報じられているのは米国の自動車メーカーGMがその(主要では無さそうだが)生産車ハマーを会社ごと中国の騰中重工に売却する合意がなったというもの。
 株式の8割を騰中重工が保有し、残りの2割を香港の索郎多吉(Suolang Duoji)氏が保有するとも報じられているから、この会社は完全に中国資本の会社になるわけだ。

 尤も、
>ハマーの経営は現在の首脳陣が引き続き行い、
>ジェームズ・テイラー(James Taylor)最高経営責任者(CEO)は現職にとどまる。

>一定の移行期間中は、ハマーの生産などをGMに委託する。

とも報じられているから、何のことはない経営陣はとりあえず今のままで、さらに当面はハマーの生産もGMに委託されるから、現状を維持したまま首根っこ押さえて会社乗っ取りにまんまと成功した形、と思うのは、私だけだろうか。

 しかしながら、ハマーと言えば元は米軍の軍用車輌。21世紀のウイリスジープとも言うべき汎用高機動車で、その牽引力・搭載力・機動力で広く米軍で使われている車輌だ。
 それを民間の大型スポーツタイプ多目的車(SUV)に仕立てて果たしてどれほど商品として魅力かは相当疑問に思うし、報道写真にあるような「ハマーのリムジン」なんてのはギャグか特撮かと我が目を疑うほどだ。「高機動なリムジン」なんて一体どんな需要があるんだ?(ヤクザやマフィア用かな。)
 民間車としてはそんな商品だから、何も左前になったGMでなくても売却したくはなるだろうが、それを中国が会社ごと買い取ると言うことは、米軍の汎用高機動車ハマーの設計・生産ノウハウが、一部なりとも中国に流出することを意味する。
 そりゃま何のかの言ってもハマーはたかが自動車。航空機(たとえば日本にすら輸出すらしてくれないF-22とか)のようなハイテクの塊ではないだろうが。
 
 大丈夫なのか、GM?
 大丈夫なのか、米国。

補足:米軍用のハマーは「ハンヴィー」とも呼ばれ、GMではなくAMゼネラル社の製品で、今も同社で生産中とのこと。
 AMゼネラル社は軍用ハマー(ハンヴィー)を民間社に仕立てた「ハマーH1」を生産販売していたが、同型はすでに生産完了し、その後民間車としての「ハマー」ブランドをGMに売ったのだそうだ。
 GMは此を受けて、「シボレー」のシャーシを利用した民間車「ハマーH2」「ハマーH3」ヲ生産販売していた。外観は似ているが、軍用ハマー(ハンヴィー)やハマーH1とは別の車と言って良い。
 このたび中国資本になったのはGMのハマーH1/H2の生産会社であるから、これは米軍用ハマー(ハンヴィー)とは別物と言って良い。
 
 従って、米国は大丈夫そうだ。
 GMは・・・相当ヤバそうだが。