2. 現時点で予測しえる普天間基地移設問題「決着」とその問題点

 さて、先述の通り鳩山首相の言う事は全く信用できず、このトップの元「日米作業グループ」の任に当たる方々の苦労は想像するに余りあるが、それでも早期解決が必要な筈の普天間基地移設問題に、果たして、どんな解決策=決着があるか考えてみよう。
 
(1) 鳩山首相が「決断」し、現行日米合意に沿った普天間基地県内移設を了承する。
 現行合意に完全に沿う限り、米側にこれに反対する理由は(今のところ幸いに。今後こじれたらわからない。)無い筈だ。作業グループは速やかにその任務を完遂するだろう。
 問題は勿論、「県外移設」と言う見果てぬ夢を見させられた沖縄県民であるが、これは国内問題であるから、鳩山首相が腹を括ればナントカならないことは無い。精々、沖縄県に於ける民主党勢力が衰退し、次の名護市長選挙なり沖縄県知事選挙なりに負けるだけで、次の参院選までに「巻き返す」事も可能であろう。
 それでも、鳩山民主政権発足からその「決断」までの期間、普天間基地の移転は遅れを生じる事になる。下手すると予算編成の関係もあり、1年以上の遅れだ。
 また、社民党がその現時どおりに行動するならば、この「決断」は社民党の連立政権離脱を招くかも知れない。尤も私の目からするとこれは、民主党にとっても日本にとっても朗報に思えるのだが。

(2) 鳩山首相は「高い支持率(*1)」を背景に社民党との連立を重視し、あくまで沖縄県外移設を主張する。「日米作業グループ」もその意を受けて作業に当たる。
 これは少なくとも日米交渉の仕切りなおしであり、つまりそれだけ時間のかかる困難な交渉の入り口と言うことである。新たな日米合意はどれぐらい先に出来るかわからないし、県外に移設できるかも現時点では不明。
 確実なのは、その合意がなるまで、普天間基地は微動だにしないと言うことだ。
 
(3) 鳩山首相は「決断」し、日米安保条約を破棄する。
 この場合、普天間基地は沖縄県民の悲願である「県外移設」どころかめでたく「国外移設」となり、鳩山首相と民主党はその選挙公約を守れる。
 日米安保条約は10年更新で、1年前に通告すれば破棄できるから、日米安保60周年を来年迎える今年は絶好のチャンスかと思いきや、日米安保条約の締結は6月だそうだから、今年の破棄通告期限はとっくに過ぎている。
 鳩山首相がこの大決断を下したとしても日米安保が廃棄出来るのは来年の10年後である2020年。それ以前に普天間基地返還を求める事はできるし、日米安保破棄予定ならばその説得力は増すだろうが、10年後まで民主党政権が持続するとは限らない以上、米国としては米国の利益に合致する限り、普天間だろうがキャンプシュワブ=辺野古だろうが基地を放棄する理由は無い。
 大決断の割にはこの交渉もまた上記(2)と同様の長くて苦しい交渉になるだろうし、その間普天間基地は動かないだろう。
 勿論問題はそればかりではない。日米安保条約がなくなってしまうのである。我が自衛隊三軍を含めて、国防政策・国防体制は根源的な見直しを迫られ、常識的に考えれば少なくとも国防費は跳ね上がる・・・筈だ。
 民主―社民―国民新連立政権にはそんな常識は通じないから、恐らくそんな常識的な反応はしないだろう。間違いなく我が国の主権と独立は、危機を向かえ、おそらく鳩山首相はじめとする現政権は、その事に気が付きもしないだろう。
 果たして、国民が気づくかどうか。That's Problem!
 
 当たり前だが、「早期の決着」は現行日米合意に沿う上記(1)しかない。少なくとも私には考えも付かない。
 
 他にあるとしたら、今回の政権交代を革命と宣言し、前政権の結んだ全ての国際条約を無効と宣言する事ぐらいだが・・・少なくとも今のところ流石の「宇宙人」鳩山首相もこんな策は打ち出していない。
 
 明日は、わからないが。


<注釈>
(*1) 本当かよ、と私なんぞは思うが。
まあ、あんな民主党やこんな社民党やそんな国民新党を政権与党に押し上げてしまった世論だ。私なんぞの「常識論」は通用しないと思わねばならないが。



3. 無能な首相の扱い方

 発言がぶれるのも、嘘をつくのも、昨日の発言を覚えていないのも、個人としてすら大迷惑ではあってもそれだけで犯罪にはならない。(*1)
 
 だが首相として、日本の国家元首として、自衛隊三軍の最高指揮官としてそれをなすのは、無能であり、首相と言う責任ある地位の者の無能は、立派な「犯罪」だ。
 
 勿論、無能な首相と言うのが刑法や民法、そのほか条文化された法律に抵触しない事は承知している。だが、国民の代表として議会の最大与党となった党の党首として、国家国民の利益を大いに損なう事は国民に対する裏切りであり、極刑にも値する犯罪だと、私は思う。
 実際、そんな罪で極刑に処せられた日本国首相は無い筈だとは思うし、鳩山首相が極刑になる可能性も、皆無に近い事も承知しているが。


<注釈>
(*1)10億円を親からとは言え無税で受け取るのは犯罪だが。



4. 鳩山首相はその無能ゆえに不信任されるべきである

 然らば如何はせむ。
 
 鳩山首相はその無能ゆえに不信任されるべきである。
 
 本来、現政権に対する不信任は野党の持つ最大の切り札であり、滅多に成立しないが(そもそも、少数だからこそ野党なのである。その野党の出す不信任案を、一部なりとも与党が支持しないと、不信任は成立しない。)、革命やクーデターと言った非合法手段を使わずに劇的に政権を交代させうる手段である。
 
 早い話が最も手っ取り早く無能な鳩山首相を権力の座=責任ある地位から引き摺り下ろせる手段である。
 
 その不信任が現行国会で成立する見込みが無いのは、彼が政権与党にして最大党の党首であり、先の衆院選でそれだけの圧倒的議席を獲得した事による。言い換えると衆院選挙と言う「国民の選択」が今の鳩山首相の無能を許容しているのである。
 
 「それが議会制民主主義と言うものだ。」と言えば、その通りかも知れない。次の選挙で民主党が仮に大敗したとしても、次の選挙の影響力=改選議席数次第で未だ民主党政権は続き、鳩山首相が続投する可能性は多分にある。その議会制民主主義=代表民主制ゆえに。
 
 「民主主義は最悪の体制だ。」とは第2次対戦中の英国首相・ウインストン・チャーチルの言。
 
 彼はその後に「だが、これ以上の体制は無い。」と続けており、この後段に私は全面的な賛意を表するものではあるが、その前段「最悪の体制」と言うのも身に沁みて感じるところである。
 
 如何に、国民。