報じられているのは、ロシアの戦略ミサイル軍司令官が「宇宙空間配備のミサイル防衛システムによる攻撃を回避するミサイルをロシアが開発中」と語ったというもの。
 「宇宙空間配備のミサイル防衛」とは、かつてSDIと言われていた頃のレーザー砲衛星や、レーザを四方八方に発射しながら自爆する衛星を思い出させるが、今の米国のミサイル防衛にはこれらの構想はないはずなので、何のことを言っているのかよく分からない。
 ひょっとすると地上発射・艦上発射の弾道弾防衛用ミサイルは宇宙空間で迎撃するものもあるから、それを指して「宇宙配備」と言っているのかも知れない。
 いずれにせよそれを「回避するミサイル」と言っているのだから、単純な弾道飛昇ではなく、何らかの機動を自律的に行うことで、ミサイル防衛=地上/艦上発射ミサイルによる迎撃もしくは航空機からのレーザ照射を失敗させると言うことだろう。
 これによって、現在配備或いは構想中の米国のミサイル防衛は、ある程度威力を減じられるかも知れない。
 「だからミサイル防衛は無用である。」と言う人もまた勢いづきそうだが、そいつはひいき目に見ても早計というものだ。
 「米国は宇宙空間が武力衝突の舞台となる可能性を真剣に考慮しており」などとこの司令官、アメリカが悪いと言わんばかり、と言うかはっきり言っているのだが、弾道弾、特に中距離以上の弾道弾が宇宙空間まで飛び上がって落ちてくるのだから、これを迎撃しようとしたら、宇宙空間で迎撃した方が安全かつ成功率が高いのは当たり前。
 それを「宇宙を戦場にするな」と言うのは、一見平和的なように見えて実は「一度こちらが発射した弾道弾を、迎撃するんじゃない。おとなしく撃たれろ。」と言っているのに等しい。どこが平和的なものか。

 それにしても、米国のミサイル防衛に対して、自国もミサイル防衛を開発するよりも、弾道弾の開発に注力するというのが、いかにもイワンである。