報じられているのは自称「環境保護団体」実態鯨類愛護団体のグリーンピース(略称GP)が、捕鯨国間の鯨肉貿易が「ひそかに」増加していると指摘している、と言うもの。 にほんブログ村
  
 しかし、良く読むと記事と言い、GPと言い、支離滅裂だ。
 
>日本は、ワシントン条約で禁止された鯨肉貿易の解禁を求めている。
>日本は2008年に、鯨肉の輸入を20年ぶりに再開した。

 上記の2行は単純に考えれば矛盾する。矛盾しない解釈としては、以下のいずれかなのだと推論できる。
 
①日本が再開した鯨肉の輸入は(小規模すぎるか何かで)鯨肉貿易に当たらない
②日本は鯨肉輸入に関する限り、ワシントン条約を破ることにした。

 もし上記①の解釈ならば、GPとワシントン条約では鯨肉貿易の定義が違うことになる。まあ、ありそうなことではあるが。
 記事としては、何れの推論が正しいのか、明示するのが望ましい、と言うべきだろう。
 
 それに続くパラグラフでは、アイスランドもノルウエーも日本への鯨肉輸出拡大に意欲を示しており、成る程「鯨肉貿易」は拡大傾向のようだが・・・これって、「ひそかに」なのか?
 GPが声高に指摘しなければニュースにもならなかったろうという点では「啓蒙」としての価値はあるのだろうが、ノルウェーの企業もアイスランドも、鯨肉貿易拡大の意図を隠しているようには見えないのは・・・気のせいだろうか。
 
 極めつけはGPノルウェー支部のTruls Gulowsen氏のコメントだろう。
>「こうした傾向は、捕鯨産業の絶望的な状況を示している。
>ノルウェー国内で販売しきれないため、海外でなんとか売りさばこうとしているのだ。
>だが、日本人も年々鯨肉を食べなくなっており、自国で捕獲した分の鯨肉が余っている状況だ」

 意図的に3つに分けたのだが、先ず最初のパートは「鯨肉貿易の拡大傾向は捕鯨産業の絶望的状況を示す。」と断じている。本当ならばGPにとって願ったり適ったりなのだから、なにも「鯨肉貿易の拡大傾向」に異を唱えることはないはずだ。
 
 真ん中のパートは、「ノルウエー国内で鯨肉が消費されないから海外貿易に活路を見いだしている。」との説を唱える。成る程これは、鯨肉貿易拡大の原動力となりそうだが、同時に鯨肉による外貨獲得=捕鯨産業の活性化にも繋がるだろうから、これだけでは「捕鯨産業は絶望的状況」とはとても言えない。
 
 最後のパートで上記ノルウエーが輸出先としようとしている日本で「自国で捕獲した分の鯨肉が余っている状況だ」から捕鯨産業は絶望的だ、と断じている・・・らしい。
 
 おわかりだろうが、矛盾している。
 
 そもそも、日本で鯨肉が余っているのなら、いくら日本が世界屈指の金持ちだからって、わざわざ鯨肉を輸入する必要がなく、鯨肉貿易、少なくとも日本の鯨肉輸入量が増える理由がない。
 
 GPの指摘が正しく、鯨肉貿易量が増えているのならば、日本は鯨肉に不足しているからノルウエーやアイスランドの鯨肉を輸入している筈だ。この場合報道が正しければ、アイスランドなんぞ捕獲予定数の半分を輸出に廻すそうだから、日本の鯨肉輸入は大いに期待される所だろう。だとすると、今度は捕鯨産業は絶望的どころではなくなってしまう。
 少なくとも鯨肉貿易量の増加は、アイスランドやノルウエーの捕鯨産業にとって順風。ひょっとすると、神風かも知れない。
 
 従って、このGPノルウエー支部の誰やらの言うことは、さっぱり要領を得ない。
 
 まあ、GPらしいと言ってしまえば、それまでだが。