2.鳩山首相の「決断」を予想する―笑う者は誰か―

 先述の通り、米側としては普天間基地を維持しても一向に構わないのであるから、「現行日米合意に基づく普天間基地の辺野古移設の履行」を求め続け、それがならなければ今の普天間基地に「居座る」のみである。これに対し日本側、鳩山首相の選択肢は一体どれぐらいあるだろうか。
 
 一つには、かねてからの私の主張であり、自公政権時代に決し、且つ米側の「主張(*1)」通りに「現行日米合意に従い、普天間基地の辺野古移転を強行する。」である。
 そう、最早「強行」しないことにはこの選択肢は取れない。社民党の連立政権離脱は覚悟しなければならないし、今回名護市長選結果を受けて、新名護市長たる稲峰氏を、説得なり黙殺なりしない事にはならないから、この方針は「強行」となる。
 言うまでも無いが、この方針が「強行」になってしまったのは、一重に民主党のバラ色選挙「公約」と、その後の対応に対する全くの無策と、沖縄基地問題と日米同盟関係に対する非常識なほどの甘さによるものであり、一重に現民主党―社民党―国民新党連立政権、なかんずくくその中心である民主党と、民主党党首にして日本国首相・鳩山由紀夫の責任であり、それを陰で操る小沢一郎のせいにする事ぐらいはできても、前自公政権や、「恵まれた家庭」や、お母ちゃんの性にはできないし、口が裂けても「私は一切知らなかった」とは言えない責任である。
 
 だが、この選択を鳩山首相が取れるとは、到底信じられない。前原沖縄・北方相は米側に対し、「5月までに代替案が纏まらなければ、社民党の連立政権離脱覚悟で現行日米合意案を取る。」と説明したが(「連立解消も」と米に説明=代案なければ現行計画-普天間移設で前原沖縄相http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100101-00000016-jij-pol)、「閣内不統一」は鳩山政権のキャッチフレーズみたいなものだ。
 社民党を昨年12月時点で切れない、切れないどころがその合意が無ければ普天間基地の移設先さえ決まらないと言うことにして仕舞った鳩山首相が、5月時点で社民党を切れるわけがない。切れるとしたら今年8月の参院選挙で「大勝」して参院でも過半数を占め、最早連立を組む必要がなくなったときだけであろう。それはそれで、私にとっては大いなる悪夢ではあるが。
 或いは前原沖縄・北方相は、鳩山首相が5月時点では既に首相ではないと判断してのことだろうか。それはありうることであるし、私としては大いに歓迎するところであるが、民主党の誰が党首になったとて、次の参院選挙前に社民党を切る決断をする事は難しそうだ。
 それ以上に難しそうなのが、今回当選した新・名護市長である稲峰氏の説得もしくは黙殺であり、日米現行合意による決着と言う「元の木阿弥」でありながら「沖縄県民の思いを重く受け止める」ことであろう。何しろ、その木阿弥を散々パラ引っ掻き回して、「県外移設、あわよくば国外移設」と「甘い夢」を見せたのは、他ならぬ民主党なのだから。
 
 二つには、日米同盟の実質破棄であろう。
 「日米中正三角形」だの、アメリカが加わるんだか加わらないんだかよく判らない「東アジア共同体」だのに御執心であり、「日中友好」のためには天皇陛下の御予定も平気で割り込みをかけて「日中友好に役立った」と恬として恥じることの無い鳩山首相である。
 「駐留無き安保条約」などと言う日米同盟の空虚化を「首相で居る間は封印」している鳩山首相である。またそれは、現政権与党の一角を占める社民党のマニュフェストとあい通じるものが大いにある。普天間基地移設問題にしても、社民党に対する「配慮」が多く見られる鳩山首相である。
社民党を嗤え1 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/29729793.html

 従って、鳩山首相の真意がこの2番目の選択「日米同盟の実質破棄」にあると言う疑いは、アメリカでなくても抱くところであろうし、私も抱いている。
 なるほど鳩山首相は事あるごとに「日米同盟の重要性」を口にし、日米同盟進化のための協議も何とか形だけは始まった。が、第2回日米首脳会談で「普天間基地問題の早期決着」と「そのための日米共同作業部会の設置」に合意し、「trust me!」と大見得を切って置いてのこの体たらくである。それはまた、「重く受け止め」まくりの「沖縄県民の思い」にせよ「現行日米合意」にしてもこの程度の「成果」である。
 
 それらは全て欺瞞であり、真意は日米同盟の実質破壊にあると考えて、仮定しても、殆ど不合理が生じないのが鳩山首相であり、現政権である。
 
 立場を変えて考えてみよう、貴方が北朝鮮の金将軍か中国の政府高官であったならば、日米同盟を実質破棄しようとしているかに見える鳩山首相を、どう見るだろうか。
 私ならば、大歓迎するだろう。極東におけるアメリカ及び米軍のプレゼンスは、沖縄の海兵隊を含めて、北朝鮮にとっても中国にとっとも目障りなもの。それを支えているのが日米同盟であり、日米同盟に基づいている日本である。
 その日本が、自ら日米同盟を実質破棄しようと言うならば、大いに支援するし、謀略もめぐらすし、金で済むなら金も出そうし、金以外にもあれこれ出したくなるのに違いない。
 

<注釈>
(*1) 先述の通り、別に米側としては今の普天間基地を維持してもなんら不都合は無いだろう。米軍再編は、普天間基地の一部をグアムに移転すれば足るし、それすら取り止めて普天間基地縮小さえなくなっても、米側は特に困らない。

3.鳩山首相は「5月まで」に一体何を為すか―予測しうる「決着」―

 前自公政権時代も沖縄の基地問題はあったし、今でもある。普天間基地が市街地の中にあって危険であるからこその返還を求め、辺野古移転と言う「痛み」を伴うものながらもこれに日米合意し、地元沖縄とも相応の調整をし、少なくとも最低限の合意はなっていたものと私は考えている。
 「いや沖縄県民の思いは違った」とか何とかいう人はありそうだが、「沖縄県民の思い」は「沖縄県民思い」にしか過ぎない。日米同盟は日本とアメリカの政府間の同盟であり、現行日米合意も量政府間の合意であり、鳩山首相は日本国の首相であって名護市長でも沖縄県知事でもないのだから、判断の基準は自ずと異なる・・・筈だ。
 それを現行日米合意を「前提としない」即ち日米交渉のやり直しと言う大業を実行する覚悟も無いまま「普天間基地の県外・国外移転」と言うバラ色の夢を沖縄にばら撒き、その結果もあって選挙に大勝したと言うのに、その「夢」を実現する手段を全く模索せず、駐日アメリカ大使に怒られて漸く「検討」を始めたようだがその検討すらろくに進まない内に、「普天間基地移設先は政権与党3党合意で決める。今は決めない。」と決断を他人に押し付けているのは、鳩山首相そ人以外の誰でもありえない。
 
 で、その責任者張本人である鳩山首相は、名護市長選により基地建設反対派の稲峰氏が当選したことを受けても「5月までに決着」と言う姿勢を取っている。元々は昨年の年内決着を目指していたはずだから「5月決着」でも焼く半年の遅れなのであるが、この間に鳩山首相は、一体何を為す心算であろうか。
 
 先述の通り、選択肢は実質2つである。その他の、例えば「アメリカも納得できるような県外移設」などと言うのは、この地球上にはない。
 精々、「もう一度ゼロベースで考えてみました」が、「やはりありませんでした。」と言えるだけである。「その努力を買ってください。」ぐらいの事を鳩山首相なら言いそうだが、そんな努力は地図さえ広げれば出来る事。沖縄県民に「県外・国外移設(の可能性)」と言うバラ色の「公約」をばら撒く前にすべき努力であって、散々希望を煽ってアメリカの信頼まで裏切った後にそんな「努力」をしたところで「後の祭り」にもなりはしない。
 
 だとすると、鳩山首相は「元の木阿弥」「泰山鳴動蚤すら出ず」の現行日米合意を「強行」するか、日米同盟実質破棄を「白状」するかの二者択一に迫られる。ついでに書けば、前者は「再検討」下から辛うじてマニュフェスト違反にならないが、後者は明らかに「対等で親密な日米関係」と言うマニュフェストに違反する事になる。まあ、鳩山政権のマニュフェスト「違反」はこれが初めてではないが。
 
 さて、鳩山首相は何れを選択し、決断するや?
 
 私は、以下の3択であろうと予想する。
 (1) さらに問題を先送りする。今度は恐らく8月の参院選挙以降に。
 (2) 小沢一郎に決めてもらう。或いはお母ちゃんかも知れない。(*1)
 (3) 辞職か自殺か解散総選挙か知らないが、兎に角政権を放り出す。
 
 一見してお分かりだろうが、私は、「鳩山首相自身は決して決断・決心しないだろう。」と予測している。
 今回の名護市長選挙結果が違っていたら、まだマシだったろうかと考えてみるが、今回の結果は先述の2択のうち後者即ち私が「鳩山首相の本音」と睨む方に優位な結果である。逆の結果であっても前者の決断をしたとは思えないから、やはり上記のとおりの鳩山首相だろう。


<注釈>
(*1) どちらも「決めてくれ」と言われて、相当困るだろうけれど。



4.仮想―もしも外国人参政権がすでに付与されていたら?

 さて、報じられているところでは、今回の稲峰氏の名護市長当選は、僅差の勝利であったと言う。
 いうまでもないだろうが彼は新しい名護市長に選挙で選ばれたのであり、その選挙は地方参政権の執行である。
 つまり、今国会に民主党が成立させようと蠢動している外国人参政権法が成立した暁には、名護市長選も普天間市長選も沖縄知事選も、全国一都一道2府43県の市町村選挙には外国人が選挙投票できる事になる。
 
 先のように立場を変えて考えてみよう。今度も北朝鮮の金将軍か中国の高官に成ってみよう。目の上のたんこぶ、目障りでならない沖縄の米軍と日米同盟を弱体化させたいとしたら、どうすれば良いか。
 外国人参政権法によって付与された選挙権を行使し、地方選挙に干渉すれば良い。
 北朝鮮国籍の人間には、今回の外国人参政権は付与されないことになっているが、そこは韓国に大量に新派を要請している北朝鮮であるから、大した問題にならない。況や人口も多けりゃ永住者も増加中の中国人なら何も問題ない。
 
 今回の、まだ日本国民に選挙権が限定されている選挙でさえ、僅差で勝敗が分かれたのだ。
 日本に住み、税金を納めているから「日本のために」投票するに違いない?そんなもの、親族の一人二人の身柄を抑えてしまえばどうと言う事はない。国籍は日本にないのだから、パスポートなり何なりを使って圧力をかけるもの造作もない。日本人や韓国人さえ誘拐し拉致して頬被りしている北朝鮮や、丸腰の坊さんを虐殺して恬として恥じることのない中国にとって、それぐらいの事が一体なんだと言うのだ。
 
 本来、名護市長選挙は一地方の首長選挙であって、国政を左右するものではない筈だ。
 だが、それが国政、日米安保体制と言う国同氏の関係を左右しかねないと言う事を、今回の名護市長選挙は示している。
 
 それは憲法の解釈を捻じ曲げ、「地方の住民」は「国民とは限らない」として外国人に「地方参政権」を付与する事の危険性を、如実に示している。
 
 いかに、国民。