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政府がアフガン支援策を決定 元兵士社会復帰など4500億円規模
2009.11.10 11:29  http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091110/plc0911101130009-n1.htm
 政府は10日午前、アフガニスタンとパキスタンに対する支援策に関する閣僚委員会を開き、新たな支援策を確認した。反政府武装勢力タリバン元兵士の社会復帰支援や農地開発などの民生支援が柱で、平成22年度から5年間で50億ドル(約4500億円)規模となる。来年1月に終了させる予定のインド洋での海上自衛隊による給油活動に代わる支援策として、鳩山由紀夫首相が13日の日米首脳会談でオバマ大統領に正式に伝え、理解を求める。

 閣僚委員会には、首相は岡田克也外相、平野博文官房長官、北沢俊美防衛相らが出席した。

 新たな支援策は、タリバンの元兵士に対し有給の職業訓練を実施するほか、アフガンの全警察官約8万人の給与の半額程度を負担する。さらに、インドネシアなど第三国で日本の専門家がテロ対策訓練などの研修を実施し、アフガン警察官の養成に協力することにしている。

 一方、農業分野では治水工事を行い、水利施設を造成して農地開発を進める。国際協力機構(JICA)の要員を増やすことで、農業指導の対象を拡大する。

 一連の支援策は、国連開発計画(UNDP)などの国際機関やJICAを通じて実施する方針だ。

 パキスタンに対しては、今年4月、麻生太郎前首相が今後2年間で10億ドル(約900億円)の支援を表明しており、迅速な実施を図るとともに、アフガンからの難民に対する支援を急ぐ。
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 報じられているのは鳩山民主党政権の「新たなアフガニスタン支援策」。

>平成22年度から5年間で50億ドル(約4500億円)規模となる。

そうであるから、平均でも年に900億円。戦闘機が毎年5機づつ、5年間で25機=1個飛行隊以上買えてしまいそうな結構な金額であり、その財源からして問題になりそうだが、「子供手当の半額実施で3.5兆円」に比べれば可愛いものだし、「国債発行は当初計画の44兆円に抑えたいが、50兆円になるかも知れない。」等と言っているような民主党政権では、1兆や2兆の国債増発は屁でもないのだろう。


1. 金は出す、人も出すが、護衛は出さない。

 記事で報じられている鳩山政権の「アフガニスタン支援策」は、具体的には以下の通りである。
 
  ①タリバンの元兵士に対し有給の職業訓練を実施
  ②アフガンの全警察官約8万人の給与の半額程度を負担
  ③インドネシアなど第三国で日本の専門家がテロ対策訓練
  ④農業分野では治水工事を行い、水利施設を造成して農地開発を進める。
  ⑤国際協力機構(JICA)の要員を増やすことで、農業指導の対象を拡大する。

 上記②は単に金を出すだけである。「アフガンの全警察官約8万人の給与」の半分と言うから4万人分の人件費と言う事になるが、仮に年間100万円と仮定すると、4万人分で400億円。「年間平均900億円」の支援額の半分近い計算だが、なんとかなりそうだ。
 但し、この推定金額からすると、この「警官の半分の給与」と言うのが「アフガニスタン支援策」最大の柱になりそうで・・・一寸情けない。それなりの技量を必要とした「単に金出すだけではなく、血は流さないが汗は流す」インド洋上給油活動の代替策と言うことも考えるとなおさらだ。
 さらには、ところも近い湾岸戦争の際、90億ドル=約1兆円と言う同盟国中最大の金額を出しながら感謝のかの字もされなかった史実を、想起せずには居られない。
 
 流石の民主党にも同じ事を想起したものが居たのか、「金ばかりではなく、人も出す」と言うのが上記③、④、⑤である。特に④では農地開発を、⑤では農業指導を掲げ、共に現地に人が入って「汗を流す」事を実行する筈である。
 
 所が、③テロ対策訓練は「インドネシアなどの第三国で」となっている。

 これはつまり、テロ対策訓練のようなテロに直接対峙するような活動は、アフガニスタン国内で実施するのは危険であるから「インドネシアなどの第三国」=安全地帯で行おうと言う事であろう。何しろ米軍がさらに1個軍団の増援を受けないと勝利がおぼつかないとも言われる戦場がアフガニスタンだ。かような用心も必要であろうと言う事には同意する。
 問題は④農地開発や⑤農業指導はアフガニスタン国内に入らなければ仕方がないということである。「テロと直接対峙しないから良いだろう。」と鳩山首相はじめとする連立政権のお歴々は考えているのかも知れないが、岡田外相がアフガニスタンを訪問した際「お忍び」で行ったのは何故だと考えているのだろうか。
 
 端的に断言しよう、④農地開発や⑤農業指導でアフガニスタンに行く日本人は、テロの標的たり得る。「第三国で」とは言え③テロ対策訓練を行うとあればなおさらだ。
 普通の国ならば、陸上部隊を出して護衛の任に当てるところであるが、そんな事はこのアフガニスタン支援策には書いていないし、鳩山首相の発言も否定的。第一、連立与党の社民党がヒステリー起こす。従って陸自の派遣は少なくとも当面無理だ。
 
 即ち、上記④農地開発や⑤農業指導は、汗ばかりでなく、血も流すであろうことはまず間違いない。これらをアメリカ合衆国大統領に「インド洋上給油活動中止の代替策」として提案すると言う事は、その血を流す覚悟を示したと言う事に他ならない。
 
 「大したもの」と言うべきだろうな。


2. タリバン兵士は失業者扱い

 その大した覚悟、「アフガニスタンで日本人が汗ばかりでなく(積極的にではないが)血も流す」と言う決意表明にも拘らず・・・アフガニスタン支援策として真っ先に挙げられているのが①「タリバンの元兵士に対し有給の職業訓練を実施」 なのである。
 「元兵士」と言うのだから、まずは「タリバンを辞めた」と少なくとも自称する必要はあるのだろうが、給料付きで日本が職業訓練を実施してくれると言う「太っ腹」な「支援策」である。
 
 背景にあるのは「職業訓練も受けず、職につけないからタリバンの兵士になんかなったんだろう。みんな貧乏が悪いんだ。」と言う思想であろう。
 
 が、こいつは果たして実情だろうか。それとも単なる思い込みだろうか。
 
 歴史的に見て、アフガニスタンの「貧乏」は今に始まった事ではない。山がちの地形で土地はやせ、交通の要所に位置するために古くから侵略者=支配者には事欠かず、その支配に対し頑強に抵抗するのも半ば伝統で、内戦状態も長い。今はタリバンによる内戦状態にある。端的に言って職業訓練を受けただけでその貧乏状態から脱出する事は難しかろう。きっかけにはなる可能性があろうが。
 
 さらに、テロリスト=タリバンの側から考えてみよう。日本人が「タリバンの元兵士」に給料を払い、職業訓練を施すと言う。日本の事であるし、相応に高い給料が提示されるだろう。
 タリバンにしてみれば、一定期間「元兵士」をこの職業訓練に送り込めば、その給料を受け取る事ができる。日本から貰った金だろうが麻薬を売った金だろうが、金は金。食料や武器に替える事ができる。
 言い換えれば、「ニセ元兵士」を送り込む事で、タリバンは日本の資金援助を受けられる事になる。
 
 「それでも本当にタリバンを辞める者が少数でもあれば、職業訓練はムダではない。」と言う考え方はあるし、それはそれで「立派な態度」といえないこともない。
 が、たまらんのはその「日本の資金援助」によりタリバンが調達する武器で殺されたり負傷させられたりする諸外国のアフガニスタン駐留軍だ。特に、日本が陸上部隊を派遣しないがために日本人の護衛に付かねばならない部隊にしてみれば、「内心忸怩たる」では済むまい。
 
 言い換えれば①「タリバンの元兵士に対し有給の職業訓練」は、唯単に職業訓練を行うだけでは日本によるタリバン支援となりかねず、効果のほども非常に疑わしい。
 タリバン支援としないためには、職業訓練を受ける「元兵士」の身元保証などの監視並びに選別が不可欠である。
 職業訓練を対テロ戦争に効果的にするためには、職業訓練だけでは足らず、職を安定的に供給しなければならない。その前提条件は、治安の回復であるから、日本としてはアフガニスタンの治安回復に力を入れる必要がある。
 
 アフガニスタンの治安回復に必要な追加兵力は、米軍試算で1個軍団とされるから、今回提案する日本のアフガニスタン支援策全部につけるべき陸上自衛隊護衛部隊を、恐らく(*1)上回るだろう。
 ここでもまた日本人は、汗を流すばかりでなく、血を流すことが求められる訳だ。
 
 本当にその覚悟があるのか?鳩山首相。民主党政権。

<注釈>
(*1)日本がアフガニスタンに治安を回復させる、特別な手段なり、魔法の呪文なりを、知っていない限り。