「言うだけだったら、何とでも言えるわなぁ。」と言うのは、岡部ださくこと岡部いさく氏の得意のフレーズ。
 報じられているのは、「グローバルゼロ」なる核兵器の廃絶を目指す新たな運動がパリで発足し、「旧ソ連のミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Gorbachev)元大統領やスウェーデンのカール・ビルト(Carl Bildt)外相、ジミー・カーター(Jimmy Carter)元米大統領、バングラデシュのノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏、南アフリカのノーベル平和賞受賞者デズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大司教、アラブ連盟(Arab League)のアムル・ムーサ(Amr Moussa)事務局長らが署名した。」と言うから、なかなか仰々しい。
 同報道は、グローバルゼロのホームページも紹介して「有識者らが署名したものと同じ宣言文に誰でも署名することができる。」と締めくくっているから、記者の意図は明白だろう。

 「あなたも、有名人と同じ核兵器廃絶運動・グローバルゼロに署名しよう。」と言うわけだ。
 
 だが、タイトルに岡部いさく氏の名科白を引用したとおり、「言うだけだったら、何とでも言えるわなぁ。」である。明きメクラでないのなら、現実をしっかりと認識すべきだろう。

 同時並行開催中の6カ国協議では、北朝鮮のあるか無しかの核兵器一つ、放棄の検証さえままならないではないか。一体何をどうするというと、数千発の核兵器を擁する米露中を含む各国間及び公式には核兵器を持っていない(けれど実は持っている)国々に、「目標の日程までに核兵器を廃絶するため、検証可能で拘束力を伴う合意」が出来るというのか。

 さらに言うならば、「核兵器のない世界」は一見良さそうに思えるが、私にはとても理想世界とは思えない。
 「核兵器のない世界」は、世界中のただ一国が核兵器を持った場合、その国が全世界を支配しかねない世界であろう。
 それが我が国だ、と言うのならまだしも。世界中で北朝鮮だけがか核兵器を保有するという世界を、想像してみるが良い。
 
 いずれにせよ、この「グローバルゼロ」。従来の核兵器廃絶運動と同等以上の効果は期待できない。
 
 即ち、北朝鮮の「核実験」も、イランの核開発も、阻止できるものではない。

 「グローバルゼロ」宣言に署名して、自己満足するのも結構だが、呪いやスローガン以上の効果は期待できないことは、自覚すべきであろう。