報じられているのはベルギーの貨物機墜落事故について、ベルギーの運輸当局が隼の一種「アメリカチョウゲンボウがエンジンに吸い込まれたことが事故原因だったと発表した。」と言うもの。乗客も地上の住民も負傷者無しと言うのはご同慶の至りだがしかし疑問が大いに残る。
 まず写真とキャプションにも在る通り、墜落したのはボーイングのベストセラー、ジャンボジェットの貨物機型で、こいつは押しも押されもせぬ4発機だ。飛行機という物は双発機なら片発停止しても無事着陸できるように作るのだから4発のジェンボ貨物機がエンジンの一つを失ったとて、いきなり墜落するとは思われない。離陸上昇中であるから、飛行機としては最も推力の必要な事態では在ろうが1発停めたところで推力の低下は25%に過ぎない。上昇率は落ちても、水平飛行なら出来そうなものだ。

 すると、複数のエンジンが同時に隼を吸い込み、エンジン停止したのだろうか?
 2発停止は離陸中なら確かに辛そうだ。水平飛行中で両舷1発ずつの停止なら、4発機が双発機に化けただけで、速度は落ちても着陸は出来るだろう。4発機の強みだ。(*1)
 片舷2発停止だとさしもの4発機も相当辛い。3発停止ならまずお手上げだが・・・隼の一種であるアメリカチョウゲンボウなる鳥を、2羽も3羽も別のエンジンに同時に吸い込むなんて事が、そうあるのだろうか。
 隼は猛禽類だ。私の知る限り、猛禽類は群を作って飛ぶなんて事は滅多にない。私になじみ深い猛禽類というと鳶だが、大概一羽で高空を旋回し、ロイタリングしている。
 ジャンボの翼幅は40~50mか。ブリュッセル空港の滑走路が何本在るか知らないが離陸コース着陸コースは風向きが決まればほぼ一意に定まる。このコースの両側各30mの帯に、タイミング良く複数のアメリカチョウゲンボウが、テロリストよろしく狙ったように次々突っ込んでくるなんて事が、そうあるのだろうか?

 4発のエンジンの内1発がアメリカチョウゲンボウを吸い込んで停止した際、パイロットが(コパイロット共々)パニックを起こして墜落した、原因の半分はパイロットにあると考える方が、筋が通らないか?

 今回の事故は幸いにして乗員全員無事だ。当のパイロットにとっては少々厳しいかも知れないが、事故再発防止のためにも、真の事故原因を究明すべきだろう。

 コクピットの風防ガラスへのバードストライク試験というのが在るんだから、鳥吸い込みエンジン停止のパイロット訓練って出来ないだろうか?エンジンをソフトだけで模擬するフライトシミュレータなら、ある程度やれそうだが。

<注釈>

(*1):4発の戦略爆撃機、同じボーイング社のB-29は極めて撃墜しにくかった。日本陸軍のトップB-29キラーが終戦の際、「我が人生でB-29の撃墜ほどの難事はないだろう。」との感慨を抱いたという。
 まあ、4発機だから、だけではないのだけれど。(高度も・・・速度も・・・防御砲火も・・・防弾も・・・我が迎撃体勢も・・・)