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 「夜間飛行」と言えば、「星の王子様」で有名なパイロット兼作家サン・テグジュペリの小説。或いは香水の名前の方が有名だろうか。香水の名なんかなってしまうぐらいだから、一寸ロマンチックな響きを持つ言葉であるし「星空へのフライト」なんて言えば乗客は喜ぶだろうが、パイロットからすると視界は効かない地面は見えない、下手すると空間識失調で上下天地の感覚さえ怪しくなる「異常事態」が夜間飛行だ。
 航法計器が発達した今日に於いても、夜間飛行のような「有視界ではない飛行」は尋常ならざる飛行である。レーダーが無いもしくは使えないような頃、例えば大東亜戦争(太平洋戦争)の頃には「夜間飛行」「夜間離着陸」は技能抜群の者しかまともに出来なかった。

 とは言え、その夜間飛行の困難さは、「夜は暗くて見えない」事に起因するのであって、飛行に必要な揚力を出す主翼、推進力を出すエンジン、コントロールする舵などの機能に昼夜の区別は無いのであり、「見えさえすれば夜間飛行そのものには何の問題もない。」のがライト・フライヤー以来の航空機であった。
 
 が、報じられているのは世界初のソーラー飛行機。以前にも記事にしたが、エアバスA340と同等な全幅を持つ巨大な主翼上面に太陽電池を敷き詰めて、その発生電力で4基のモーターを駆動する飛行機だから、太陽のない夜間は電力が供給されない。其処は考えていて、蓄電池に昼の間に充電するのだそうだが、ソーラー飛行機にとっての夜間飛行は、コンセント抜いた状態のノートPC張りにバッテリー頼みであり。「暗くて見えない」に加えて「バッテリー切れで墜落する恐れさえある」状態である。
 
 とは言え、夜間は飛べませんじゃぁ、実用機とはいえない。この人類初のソーラー飛行機は夜が苦手とは言え、それは実用化のためには乗り越えるべき「コンプレックス」だ。
 
 で、報じられているのはそのソーラー飛行機「ソーラー・インパルス」号の夜間飛行実験計画。
 
> 夏の快晴を利用し、パイエルヌ(Payerne)飛行場から飛び立つという。
> 離陸後、最高高度8500メートルまで上昇。
> 日中の飛行中にソーラーパネルで集めた太陽エネルギーをバッテリーに蓄積して夜通し飛行した後、
> 7月2日の明け方に着陸する予定。
 
 夜が明けて、晴れていればソーラー飛行機は太陽光で充電を再開し、飛行を連続できる筈なのだから、今回の夜間飛行試験、もとい、徹夜夜間飛行試験に成功すれば、「太陽エネルギーでの世界一周を目指す」本機にとって、その目標達成へ向けて大きな一歩前進となりそうだ。
 
 尤も・・・
> 離陸時のスピードは時速35キロ程度で、巡航速度はそのほぼ2倍となる。
と報じられているから、本機の巡航速度は時速70km程度。
 世界一周は凡そ2万kmだから、世界一周は凡そ300時間≒12日間ほどもかかる勘定だ。今のところ一人乗りである「ソーラー・インパルス」号が目標の世界一周飛行を達成するには、
 (A) パイロットが眠っている間も安全に飛行できる完全自動操縦
 或いは
 (B) 交替パイロットを乗せる復座型への改造
が必要であり、かつ
 (C) 軽量かつコンパクトな食料飲料
 或いは
 (D) 空中給油ならぬ空中給水・空中給食(空中補給)
が必要であろう。
 
 とは言え、80日間世界一周ならぬ12日間世界一周のこと。(A)と(C)の組合せならばさほど困難ではなさそうだ。
 商業飛行、実用飛行への道はまだまだ遠いが、記録飛行への道ならば、比較的近いだろう。
 
 飛べ!ソーラー・インパルス号!!