのための戦争だった」という説が根強く、ブッシュ氏の信仰に基づく宗教的な戦争だったという見方もある。
 こんなに動機が見えにくい戦争も珍しい。米軍撤退後のイラクで治安回復と復興が順調に進むよう願いたいが、戦争自体の分析も必要だ。日本政府の検証や総括も必須とはいえ、なにより米国自身の説明が聞きたい。何のための戦争だったのか。
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 上記に転載したのは、イラクからの米軍戦闘部隊撤退開始を発表したオバマ大統領の演説を受けての毎日新聞社説
 社説タイトルにある通り、イラク戦争開戦理由に根拠がなかった事を糾弾し、「ブッシュ政権によるイスラエル支持のための戦争」或いは宗教戦争(*1)であったのではないかと疑義を呈し、真相を明らかにしろと息巻いている。
 
 イラク戦争に反省材料が無いとは言わない。正確な情報収集と情勢判断と言う点だけでも相応に反省点があるだろう。
 
 だが、毎日社説が息巻く「日本政府の検証や総括も必須」とは考えない。
 
 何故ならば、我が国はイラク戦争の支持・不支持をその「大儀=開戦理由の正当性」で判断すべきではなく、我が国の国益によって判断すべきと考えるし、その点で当時のイラク戦争支持判断は、今の時点から見ても正しいと思われるからだ。
 
 例えフセイン政権が大量破壊兵器を隠匿していなかった事がイラク戦争改選前に判明していたとしても、私はイラク戦争を支持する。実際に然るべき立場にあったとして、開戦の決断が出来たかは、正直自信がないが、開戦の決断をする理由は理解できるし、納得できる。
 その決断=イラク戦争開戦による、中東にもう一つの北朝鮮を出現させない予防戦争としての効果と、湾岸戦争でやりそこなった後始末としての効果を認めるからだ。
 
 毎日社説が全く触れていない部分であるが、フセイン政権のイラクはかつてクゥエートに侵攻して「イラクの領土だ」と宣言し、多国籍軍によるクゥエート解放戦争=湾岸戦争を引き起こした張本人である。それ以前には豊富な石油資源にも拘らず原子力発電所を建設(*2)しようとしてイスラエルの空爆でその建設中の原発を破壊され、原発建設( ≒核兵器開発)を断念した国だ。それらの意味するところは、「侵略者」だの「民主主義の敵」だののレッテルを全く別にしても、中東における一大不安定要因であろう。
 
 なるほどイラク戦争後のフセイン亡き後のイラクの治安は芳しくないし、米軍撤退後にどうなるかも不安ではある。
 テロリストの巣窟になる可能性だって、否定は出来ない。
 が、「強力な政権がイラクを支配して、核兵器やその他大量破壊兵器を開発・隠匿する」可能性は当面の間避けられた。イラクは未だ不安定要因かも知れないが、かつてに比べれば遥かに小さな不安定要因だ。つまりイラク戦争は、イラクを不安定要因として小さくする事には成功した訳だ。
 
 開戦理由の正当性に疑義があり、その点を追及し反省すべきであるとする毎日の社説は、一見正しい、正論だ。
 
 だが、正当な開戦理由があれば開戦するかというと、世界最強の軍事大国にして経済大国である米国だってそうはいかない。今の戦争は、ある意味昔以上に大事(おおごと)だ。何らかの利益が見込めない限り、小さな戦争でも起こせるものではない。

 逆に大きな利益が見込めれば、大儀・開戦理由なんざ後からつけて開戦してしまうのが戦争だ。かつてイラクがその利益を見込んでクゥエートを占領したのだし、イランに侵攻したのだ。無論、「利益の見込み」であるから、見込み違いはありうるし、実際イラクはイランでもクゥエートでもろくに利益を上げられなかった。
 
 なるほど我が国は、「憲法9条」により、国際紛争を軍事力で解決する事を放棄している。
 だが、我が国以外のほとんどの国は、国際紛争解決手段の一つとして、軍事力を選択肢としているのであり、それは選択される事がある。イラク戦争はその一例に過ぎないし、上記の通りアメリカの軍事的選択は一定の成果を収めている。
 
 一方で、今の北朝鮮や、核実験実施以前の北朝鮮に対し、イラク・フセイン政権に対するのと同様の軍事行動を起せなかった、起そうとしていない事に対して懸念と不安を、私は覚えるものである。当の北朝鮮が、散々ぱら軍事恫喝、戦争宣言を繰り返しているのだからなおさらだ。其処には、中国による北朝鮮支援や、北朝鮮が中国とロシアの間に位置する地理的条件など、種々の困難がある事は、確かだろうが。
 他方で、「日本のイラク戦争支持」が「日本の対北朝鮮武力攻撃支持」を示唆し、北朝鮮に対する圧力たり得たろうとは考えるから、日本は「イラク戦争支持」により、当のアメリカ以上の利益を得ていたと言える。
 
 日本が「戦争を放棄する」と宣言する事は、物理的には可能だろう。実際憲法9条はそれを(一応)なしている。
 だが、戦争が日本を放棄するとは限らない。(*3)
 
 我が国は、我が国益となる戦争ならば、支持すべきである。
 
 イラク戦争支持は、当時の思惑からしても、現時点の評価からしても、我が国益に適っている
 
<注釈>
 
(*1) ブッシュ政権=米国=キリスト教 対 フセイン政権=イラク=回教 として、宗教戦争とみなす事で「イラク戦争の不当性」を強調しているのだろうが・・・墳飯物と言うべきだ。
 先ずアメリカはキリスト教徒が支配的とは言え信仰の自由を掲げる民主主義国家。だからこそ911テロ事件現場の近くに回教のモスクができる事をオバマ大統領自身が支持してしまえるのだ。
 次にフセイン政権下のイラクには思想の自由すらないが、フセイン率いたバース党は統一アラブを至上目標とした世俗主義。イスラム原理主義とは、互いに利用しようとする事はあっても根源的に相容れない。
 そのブッシュ政権米国とフセイン政権イラクの戦争が、宗教戦争になるわけがない。
 
(*2) 当然、目指していたのは核兵器開発だろうと言うのが「衆目の一致するところ」だ。
 
(*3) これは、奥宮正武氏の指摘。大分前に読んだフレーズだ。
 何しろ、退役海軍中佐にして退役空将である、奥宮氏のフレーズだからね。