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 報じられているのは、菅首相と陸海空統4幕僚長との対談( 及びそれに先立つ北沢防衛相との「雑談」)。
 
 同じ菅首相と陸海空統4幕僚長との対談は、産経新聞、毎日新聞、読売新聞でも報じられている。首相と自衛隊制服組トップの対談だから、ニュースパリュートしては十分だろう。理の当然と言うか、らしいと言うか、産経の報道が最も総合的で詳細であり、朝日の報道が最も短く簡素だ。読売が朝日に準じているのも、らしいと言えばらしいか。
 
菅首相知らなかった?「大臣は自衛官じゃないんですよ」2010年8月19日20時36分   http://www.asahi.com/politics/update/0819/TKY201008190397.html
首相、4幕僚長と初面談 「弱点」安保で右往左往 石破元防衛相の指摘に過敏反応 安保懇の報告書は宙づり   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100819/plc1008192247017-n1.htm
菅首相:自衛隊4幕僚長と会談 民主政権で初めて http://mainichi.jp/select/today/news/20100820k0000m010045000c.html
「防衛大臣は自衛官ではないんですね」と首相  http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100819-OYT1T00997.htm?ref=rssad
 
 朝日・産経・毎日・読売共に取り上げているのが、菅首相の問題発言。以下に各紙の該当箇所を引用しよう。例によって引用符「>」をつけ、朝日なら「A#>」、産経なら「S#>」と、各紙の頭文字を頭につけて行番号「#」を振った。
A1> 首相官邸で北沢俊美防衛相に
A2> 「ちょっと昨日予習をしたら、
A3> (防衛)大臣は自衛官じゃないんですよ」と述べた。
A4> 憲法66条は「大臣は文民でなければならない」と規定しており、
A5> これを知らなかったかのような発言は、
A6> シビリアンコントロール(文民統制)への理解の浅さを露呈したと批判されそうだ。
A6> 意見交換会のあいさつでは
A7> 「改めて法律を調べてみたら
A8> 『総理大臣は、自衛隊の最高の指揮監督権を有する』と規定されており、
A9> そういう自覚を持って、皆さん方のご意見を拝聴し、
A10> 役目を担っていきたい」と語った。
A11> これまで、そうした自覚がなかったと受け取られかねない発言だ。

S1> 「改めて法律を調べたら自衛隊に対する最高の指揮監督権を有していた…」
S2>  首相は4幕僚長との会合の冒頭にこう発言した。
S3>  折木良一統合幕僚長は「冗談だと思う」とフォローしたが、
S4>  首相は「予習したら防衛相は自衛官ではないんだそうですね」とも述べており、
S5> 最高指揮官としての自覚欠如は否めない。
 
M1> ただ、首相が会談の冒頭で
M2> 「昨日予習したら防衛相は自衛官ではないそうだ」
M3> 「改めて法律を調べたら首相は自衛隊の最高の指揮監督権を有すると規定されている」
M4> と認識不足ともとられかねない発言をしたため、
M5> 会談終了後に折木幕僚長が
M6> 「冗談で、指揮官の立場は十分自覚されている」とフォローする一幕もあった。
 
Y1>  ただ、首相は19日の会談冒頭、同席した北沢防衛相に
Y2> 「昨日予習したら、大臣は自衛官ではないんですね」と発言。
Y3> あいさつでは
Y4> 「改めて調べてみたら、
Y5> 首相は自衛隊の最高の指揮監督権を有している」などと述べた。
Y6>  政府内からは
Y7> 「首相は文民統制を理解していないのではないか」との声も出た。
Y8> 憲法は66条で「国務大臣は文民でなければならない」としている。
 
 これまた理の当然と言うか、らしいと言うか、菅首相に最大限好意的に解釈して見せるのが朝日・毎日・読売であり、「最高指揮官としての自覚欠如」と噛み付いて居るのは産経のみである。
 
 が・・・・
 チョイと待てや、オイ、コラ、菅(*1)!
 
 今の北沢防衛相は、手前ェが副首相だった頃から防衛相の閣僚仲間であろうが!!第一、押しも押されも落選もしていない参議院議員である。A4>やY8>のように憲法66条を持ち出さずとも、現職の自衛官であろう筈がないではないか。

 いやそうなればこそ、この、「昨日予習したら、(防衛)大臣は自衛官ではないんですね」発言はまだ冗談だとか、軽口だとか、見なしえない事もない。読売は、Y7>の通りに、こちらの発言だけ問題視しているようだが。
 
 私が問題視、否、弩肝を抜かれたのは、もう片方の問題発言、即ち「改めて調べてみたら、首相は自衛隊の最高の指揮監督権を有している」の方だ。毎日はこちらは特に問題視していないようだが、4紙共に共に折木統幕長(*2)のフォロー「冗談だと思う。」を報じているように、フォローしなければならないほど重大なのはこちらの方だ。なにしろ、政権交代以上1年以上経っており、その当初から菅(*3)は副首相を務め、此処数ヶ月は首相を務ている。即ち陸海空三軍の最高指揮官に就任してから数ヶ月間、その最高指揮官であることを「改めて調べる」まで自覚・認識していなかったと言うのだ。幾ら日本の首相だから、宣戦布告の権限も核ミサイル発射許可権もないとは言え、平和ボケにも程があろう

 ならば菅首相はそれまで、自衛隊三軍の最高指揮官は誰だと思っていたのか?
 天皇陛下か???
 大日本帝国憲法下では正にその通り、ではあるが・・・
 
> 「冗談だと思う」
 折木統幕長がそう言いたくなる、そう思いたくなる気持ちは良くわかる。「歴戦の古参軍曹の胸に恐怖をぶち込む事ができるのは、無能な上官の下で戦っていると言う事実のみ。」と言うのはロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士 Starship Troopers」に在るところだ。統幕長にしてみれば、最高指揮官である首相にこんな事を言われたのでは、居たたまれまい。
 
 だが、私には、どうにもこうにもこの菅首相問題発言を「冗談だ」として片付けられそうにない
 
 第一に、それは冗談と考えた場合全く面白くなく、笑えない。冗談として言ったのならば、菅首相のユーモアセンスは、相当悪いと断じざるを得ない。(*4)
 
 第二に、冗談を言うべき場面とも考え難い。菅首相と4幕僚はこの日初対面であっただろうし、初対面の相手にいきなり冗談をぶつけられる日本人は少ない。その意味で、菅直人は、あくまでも日本人のように(*5)思える。
 
 第三に、これが一番致命的なのだが、冗談に聞こえない。
 仮に菅首相が日本国憲法にも自衛隊法にも精通(*6)していて、とうの昔に自分自身が三自衛隊の最高指揮官に就任している事を熟知していて、今回の発言は全くの冗談であったとしても、さらに今後、今回の発言を「冗談だった」として撤回なり修正なりを公表したとしても、今更信じられない。

 それ即ち、今回の菅首相問題発言に、私は弩肝を抜かれながらも、一方で「菅直人なら、そんな事態は十分にありうる。何しろ、鳩山元首相の副首相だ。」と納得・得心できてしまう部分があるからだ。「やっぱりねぇ」と思わせてしまうものが。「それで統帥権をいとも簡単に手放せるのだ。」と得心させるものが。
 
 Loopy。かつて鳩山前首相はそう評された。「現状になじめない、浮いている」と言う意味だと、評した者の解説も後から報じられ。なるほど上手い事言うなと、感心とは言わないまでも、納得させられたものだ。
 
 菅直人がLoopy、或いはもっと酷い評価を受ける日も、遠くはあるまい。

<注釈>
(*1) 最早、呼び捨て。
(*2) 読売は、何故か( 大体想像は付くが。)統幕長の肩書きを報じない。
(*3) やはり呼び捨て。呼び捨てたい。
(*4) それでも、正気かつ本気で言ったのよりは、遥かにマシではあるが。
(*5) 表面上の話し、だが。
(*6) ってほどのものは必要ない。先ずは常識程度知っていれば十分な、筈だが。