いささか旧聞に属するが、先頃麻生太郎首相が衆議院を解散して以来、世の中は8月末の選挙へ向けて何かとかますびしい。 にほんブログ村
マスコミをあげての応援の甲斐あってか、「民主党勝利=政権交代=民主党政権誕生」は既定の事実化のように報じられ、「自・公両党がどこまで負けるか」のみを論じるかのような論調が目立つ。
が、私が民主党に対し特に国防政策・安全保障政策、更にはその根幹となる国家観に至るまで極めて懐疑的であるのは隠れもない事実であり、そんな私にとっての現状は決して心楽しい状況ではない。
「確かな野党が必要です」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/21191827.html http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/17433995.html
「続・確かな野党が必要です」http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/24527645.html
それどころか、「憂国の情」なんて古風な感情がわきあがってくるのを抑える事ができない。
元より、民主主義の原則は「民意」の反映であり、それが「一人一票」と言う選挙を通じて表現される以上は、選挙結果は不正でもない限り、絶対視はしないが甘受はせざるを得ないものではある。
が、それは一人ひとりの一票が、自ら考え、自らの意思で投票された場合に限るのであって、「空気」とか一時の熱狂とかに流されて投票した場合は、民主主義は忽ち衆愚政治に堕する事を、あらためて強調したい。
その上で、今や「次の内閣」確実視されている民主党の国防政策・安全保障政策を取り上げよう。
本ブログの冒頭に掲げている通り、民主主義国家の国民には一定の軍事知識が不可欠であるのは、国防政策・安全保障政策が政策の一環、それも時に国家の存亡をも決する、極めて重要な一環だからであり、「次の内閣」民主党のそれが我々の生活や「安心」を景気対策以上の重大さで左右する事もありうるのであるから。
1-1 インド洋給油法に対する民主党の対応
諸兄御承知の通り、我らが海上自衛隊はインド洋において米海軍を中心とする諸外国軍に対する給油活動を行っている。対テロ戦争支援の一環としてである事も、言うまでも無い事だろう。
洋上補給・洋上給油と言うのは、誰でも出来る芸当ではない。普通の商船はそんなややこしい事はやらないし、やれる能力があるのは普通は海軍のみ。日本で言えば海上自衛隊と、何故か(※1)捕鯨船団にその能力があるぐらいで、海上保安庁にだってない。
従って対テロ戦争支援のために、インド洋で各国海軍艦艇に給油活動をやろうとすると、海上自衛隊の出番となるのは自然であり、必然ですらある。そのために政府与党・自民・公明両党は法律を作り、期限毎の延長も行ってきた。
民主党はこのインド洋上給油活動に反対していた。
給油した燃料が対テロ戦争以外の目的に使われる/使われた可能性があり、それは「憲法違反」だと言っていたのである。「集団的自衛権の行使に当たるから憲法違反だ。」と言う理屈だ。
「我が国は集団的自衛権を有するが行使する事は憲法上許されない。」と言うのが今までの政府見解だそうだから、民主党のこの反対論はその政府見解に沿ったかたぢではある。
が、私なんぞは集団的自衛権は国家にとっての自然権であると考えるから、それを「あるけれども行使する事は許されない。」と言うのは「無い」のとなんら変わる所が無く、国家にとっての自然権である集団的自衛権を否定する憲法こそ問題だと考えるのだが、そこは「見解の相違」であり、「見解の相違」にしか過ぎないとも言える。
根拠はともあれインド洋上給油活動に反対する/賛成するのは民主党の自由であり、その法律の期限延長審議の際に反対票を投じるのも自由である。
が、民主党が実施したのは、単にインド洋上給油活動の期限を延長する法案に反対するだけではなかった。
諸兄御承知の通り、先ごろの麻生首相による衆院解散まで、衆議院の2/3以上を自・公両与党が占めておるのに対し、参議院は民主党が牛耳っている。衆議院で可決して参議院に送られた法案が否決されるか、送られてから60日以上たっても議決されない場合、法案は再び衆議院で審議され、2/3以上の賛成があれば参議院に優先してこの法案は可決される。これはまさに、憲法で決まっている規定だ。
民主党は衆議院で可決され、参議院に送られてきたインド洋上補給活動の期限を延長する法案を、「審議しない。」贔屓目tに見ても「議決しない」と言う、暴挙と言って悪ければ愚挙に出た。
参院で議決すれば法案を否決できるのだが、そうすると法案は衆院の2/3以上を以って再可決され、インド洋上給油活動は継続できる。議決しなければ、法案は法律として成立せず、最終的には再可決されて成立するとしても、それまでの間インド洋上で給油活動をする法的根拠が無くなり、海上自衛隊は一時的とは言え戦線離脱を余儀なくされる。
マスコミをあげての応援の甲斐あってか、「民主党勝利=政権交代=民主党政権誕生」は既定の事実化のように報じられ、「自・公両党がどこまで負けるか」のみを論じるかのような論調が目立つ。
が、私が民主党に対し特に国防政策・安全保障政策、更にはその根幹となる国家観に至るまで極めて懐疑的であるのは隠れもない事実であり、そんな私にとっての現状は決して心楽しい状況ではない。
「確かな野党が必要です」 http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/21191827.html http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/17433995.html
「続・確かな野党が必要です」http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/24527645.html
それどころか、「憂国の情」なんて古風な感情がわきあがってくるのを抑える事ができない。
元より、民主主義の原則は「民意」の反映であり、それが「一人一票」と言う選挙を通じて表現される以上は、選挙結果は不正でもない限り、絶対視はしないが甘受はせざるを得ないものではある。
が、それは一人ひとりの一票が、自ら考え、自らの意思で投票された場合に限るのであって、「空気」とか一時の熱狂とかに流されて投票した場合は、民主主義は忽ち衆愚政治に堕する事を、あらためて強調したい。
その上で、今や「次の内閣」確実視されている民主党の国防政策・安全保障政策を取り上げよう。
本ブログの冒頭に掲げている通り、民主主義国家の国民には一定の軍事知識が不可欠であるのは、国防政策・安全保障政策が政策の一環、それも時に国家の存亡をも決する、極めて重要な一環だからであり、「次の内閣」民主党のそれが我々の生活や「安心」を景気対策以上の重大さで左右する事もありうるのであるから。
1-1 インド洋給油法に対する民主党の対応
諸兄御承知の通り、我らが海上自衛隊はインド洋において米海軍を中心とする諸外国軍に対する給油活動を行っている。対テロ戦争支援の一環としてである事も、言うまでも無い事だろう。
洋上補給・洋上給油と言うのは、誰でも出来る芸当ではない。普通の商船はそんなややこしい事はやらないし、やれる能力があるのは普通は海軍のみ。日本で言えば海上自衛隊と、何故か(※1)捕鯨船団にその能力があるぐらいで、海上保安庁にだってない。
従って対テロ戦争支援のために、インド洋で各国海軍艦艇に給油活動をやろうとすると、海上自衛隊の出番となるのは自然であり、必然ですらある。そのために政府与党・自民・公明両党は法律を作り、期限毎の延長も行ってきた。
民主党はこのインド洋上給油活動に反対していた。
給油した燃料が対テロ戦争以外の目的に使われる/使われた可能性があり、それは「憲法違反」だと言っていたのである。「集団的自衛権の行使に当たるから憲法違反だ。」と言う理屈だ。
「我が国は集団的自衛権を有するが行使する事は憲法上許されない。」と言うのが今までの政府見解だそうだから、民主党のこの反対論はその政府見解に沿ったかたぢではある。
が、私なんぞは集団的自衛権は国家にとっての自然権であると考えるから、それを「あるけれども行使する事は許されない。」と言うのは「無い」のとなんら変わる所が無く、国家にとっての自然権である集団的自衛権を否定する憲法こそ問題だと考えるのだが、そこは「見解の相違」であり、「見解の相違」にしか過ぎないとも言える。
根拠はともあれインド洋上給油活動に反対する/賛成するのは民主党の自由であり、その法律の期限延長審議の際に反対票を投じるのも自由である。
が、民主党が実施したのは、単にインド洋上給油活動の期限を延長する法案に反対するだけではなかった。
諸兄御承知の通り、先ごろの麻生首相による衆院解散まで、衆議院の2/3以上を自・公両与党が占めておるのに対し、参議院は民主党が牛耳っている。衆議院で可決して参議院に送られた法案が否決されるか、送られてから60日以上たっても議決されない場合、法案は再び衆議院で審議され、2/3以上の賛成があれば参議院に優先してこの法案は可決される。これはまさに、憲法で決まっている規定だ。
民主党は衆議院で可決され、参議院に送られてきたインド洋上補給活動の期限を延長する法案を、「審議しない。」贔屓目tに見ても「議決しない」と言う、暴挙と言って悪ければ愚挙に出た。
参院で議決すれば法案を否決できるのだが、そうすると法案は衆院の2/3以上を以って再可決され、インド洋上給油活動は継続できる。議決しなければ、法案は法律として成立せず、最終的には再可決されて成立するとしても、それまでの間インド洋上で給油活動をする法的根拠が無くなり、海上自衛隊は一時的とは言え戦線離脱を余儀なくされる。
実際そうなった。
インド洋上の給油活動が、些かなりとも対テロ戦争に役立っている(※2)とするならば、この海上自衛隊戦線離脱の中断は、テロリストにとっての朗報であり、当時の民主党の地位としては最大限テロリストに貢献して見せた訳である。
「政権交代」のために。
政府を揺さぶるために。
日本の参政権を持っているテロリストならば、民主党に喜んで1票を投じる事だろう。
その数が増えれば、民主党の支持はますます磐石と言うわけだ。
<注釈>
(※1)多分、GLやらSSやらの自称「環境保護団体」が洋上テロの目標にしているためだ。洋上給油ならば、港湾に入らずに給油できるから、入港拒否やら、停泊中にテロ標的となることを避けられる。
(※2)当たり前だが政府与党も、防衛省も、役立っていると主張しているし、私もそれに賛同する。
少なくとも、「対テロ戦争以外の目的にしか役に立ってはいない。」と断言する根拠は、私には考えられないし、従ってこのインド洋上給油活動が「憲法違反の疑いがある。」とは主張できても「憲法違反以外の何物でもない。」と断言するには、狂気に近い論理が要るだろう。
民主党には、それぐらいの狂気は、大いにありそうだが。
インド洋上の給油活動が、些かなりとも対テロ戦争に役立っている(※2)とするならば、この海上自衛隊戦線離脱の中断は、テロリストにとっての朗報であり、当時の民主党の地位としては最大限テロリストに貢献して見せた訳である。
「政権交代」のために。
政府を揺さぶるために。
日本の参政権を持っているテロリストならば、民主党に喜んで1票を投じる事だろう。
その数が増えれば、民主党の支持はますます磐石と言うわけだ。
<注釈>
(※1)多分、GLやらSSやらの自称「環境保護団体」が洋上テロの目標にしているためだ。洋上給油ならば、港湾に入らずに給油できるから、入港拒否やら、停泊中にテロ標的となることを避けられる。
(※2)当たり前だが政府与党も、防衛省も、役立っていると主張しているし、私もそれに賛同する。
少なくとも、「対テロ戦争以外の目的にしか役に立ってはいない。」と断言する根拠は、私には考えられないし、従ってこのインド洋上給油活動が「憲法違反の疑いがある。」とは主張できても「憲法違反以外の何物でもない。」と断言するには、狂気に近い論理が要るだろう。
民主党には、それぐらいの狂気は、大いにありそうだが。
1-2 民主党マニュフェスト制定時の「インド洋給油容認」発言-それは「現実的対応」だったか?-
さて、テロリストに味方してまで「憲法違反」と唱え、可能な限り反対してきた民主党であるが、いざ衆院選挙が近づき、いよいよ「政権交代」が見えてくると、微妙な舵取りをして見せたようだ。
曰く、政権を取ったからといっていきなりインド洋上給油活動を止めるような事はせず「容認する」というのである。
政権が見えてきたがための「民主党、現実路線への転換か(※1)。」と期待する向きも、あったようだ。
曰く、政権を取ったからといっていきなりインド洋上給油活動を止めるような事はせず「容認する」というのである。
政権が見えてきたがための「民主党、現実路線への転換か(※1)。」と期待する向きも、あったようだ。
【鳩山ぶら下がり】給油活動は「一気に止めるのも無謀」(7月17日)
2009.7.17 21:07http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090717/stt0907172108013-n1.htm
2009.7.17 21:07http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090717/stt0907172108013-n1.htm
この「豹変」に対し、何かにつけ方針変更を「ブレた。」「またブレた。」と批難され続けてきた自民党から、「民主党こそ、ブレた。」と批難が出るのは、前述の経緯からしても極自然な事だろう。
自民党の批難に対し、当の民主党は、「ブレたのではなく、進化したのだ。」などと嘯いていた(※2)・・・筈だった。
「進化」すると、今までの憲法違反が憲法違反でなくなるのは、与党になってしまった社民党=旧社会党が自衛隊違憲論から合憲論に宗旨替えしたように、「実績」があるから、特に問題にならなかったらしく、マスコミもこれを「ブレた」とは報じなかったようだ。
所が・・・更に後に報じられている所によると、今月29日になって民主・鳩山代表が述べたところでは、海上自衛隊によるインド洋上給油活動は来年1月の根拠法の期限までは続けるが、それ以降の延長はしないのだそうだ。
自民党の批難に対し、当の民主党は、「ブレたのではなく、進化したのだ。」などと嘯いていた(※2)・・・筈だった。
「進化」すると、今までの憲法違反が憲法違反でなくなるのは、与党になってしまった社民党=旧社会党が自衛隊違憲論から合憲論に宗旨替えしたように、「実績」があるから、特に問題にならなかったらしく、マスコミもこれを「ブレた」とは報じなかったようだ。
所が・・・更に後に報じられている所によると、今月29日になって民主・鳩山代表が述べたところでは、海上自衛隊によるインド洋上給油活動は来年1月の根拠法の期限までは続けるが、それ以降の延長はしないのだそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090729-00000125-mai-pol
『民主党の鳩山由紀夫代表は29日、海上自衛隊によるインド洋での米艦船などへの給油活動について、「基本的に延長しないというのが私たちの立場だ」と述べた。』と言うから、一寸疑う余地が無い。まあ、予想された通りといえば、予想された通りなのだが。
先に報じられていた「政権獲得後も当面は継続する考え」と言うのは、来年1月までの僅か半年に満たない「当面」であると、明言した訳だ。
最終的にこれで民主党は「ブレていない」事が証明されたわけだが、それは同時に、「進化していない。」事を自ら認めた事に他ならない。
「向上心の無い奴は、馬鹿だ。」と言う台詞は、はて、夏目漱石の「こころ」だったっけ、「三四郎」だったっけ。
『民主党の鳩山由紀夫代表は29日、海上自衛隊によるインド洋での米艦船などへの給油活動について、「基本的に延長しないというのが私たちの立場だ」と述べた。』と言うから、一寸疑う余地が無い。まあ、予想された通りといえば、予想された通りなのだが。
先に報じられていた「政権獲得後も当面は継続する考え」と言うのは、来年1月までの僅か半年に満たない「当面」であると、明言した訳だ。
最終的にこれで民主党は「ブレていない」事が証明されたわけだが、それは同時に、「進化していない。」事を自ら認めた事に他ならない。
「向上心の無い奴は、馬鹿だ。」と言う台詞は、はて、夏目漱石の「こころ」だったっけ、「三四郎」だったっけ。
<注釈>
(※1)と言うことは、政府を揺さぶるためだけのインド洋上給油活動阻止と言うのが、如何に「非現実的」であったか、と言うことだな。
(※2)方針の変更を、自民党の場合は「ブレた。」と言い、民主党の場合は「進化した。」と言うのは、ダブルスタンダード以外の何物でもない。
問題とすべきは、どの方針が何故変更になったか、その妥当性であって、方針変更自体が自動的に悪になったり善になったりするはずがない。
そういう意味で、民主党の「方針変更」は「政権奪取のため。」と理由が明らかなのは結構だが、私には全然「妥当」とは思えない。
政党が政権奪取を目指すのはかまわないが、それは政権を奪取した後に実現したい政策があり、その政策実現のための手段が政権奪取のはずだ。
政権奪取が自己目的化してしまっては、「二大政党制」だろうが多党連立であろうが、民主主義の実現には程遠くなろうと言うものだ。
(※1)と言うことは、政府を揺さぶるためだけのインド洋上給油活動阻止と言うのが、如何に「非現実的」であったか、と言うことだな。
(※2)方針の変更を、自民党の場合は「ブレた。」と言い、民主党の場合は「進化した。」と言うのは、ダブルスタンダード以外の何物でもない。
問題とすべきは、どの方針が何故変更になったか、その妥当性であって、方針変更自体が自動的に悪になったり善になったりするはずがない。
そういう意味で、民主党の「方針変更」は「政権奪取のため。」と理由が明らかなのは結構だが、私には全然「妥当」とは思えない。
政党が政権奪取を目指すのはかまわないが、それは政権を奪取した後に実現したい政策があり、その政策実現のための手段が政権奪取のはずだ。
政権奪取が自己目的化してしまっては、「二大政党制」だろうが多党連立であろうが、民主主義の実現には程遠くなろうと言うものだ。