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(173) 平成22年05月04日(火) とうとう普天間基地移設先の政府案さえ公式に纏まらないまま( 「本案がないのに、腹案があるとはどういうことか。」と言う虚しい突っ込みはさて置くとしよう。)、鳩山首相の沖縄訪問が敢行され、仲井真沖縄県知事、高嶺名護市長らとの会談も行われた。
 幾つか特記すべき発言・発表があったのだが、その最右翼は仲井真沖縄県知事との「トップ会談」に於ける「普天間移設先の沖縄県内容認」であろう。報じられているところでは、以下の発言であったと言う。
 
1> 「沖縄県外(移設)という話もなかったわけではないが、
2> 日米同盟や抑止力の観点からすべてを県外にというのは難しい。
3> 沖縄に負担をお願いしなければならないという思いで来た。
4> すべてをパッケージとして解決するのが大事だ」
 
 その後の報道では、この発言で「鳩山首相は沖縄県民の怒りに火に油を注いだ。」などと報じられている。「火に油」と評されるのも無理はないと私にも思われる。何しろ上記1>の通りである。「普天間基地の県外移設」は「なかった訳ではない」も何も、後述の報道で鳩山首相自身が認めている通り( つまり、まだ覚えている通り)、鳩山首相自身が民主党党首時代より数限りなく口にしていた台詞だ。
 即ち「火に油を注いだ」どころか、そもそも火をつけたのは他の誰でもない、鳩山首相自身が認めている通り、鳩山首相ご自身なのだ。
 それでも、その自身の責任を認めつつ( 「その責任を取るか」と言うと非常に疑問、どころか先ず取るまいと確信できるが。12億円の「子供手当て」も未払いの税金払えば「不起訴相当」であるし、全ておしまいと( 都合よく)思っているような人だ。)、「県内移設容認」を打ち出したことは、政権与党として「現実路線への転換」と評価できないこともない。
 但し、以下に報じられるとおり、沖縄県議会議長との会談での発言からは、鳩山首相の考える普天間基地移設先は未だ「沖縄県外移設との併用」であって、日本の安全保障上も、米国としても、受け入れ難い案であるようだ。
 
> 首相は沖縄県議会の高嶺善伸議長と会談。具体的な移設案について
5> 「沖縄の皆さん、徳之島の皆さんにご協力をお願いしたい」とし、
> 徳之島への移転を伴うとの見解を示した上で、
> 全面的な県外移設が難しい理由としては
6> 「(海兵隊の)陸上部隊とヘリ部隊の共同訓練を行う上で厳しさがある」
 
 端的に言って、この論理は妙である。と言うのは、上記6>の通り「陸上部隊とヘリ部隊の共同訓練」のためならば、一括もしくは近傍移設しか出来ない筈である。海兵隊の一部なりとも沖縄に残す以上、他のどの一部分であれ沖縄以外には行き様がない。徳之島は「最も沖縄に近い県外移設先候補」であろうが、それでも200kmもあるのである。

 更にこの日報じられた次の鳩山首相発言は、ある意味「驚くべき」であり、且つある意味「理の当然」である。
 
7> 「昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。
8> 学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」>と記者団に述べた。
 
 先ず「驚くべき」なのは、沖縄の米海兵隊を抑止力として評価しないまま昨年夏の衆院選挙に勝利し、日本国首相即ち日本の安全保障の最高責任者にして自衛隊三軍の最高指揮官の座に付いてしまったと言う、無知無能不勉強無理解無定見無見識の告白である。「兵は凶事」などと言う孫子の引用は「理系だから知らない」とは言いえても、日本の首相としては日本の安全保障に対する責任を果たせるだけの知識と知性が求められるのは当然であり、それもないまま「政権交代」を実現してしまったのならばなおの事、首相就任以降の猛省猛勉強が不可欠であろう。たとえ連立する政党の党首が「憲法9条が最大の抑止力」などと堂々と公言できてしまう安全保障音痴のお花畑であったとしても、だ。
 日本の首相は、当ブログにコメント下さった「通りすがり」さんのような無知・不見識では勤まる筈がないのである。
 
 「理の当然」と言うのは、本来日本の安全保障、日本の国益と言う観点が上位にあるべき米海兵隊の駐留地=普天間基地移設問題を、「沖縄県民の思い」を出発点とし、「友愛外交」などと言うキャッチフレーズ宣伝文句以上のものにすべきで無い「外交方針」を掲げて検討し・議論してきた鳩山首相及び民主党の実績と、上記のような抑止力と言う国の大事に対する根本的認識の欠如の見事なまでの符合だ。
 
 何れにせよ、首相が何度も公言してきた「普天間基地の少なくとも県外移設」と言う社民党張りの「公約( 現在の鳩山首相の主張では「民主党党首としての私見」)」は全く何も考えず、殆ど何も知らずに、唯「思い」だけで口走ってきた「口約」であったと、鳩山首相自らが認めたと言う事だ。これが上記(172)で言うところの「ダメージコントロール」であり「努力している姿勢を見せた」と言うことなのだろうか。
 「民主党は、社民党よりは現実的であるところを見せた。」とは言えるだろうが、その社民党とつるんで連立政権をなし、あまつさえ肝心の普天間基地移設先を「連立三党の合意で決める」とすでに決めてしまった後では、「ダメージコントロール」としての効果は半減以下だろう。
 
> 昨年の衆院選で沖縄県外、国外移設を主張したことについて
9> 「自身の発言に重みを感じている」

とも報じられているが・・・鳩山首相の言う「重み」がどの程度のものかは既に多くの事例が実証している。況してや、「昨日言っていた事と今日言っている事が、何の説明も弁解もなく180度ひっくり返っている」実績が多々ある鳩山首相の発言の「重み」である。いくら鳩山首相自身が「感じた」ところで鴻毛よりも軽いことは、疑いようがない。
 或いは、明日には忘れてしまうか、だ。
【首相訪沖】首相が県内移設の意向示す 沖縄県で仲井真知事らと会談  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100504/plc1005041325015-n1.htm
【首相訪沖】鳩山・仲井真会談詳報   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100504/plc1005041417016-n1.htm
【首相訪沖】首相「海兵隊が抑止力と思わなかった」 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100504/plc1005041845021-n1.htm
抑止力論にすがる鳩山首相=「県外移設」公約ではない    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100504-00000081-jij-pol

(174) 平成22年05月06日(木) 以前から不思議でならないのは、鳩山首相の自信である。厚顔無恥、あるいは「いけ図々しい」と言っても良い。

 「我が敵」小沢一郎の図々しさはまだわかる。彼には相応の実績もある。だが、鳩山由紀夫の実績と言えば、大の男が12億円の小遣いを母親から貰った事に「気づかなかった」と主張し、脱税分の税金(罰金も含む)を即金で払ってしまえる大金持ちと言うだけである。学者としてなにやら論文を出したとも聞くが、鈴木宗男の「絶賛」も私には全く絶賛に思えず、むしろ強烈な皮肉に聞こえる始末。首相就任以来の実績と来たら、それはもう酷いもので、良い事・やるべき事はやらないかやめるか延期するしかせず、悪い事・やってはいけない事は即座に実施か実施準備中と言う体。「実施した良い事」と言うと「事業仕分け」が辛うじて該当するぐらい。それも効果は期待より遥かに小さく、全然財源になっていない。
 それでも、鳩山首相の自信は揺るがないらしい。普天間基地移設問題の県内移設容認及び「最低でも県外」を「鳩山民主党党首の私見であって民主党の公約ではない」と公言した事について尋ねられての鳩山首相の回答。
 
>「最低でも県外」としていた自身の発言について
1> 「努力をしたいという思いで今日まで行動してきた。
2> 場当たりな発言は一切していない」と反論した。
と、報じられているが、私にはどうにもこの「反論」が反論と思われないのである。
 
 「(最低でも県外と言う目標に対し)努力をしたいという思いは変わらないのだから場当たりではない。」と言う主張なのだろうか。即ち「努力をしたいという思い」があるのだから、実績どころか努力さえなくても構わないと言う主張。そう解釈しないと「反論」にならない。本当に、心底から、「願望のみ。策なし。あたかも核廃絶の如し。」であったと主張している・・・らしい。重要なのは「努力をしたいという思い」であって、それを実現するための策や努力は、揺れ動こうがなかろうか構わないとの主張である。何しろ上記2>の通り「場当たりな発言は一切していない」と公言しているのだから、ほかに解釈のしようがない。

 更に報道は述べる。
3> 「『沖縄の負担軽減のための米軍再編見直しを行いたい』というのが公約だ」と述べ、
4> 飛行場の県内移設は公約違反ではないとの考えを重ねて強調した。
 上記3>はある意味正しい発言である。先の衆院選挙で民主党が掲げたマニュフェストには、確かにそこまでしか書いていない。成文化されていない。
 成文化されているのは其処までなのに、沖縄に駐留する米海兵隊の抑止力について考える事も学ぶこともなく、「普天間基地は少なくとも県外移設」と口約束をばら撒いたのは、他ならぬ鳩山首相である。
 ところで、
 「普天間基地移設問題の5月決着」は、公約ですらない。
 「昨年末決着」「3月末までに普天間基地移設先の政府案」と同様の運命をたどるであろう事は、殆ど自明ではなかろうか。
普天間問題で首相 「最低でも県外」は「努力したいという思い」  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100506/plc1005061040000-n1.htm
 
 
おまけ: タイトルにしたのは、刑事コロンボ「ハッサン・サラーの反逆」から、駐米スワリ大使ハッサン・サラー氏の台詞。なかなかの名台詞だが、サラー氏、この台詞を吐くのは連続殺人実施中だから、格調高き名台詞とは言い難いな。