先日は人工衛星同士が衝突するという滅多にない事件(事故)が報じられたが、今度は英仏の潜水艦同士の接触事故が報じられている。
 ニュースのタイトルは「衝突事故」だが、敢えて「接触事故」とした所以は、「両潜水艦は衝突で損傷したものの、原子力部分への損傷の報告はないという。」「両潜水艦は非常に低速で接触し、負傷者は出ていない」と言う報道を一応信じたことと、事故の当事者たる英のVangard級と仏のLe Triomphant級が共にSSBN即ち戦略ミサイル原潜である事による。つまりただの原子力潜水艦ではなく、(米海軍なんて、原潜でない潜水艦がない)SLBM潜水艦発射弾道弾を擁する原子力潜水艦であり、「運命の日」には搭載した潜水艦発射弾道弾を祖国に仇為す国に対して叩き付けるという重大な任務を負った潜水艦である。故に、高速性よりも隠密性、静寂性が求められる潜水艦であり、原子力推進という強大なパワーも高速発揮よりも長時間潜航に利用される艦種である。
 平時の通常任務で、高速を発揮していて居るという可能性は低い。
 両艦とも低速で隠密航行中に互いの存在を探知出来ず、ついには接触事故に至った、と考えるのが、最もありそうなケースと思うが、如何であろうか。

 因みに手元もメモによる両艦の諸元は以下の通り。
 似たような諸元である。
 
英 Vangard級SSBN
;満載排水量;15,980t(水中)
;全長;149.9m
;主機;原子力
;速力;25kt(水中)
;兵装;トライデントD5 SLBM×16(射程12000km 核弾頭最大12個),533mm魚雷発射管×4

仏 Le Triomphant級SSBN
;満載排水量;14,335t(水中)
;全長;138m
;主機;原子力ターボ・エレクトリック 
;速力;25kt(水中)
;兵装;M45 SLBM(射程6000km)/M51(射程8000km 4番艦のみ)×16 、533mm魚雷発射管×4
;同型艦;3隻(4番艦は2010年就役予定)