意外なようだが、歴史をひもとくと、独裁者の多くは人気取りに汲々としていることが判る。
 古くは古代ローマの皇帝たちは、ローマ市民に如何に「パンと見せ物」を(無料で)供給するかに腐心したし、近くはドイツのナチス党は、第1次大戦後の恐慌にあえぐドイツで「社会主義的経済政策」と人種優越論=反ユダヤ主義を標榜して人気を獲得した。
 「独裁者」と言うぐらいだから、勝手気儘に権力を振るって何のおとがめもなさそうなモノだが、存外大衆迎合策には余念がない。逆に大衆に迎合している輩や機関には要注意、と言うことでもあるのだろう。
 
 さて、北朝鮮は金王朝の2代目(まだたった二代だよ。)「将軍様」こと金主席は、先代以来ずーっと「投票率100%で支持率100%」何て言う茶番選挙を続けて居るんだから、押しも押されもせぬ、正真正銘掛け値無しの「独裁者」だろう。
  
 報じられているのは、その「独裁者の目に涙」と言う提灯記事。 
 何でも、今回の北朝鮮の自称「人工衛星打ち上げロケット」の発射「成功」の際に、将軍様、「このロケット開発のために、民衆の暮らしに廻す予算を削らざるを得なかったことを悔いて涙を流した。」と言うことである。
 
 ある意味まともな反応であると言えよう。何しろ一説には今回の発射試験にかかった金額だけで、北朝鮮の食料援助一年分が賄えると言うから、今回の発射試験を取りやめれば、北朝鮮は今年一年食料援助にたよらなくて良かったはずだ。

 その大金を敢えて「発射実験」に投入するという決断の責任は、北の最高権力者である将軍様以外の何者にも持って行きようがない。拉致事件みたいに「部下が勝手にやった。」としらを切る訳にもいかない。
 後悔するのはある意味当然ながら、後悔するぐらいなら端から「発射実験」なんぞ強行せず、国民に食料の一つも買ってやれば良いだけの話である。
 それを「発射実験」強行した挙げ句に「後悔の涙を流している。」と言ったところで、見え透いた人気取り以外の何者でもあるまい。

 「(北朝鮮の)人民も判ってくれる」かどうか、私は知らない。
 私にわかるのは、私なら「わかて」なんぞやるものか、ということだけだ。

 国民の食料をユスリとタカリでまかなっていて、強盛大国もないもんだ。