報じられているのは、昨日「スマートパワーとはこの程度か URL: http://blogs.yahoo.co.jp/tiger1tiger2stiger/27170749.html」
に引き続いてのヒラリー・クリントン米国務長官。ワシントンDCで開かれた記者会見に於いて、豪州が中国と接近して居ることでアメリカの影響力が相対的に落ちるのではないかとの豪人記者の質問に対し、「中国のような国がますます成功し、インドネシアが非常に成功した民主国家となっている事実は、太平洋地域全体にとって望ましいことだ。」と中国を(インドネシアと共に)持ち上げた上で、
>「米国は太平洋を横断する勢力であり、大西洋を越えた勢力なのだ」と述べ、
>「オーストラリアにも他の国と同様、米国は太平洋を誰にも譲らないということを知っておいてほしい」とけん制した。
と報道は言う。
 
 直接書かれていないが、牽制した相手は「豪人記者」もさることながら、豪州に接近し、太平洋の影響力を拡大しようとしている中国であることは、まず誰の目にも(※1)明らかなところだろう。

 昨日記事にした「インターネットで北朝鮮に抗議しよう。」と言う府抜けた講演とはうって変わった明確な意思表示なのは、女子大生相手と外国人記者相手という、相手の差、なのだろうか。
 
 「米国は太平洋を誰にも譲らない」と言うことは、取りも直さず「太平洋は米国の物だ。」と同義であり、「米国は太平洋を横断する勢力であり、大西洋を越えた勢力なのだ」と言う宣言と併せると、太平洋と大西洋共に「マーレ・ノストロ=我らが海=内海」と改めて宣言したことになる。
 元合衆国大統領候補候補・現国務長官の発言だから、ただの新聞ネタで済んでいるが、オバマ現職大統領の発言だったら、中国に対する「機会均等(※2)」を求めた「門戸開放宣言」にも比肩しうる重大な内容であり、「両洋艦隊」あるいは「3年計画艦隊(※3)」何て懐かしい物まで想起させてくれる宣言だ。
 
 最近空母取得への動きがかますびしい中国にしてみれば、看過しがたい発言ではなかろうか。
 
 無論、ヒラリー・クリントン国務長官の発言が、「3年計画艦隊」とは言わないまでも、それ相応の海軍力整備と言う裏打ちを持っている限り、だが。原子力空母や原潜艦隊と言う海軍力の核心部分こそ相応に意を用いている米海軍であるが、最新鋭ミサイル駆逐艦DDG-1000が現有ミサイル巡洋艦CG以上の大きさを持ちながらDDGの資格を疑われたり、非対称戦争や海賊相手なら良かろうが、他ではあまり役に立ちそうにないLCS何て艦を開発したりしているので、少々心配なところではある。
 
 翻って我が国の立場からすると、日米安保でアメリカと同盟を組む海軍国・海洋国として、自由な貿易を求める同志として、アメリカの太平洋並びに大西洋マーレ・ノストロ化は歓迎できるところである。
 
 さらに想起されるのは、
 今、太平洋が「アメリカの海」であるのは、日本が大東亜戦争(太平洋戦争)に敗れたからである。
 その日本が今、太平洋が「アメリカの海」である事を歓迎できるのは、「アメリカの海」が皮膚の色に係わらず自由に交易できる「自由の海」であり、White Pacific(白い太平洋=白人に支配された太平洋)ではないからである。

 アメリカが、今からすると人種的偏見に満ち満ちたWhite Pacific何て物を夢想しなかったら、日米開戦は避け得たのじゃなかろうか。それが結果としてより良い事であったかどうかは別として。
 
 そのアメリカが、女性ならぬが有色人種を大統領に頂き、White Pacificならぬ自由な太平洋をマーレ・ノストロ化するとしたら?
 
 「我々日本人は、太平洋戦争には敗れたが、大東亜戦争には勝った。」などという、半ば負け惜しみの冗句が、輝いてくるのではなかろうか。


<注釈>
(※1)日本のマスコミやら媚中派やらの明きメクラでもない限り。
(※2)と言えば聞こえは良いが、中国大陸植民地化・分割支配の機会均等だ。
(※3)海軍休日直前に米国で建てられた、戦艦10隻・巡洋戦艦6隻をはじめとして計155隻の艦艇を3年間で建造すると言う大建艦計画。日本の八八艦隊(戦艦8隻・巡洋戦艦8隻をこちらは八年かけて建造)のカウンターパート。