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(2.)現行日米合意案が「くすぶる」のは当たり前である。
 一部報道によれば、現政権内に現行日米合意案=辺野古海上案が浮上しているという。ワシントンポストなど、「岡田外相が基本的に同意し、具体案が週明けに発表される。」とまで報じている。
 
普天間、「岡田外相が現行案大筋受け入れ」 米紙報道  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100424/plc1004241341009-n1.htm
 
 これに対して鳩山由紀夫も、岡田外相も否定する発言を公開しているが、他方で政府内に現行日米合意案=辺野古海上案の修正案を検討する動きもあると報じられている。
 
辺野古埋め立て、首相が全面否定 政府はくい打ち方式の浅瀬案検討 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100424/plc1004242324016-n1.htm
 
 不思議といえば不思議な話なのである。現行日米合意案は構想から提案となり、両国政府が同意して環境アセスメントまで済み、着工直前までこぎつけるのに14年かかかった。かかった期間の長さや「沖縄県民の思いを何処まで受け止めているか」なんてところには議論突っ込みの余地はあるにしても、この間に「ひたすら辺野古沖海上案」に向けてしゃにむに突き進んだ訳ではなく、辺野古陸上、勝連沖、など他の案をある程度検討済みであったことは一連の報道でも明らかになっている。

 昨年夏の「政権交代」で政権を担った与党3党から出てきた普天間基地移設先案で、以前検討されていないのは、社民党の「サイパンだ、グアムだ、テニアンだ。兎に角国外だ。」と言う「憲法9条こそ最大の抑止力」論並の暴論・空想・妄想ぐらいのものである。
 一方で少なくとも政権交代当初は「現行日米合意案=辺野古海上案決定のプロセスを検証する」と抜かしていたはずの現政権から出て来るのが、一度は没になったはずの「普天間基地移設先案」の組合せであっては、組み合わせたり前後させたりしている分だけでも現行日米合意案=辺野古洋上移設案に見劣りするのは当たり前である。
 
 他の条件が同じであってさえそうなのである。それ以上に、報じられているところでは日本側から出ている「提案」には普天間基地移設完了の時期が明記されていないと言う。現行日米合意案=2014年までに移設には全く及ばない案ばかりなので米側に伝達できないと言う事情があるものと推定されるが、納期も書かれていないような提案書を検討するような者が居る訳が無い。
 
徳之島「構想」より緻密な提案を…米国務次官補  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100423-00000700-yom-pol
 
 現行日米合意案が「くすぶる」と毎日新聞は報じている。
 
 私に言わせれば、現行日米合意案の火は、一度として消された訳ではない。それは、米側の言う「最も合理的な唯一実行可能な案」として、厳然として存在し、燃え続けているのに、現政権が、鳩山由紀夫が、与党3党がその火を見ようとせず目を背け。「沖縄県民の思い」だの「綺麗な海」だの、愚にも付かない綺麗事を呟いているのである。
 
(3.)Leader の意味
 
 さて、お気づきだろうか。今回の記事では私は日本国首相のことをその肩書きもつけずに「鳩山由紀夫」とフルネームながら呼び捨てにしている。
 理由がある。一つには本記事では先の衆院選以前の選挙期間中、まだ鳩山由紀夫が首相に就任する以前の唯の民主党党首であった時代まで扱っているから。
 
 もう一つには、鳩山由紀夫が日本国首相と呼ぶに全く値しないと断じたことを表明するためである。無論政権交代当初から、私は上記の通り断じていた訳だが、今回は形にしてみたまでだ。
 
 日本国首相は日本のリーダーであるはずだ。英語でLeaderと言うと、単に「指導者」ばかりではない。Leadするとは、「指導する」「先導する」の他に、「指揮する」と言う意味が厳然としてある。
 
 それ故に、英語のLeaderは時として「隊長」とか「司令官」「指揮官」と訳される。Wing Leaderといえば「編隊長」と訳すのが普通だろうし、 Panzer Leaderは「戦車隊指揮官」或いは「戦車隊長」か「戦車長(※1)」  Squad Leaderは(※2)「分隊長」が適訳だろう。
 
 そうでなくても日本国首相はその職責上、自衛隊三軍の最高指揮官なのである。
 
 そして、リーダー、指揮官の最も重要な仕事は、決断、決心、決定する事である。
 特に指揮官の場合は、即断即決が要求される。「兵は拙速」と諺にもある通り、巧遅に陥るよりは先ず決める事が重視される。
 
 であるというのに鳩山由紀夫は、前述の通り首相就任以来、「遅らせる・延期する」と言う決定以外、普天間基地移設問題に付いては何一つ決定していないのである。
 
 リーダーがこれでは、普天間基地移設問題が、解決に向けて前進などしよう筈が無い。

<注釈>
(※1) 前2者なら複数の戦車、最後者は戦車1両を指揮する指揮官だろうな。
(※2) 「戦闘指揮官」と訳したくなるのをグッと堪えて。
 
(4.)鳩山由紀夫は日本的リーダーでもLeaderでもない。唯の鳩である。
 
 日本型組織の場合、トップは必ずしも有能なリーダーである必要は無いと言う説もある。「日本型リーダー」とも呼ばれる指導者論で、理論や行動よりも、人徳が重視されるのだという。
 
 典型的な例は、日露戦争の乃木大将か大山巌元帥であるだろう。どちらも人格者・人徳者として知られ、それ故に参謀などの絶大な支援を受けられた。乃木大将については旅順攻略戦の大損害があり、司馬遼太郎の酷評もあって毀誉は相半ばするところかも知れないが、大山巌が日露戦争時の遠征軍トップとして我が陸軍の連戦連勝( 実質から言うと、連戦辛勝だろうが・・・講和条約にこぎつけたんだから、最終的には勝ちだろう。)を支えた事には、先ず異論は出ないだろう。
 大山巌の統率方は、先ず細かいことを言わない。部下である参謀達の挙げてくる案を適宜決済するばかりだが、その決済にはキッチリ責任を取る。明治の軍人で薩摩武士である。腹切るぐらいは朝飯前なのは、ある程度は「時代」なんだだろうが、21世紀に生を受けている私でも、感銘を受ける。
 あるとき、どの会戦だか忘れたが、ロシア軍が予想外の大攻勢に出て来た。神算鬼謀で知られる児玉源太郎参謀長さえ途方にくれた正にその時、「日本型リーダー」大山巌が登場する。
 
 「朝から大分、大砲(おおづつ)が鳴っちょりもすが、
  今日はどこぞで、戦(ゆっさ)があるんでごわすか。」
 
 この一言で児玉源太郎はじめ参謀達は平常心を取り戻し、対策を出せるようになったという。一種の「伝説」ではあろうが、日本型リーダなるものの理想像を示すものだろう。即ち、有能や優秀と言うのは参謀に求められる資質であり、日本型リーダーは有徳で腹が座っている事が求められる。そのため人望が厚い事、責任感が絶大である事が必要である。
 諸外国に余り見られない型の統率法であり、その意味では極めて日本的な、ユニークな指導者像だろう。
 明治の御世ならばともかく、現代では稀有な存在かも知れない。
 
 それ以上に、鳩山由紀夫では10回生まれ変ってもなれそうに無いのが、正にこの「日本型リーダー」である。職を賭したり賭さなかったり、そのくせ西郷隆盛(※1)を引用してしまったり、「命がけ」と評されたりしても、人望も薄ければ、覚悟も度胸も見られない。
 ああ、かつてマスコミ人気だけはあったな。今では見る影もないようだが。マスコミ人気なんてのはそんなものだ。
 
 それでも真のリーダー、真の「日本型リーダー」であるならば、マスコミ人気も、支持率の低下も、気にせずに済むかも知れない。
 
 鳩山由紀夫はその何れでもない。
 否、それ以前に、日本国首相の器ではない。
 
 器で無い首相は確かに以前に数多く居る。が、日米関係をかくも短期間にかくも悪化させた首相を、私は知らない。
 日本の外交関係は日米関係ばかりではないが、安保条約を結んでいるのは日米間だけであり、日中関係や日朝関係なぞより遥かに、致命的に、重大なのは明らかである。
 そういう認識を鳩山由紀夫が持っているかどうかさえ怪しい。一応、口にはしているが。
 
 ところで、国民よ。
 昨年夏の衆院選挙で民主党を大勝させるという事は、この鳩山由紀夫を日本国首相にする事を承認したことになるのだが、当然それは承知で投票されたんでしょうな。
 
 鳩山夫人が気違いだと言う事は、政権交代前は報じられていなかったかも知れない。が、その安全保障政策がトテモ政権与党のもので無い事も、逆立ちしたって鳩山由紀夫が日本型リーダーなんて大物で無い事も、見るべきところさえ見ていれば、自明だったはずだぞ。

<注釈>
 
(※1) 大山巌のいとこに当たる。大山は、隆盛の弟・西郷従道には叶わなかったそうだが、その陸海軍大臣経験者・従道が「太陽の前の月」にされてしまうのが西郷隆盛であるそうだ。
 どれだけ大人物なんだ。西郷隆盛。
 「人間以上」ってSFがあったな・・・読んでないけど。