2.鳩山首相発言の意味するところ-天皇の政治利用の正当化

 上記の経緯で最も注目すべきなのは、上記(8)12/14朝の鳩山首相発言であろう。
 
1>「日中関係をさらに未来的に発展させるために大変大きな意味がある。
2> 私は判断は間違ってなかった」

 上記(9)で明らかになったように、此処で言う「判断」とは、「日本政府として一度出した引見拒否回答を覆し、従来のルールを無視した習中国副主席の天皇陛下御引見を強行する」と言う判断である。
 その判断が正しいと言う理由を、首相は上記1>のように「日中関係に資する」と述べている。つまり正真正銘掛け値なしの政治的理由だ。
 
 言い換えれば上記の発言は、「正当な理由があれば、天皇の政治利用は許される。」と主張しているのである。さらには宮内庁長官の発言にもあるとおり、内閣を形成する宮内庁を通じて最も天皇を政治利用しやすい地位にあるのが、鳩山首相である。
 
 だが、理由があれば天皇の政治利用が許されるのならば、統帥権干犯問題で政府の軍事支出(※1)の自由を奪った史実は「許される」事になる。
 「正当な理由」も何も、普通つけられる「理由」は「正当である」と主張されるからつけられるのであり、「正当な理由があれば」と言う制約条件は「理由があれば」と同義にしか過ぎない。統帥権干犯を理由に軍事支出を制限したことには、ちゃんと「理由がある」のだから、「かような天皇の政治利用は許された。」と、鳩山首相はお考えなのだろうか。


<注釈>
(※1) 戦前の話である。当時は「防衛費」とは言わなかった。まあ、天皇陛下の統帥権も今は無いが。



3.敢えて鳩山首相を「非国民」と呼ぼう

 「非国民」と言うのは古い言葉だ。戦時中に愛国者ならざる者、愛国心の足らない者を非難する言葉として使われ、戦後の占領政策の中で抹消された言葉と言えよう。
 それだけに、戦後は殆ど「非国民」と言う言葉は使われなくなった。まあ、「愛国心の足らない者」と言う意味では、戦後は一貫して「非国民」だらけ(※1)なのであるから、敢えて「非国民」として「差別化」を図る事もなくなったとも言えよう。
 
 だが、私は本章の章題にした通り、敢えて鳩山首相を非国民呼ばわりしたい。
 
 理由は、愛国心の欠如もさることながら、今回の習中国副主席の天皇陛下御引見強行を通じて示された鳩山首相の思考が、日本国民としてあるまじきものと考えるからである。
 
 第一に、鳩山首相は天皇陛下を軽々と政治利用してなんら恥じるところが無い。それも国交を断絶するとか戦争を回避するとかではなく、たかだか「日中関係をさらに未来的に発展させるため」である。
 天皇陛下の政治利用は何も鳩山首相が初めてではない。宮沢首相は天皇陛下を訪中させて天安門事件以来の孤立状態にあった中国に風穴を開けてしまったし、大東亜戦争(太平洋戦争)の終結は天皇陛下のご聖断と玉音放送を必要とした。明治維新は天皇陛下を担いでの「尊皇攘夷」であるからこそあの程度の流血で済み、決定的な分裂を回避できたのである。
 だがしかし、大東亜戦争(太平洋戦争)終結の御聖断や明治維新は、日本国が滅びるか否かの瀬戸際での「天皇の政治利用」であり、滅多に行使されるものではないが(※2)かような政治利用は許容さるべき物と考える。日本国が滅んでしまっては、それこそ皇祖皇宗に申し訳が立つまい。
 問題は、宮沢首相時代の天皇訪中にせよ、今回の天皇御引見にせよ、高だか日中友好の促進如きに天ちゃんを引っ張り出す軽さ、軽率さである。
 中国が日本にとって「大事な国」であろうが、此処の所二ケタ台で防衛費を増やしていようが、今年中にGNPで我が国を抜いて世界第2位にのし上がろうが、核兵器と大陸間弾道弾と原子力潜水艦を持ってこれから空母を持とうが、何の日没する処の天子(の後釜)でしかないではないか。
 左様な場面で「天皇の政治利用」などと言う伝家の宝刀を抜いて、一体本当の危機には何をするつもりだ。(※3)
 
 第二は、第一の天皇の政治利用軽視とも絡むが、鳩山首相(と背後に居る小沢一郎)の中国重視である。アメリカのオバマ大統領はペテンにかけて、さらにまたペテンにかけそうな勢いであるのに対し、中国には尻尾振って首相としての強権を発動し、その正当性を主張する。この落差は、今でも「ギクシャク」している日米関係を、さらに悪化させるであろう。
 日中友好は、日米友好を引き換えにして良いようなシロモノではない。
 北京オリンピックの聖火リレーで長野を「占領」して見せ(※4)、都市と農村で戸籍を分ける事で「民工」と言う奴隷制度を維持発展させている中国と、我が国が「共通の価値観」を持つなぞ、魂の自由がある限りありえようが無い。(※5)
 「白薔薇は散らない。」のである。
 
 第三は第一、第二とも相関があるが、鳩山首相の天皇陛下御自身に対する軽視である。
 想起されたい。11月に中国から当該御引見について打診があった時は、陛下のご健康状態から一旦は日本政府として拒否したのである。それを中国が巻き返し、鳩山首相が「判断」し、今回の特例的御引見となったのである。
 この間、陛下のご健康が特段に快復したと言う情報は無い。
 宮内庁長官も「誠に心苦しい思いで陛下にお願いした。」と述べているが、その背後には陛下の健康状態もあることが推察される。
 
 言い換えるならば、鳩山首相は日中友好促進のために、陛下のご健康と御寿命を、売ったのである。
 
 
 さあさ、国民。
 
 「万世一系の大君」という表現は確かに古いが、既に1000年以上を閲する世界史上の奇蹟とも言うべき長期王朝の我が天皇陛下を軽々と政治利用し、毒ギョーザ事件や東シナ海ガス田を引き合いに出さずとも2020年までに1990年の6倍の炭酸ガスを出す事を数値目標と設定している中国に尻尾を振り、その判断で天皇陛下の御健康と御寿命を危険に曝すような者を、「日本国民」と呼べるか?
 
 なるほど日本国籍を有していても北朝鮮にハイジャックして亡命してしまうような奴も居るのだから、上記のような者で日本国籍を有する者が居ても不思議ではない。実際、居る。
 
 だが、少なくとも私は、左様な者を日本国民とは呼べない。

 故に、鳩山首相を呼ばわるのである。
 
 「非国民・鳩山由紀夫」と。
 勿論その背後にあって鳩山首相を操り、中国に尻尾振るのに余念が無い小沢一郎もまた、非国民である。
 
 その非国民が、国民の選挙によって選出された最大与党の党首であると言うのは、民主主義の皮肉としか言いようが無い。まあ、衆愚政治とはそんなものだが、我が国が民主主義国家を目指す以上、国民が衆愚である事は許されないのである。


<注釈>



(※1) 何しろ「学校で愛国心を教える」と言うだけで反対の大合唱が起きてしまうのだから、占領政策とは恐ろしい。

 御国自慢は人間の原初的感情のひとつ。愛国心もその根源は「御国自慢」だ。

 その上で我が国には、御国自慢の種が山のようにある、と言うのは「私の歴史観」シリーズを参照のこと

(※2) そうやたらに我が国が滅亡に瀕するのも困る。滅亡に瀕しているのに気づかないのはもっと困るが。

(※3) 普天間基地問題の経緯を追っていると、「何も出来ない。」と言う気がしてしょうがないが。

(※4) 日本で外国人賛成間が付与されるならば、賭けても良い、大量の中国移民が生じ、長野どころかそのほかの地域も政治的に占領されるだろう。中国本土ですらろくに認められていない参政権が得られ、日本を牛耳れるとなれば、占領されないと考える理由は何一つ無い。

(※5) 鳩山首相や小沢一郎が、その魂の自由を失って或いは売り払ってしまった可能性は、否定できないが。