報じられているのは、中国製鉄道車輌の不買運動をフランスの鉄道車輌メーカ アルストム・トランスポール(Alstom Transport)社が訴えているというもの。同社は世界第2位の鉄道車輌メーカと言うことで、商売仇の牽制という意味も当然あるのではあろうが、注目すべきはその不買運動の理由だ。
 「北京(Beijing)と上海(Shanghai)を結ぶ新たな高速鉄道に使用する車両の入札では、すべて中国国内で設計・製造された仕様を求める条件が含まれていた」「中国以外で使用しないことを条件に海外メーカーが提供した技術を、中国が一部転用して製造した鉄道車両の輸出も行っている」即ち外国メーカの原則締め出しと、外国メーカからの技術強制移転を条件にしていると言うことだ。
 同報道にもある通り、また先に記事にもしたとおり、中国政府は米国発金融危機以来の景気刺激策として、大々的な鉄道網拡大を打ち上げており、この「ビジネスチャンス」に外国メーカが色めき立っているであろう事も想像に難くはない。
 無論ビジネスなのであるから、中国政府この条件を呑んででもこのビジネスチャンスを捉えようとするメーカもあることだろう。この機会に外国メーカの技術を絞れるだけ搾り取ろうという中国側の狡猾さは、感嘆に値するかも知れない。
 
 さて、我が日本及び日本メーカとしては、これをどう考えるべきか?
 
 いくら中国が「世界の工場」と息巻いても、自動車や鉄道車輌では大した輸出実績はない。
 が、輸出しようと言う意図は上記の高速鉄道にせよ、カナダはボンバルディア社との技術提携にせよ「やる気満々」と言ったところだ。http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=0228&f=business_0228_007.shtml
 
 金融危機のあおりを喰らって居るであろう日本メーカにして見れば、中国の鉄道網大拡充は喉から手が出そうなほどの「ビジネスチャンス」かも知れない。

 だが、忘れるべきではない
 彼ら、中国人の意図は「日本の技術を導入し、日本よりも安く鉄道を世界に輸出すること。」であり、技術提携は日本メーカのライバル育成に他ならない。
 また中国でのビジネスが、極めて恣意的な法解釈或いは法体制そのものの上に成り立っており、何かの拍子で「反日暴動」でも起きた日には、現地法人を丸ごと失いかねない可能性があるし、今後その可能性は高まると言えよう。
 
 敵に塩を送るものである、と言う覚悟の元で、敵に塩を送ってもなお、その先を行くと言う目処が立たない限り、「ブーメラン効果と言うが、ブーメランが帰ってきたときそこに日本は居ない。」と言う状態を継続できるという目論見がない限り、日本及び日本メーカは、この中国の鉄道網拡大に参画すべきではない。
 
 そうは言っても背に腹は代えられないと言うのが、ビジネスというものであるとは承知しつつ。