1.08/11/12(水) 田母神前幕僚長国会招致
 ラジオの報道も聞いていたし、テレビも横目でぐらいは見た。だから世の中の田母神前空幕長叩きもある程度知っていた筈なのだが・・・今回改めて大新聞4社(毎日、読売、朝日、日経の4社)の社説を読んで、慄然とした。
 何故慄然としたかは、後で縷々述べるとして、まずは4社の11月12日付社説と、私のつけたコメント(突っ込み)をご覧あれ。

1-1.毎日社説:前空幕長招致 隊内幹部教育の実態究明を

 戦前の日本の植民地支配と侵略を正当化し、政府見解に反する論文を発表した田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が、参院外交防衛委員会に参考人として招致された。

 田母神氏や浜田靖一防衛相に対する質疑で、現在の文民統制(シビリアンコントロール)の危うさと自衛隊内教育の問題点が浮き彫りになった。

 田母神氏は空幕長就任直後、航空自衛隊の隊内誌「鵬友」に論文と同様の趣旨の文章を掲載していたが、浜田防衛相は「チェックしていなかった」と述べた。(※1)

 また、田母神氏は空幕長だった1年7カ月の間、頻繁に基地を視察し、隊員らに講話・訓話を繰り返していた。今年1月の熊谷基地(埼玉県熊谷市)での講話について同氏は「内容は論文に書いたのと一緒だと思う」と語ったが、防衛相は講話をすべて確認しているわけではないと述べた。

 今回の論文だけでなく、文章や発言で同様の歴史認識を繰り返していたのに、これを防衛相が把握していなかったのは論外である。(※2)

 田母神氏は、論文が問題になったことについて「今回は多くの人の目につき騒がれたからだ」と語った。従来の主張をしているのに、報道されたために更迭された、というのだ。特異な主張をする人物として防衛省内で知られていた人物を空自トップの座に据えた安倍政権、それを引き継いだ福田、麻生政権では、文民統制が機能していなかったと言わざるを得ない。(※3)

 委員会では、田母神氏が統合幕僚学校長時代に設置したカリキュラムの問題も取り上げられた。

 統幕学校は、陸海空各自衛隊の1佐、2佐クラスを対象にした、将官・上級幕僚への登竜門である。

 同校に04年度に新設された「歴史観・国家観」講座は現在も続いている。02年12月から04年8月まで校長を務めた田母神氏は「私が設けた」と述べた。講義は外部講師が中心で、防衛省の資料によると、教育内容に「大東亜戦争史観」「東京裁判史観」などが並ぶ(※4)。

 防衛相は「中身は把握していない。確認したい」と述べた。防衛省は講師名を発表していないが、田母神氏と同様の主張が幹部教育の場で行われていたのではないかとの疑念がわく。

 もしそうなら、偏った歴史観を持つ自衛隊幹部が量産され、第2、第3の田母神氏を生む仕組みが作られていたことになる。早急に調査し、是正策を取るのは麻生内閣の責任である。(※5)

 与野党にはこの日の参考人招致は新テロ対策特措法改正案を処理するための「儀式」と受け止める向きもある。これを反映したのか、民主党の追及に迫力は今ひとつ感じられなかった。

 しかし、文民統制の問題も隊内教育の疑惑も解明されたとは言い難い。麻生太郎首相が出席した審議は必須である。田母神氏再招致も検討してしかるべきだ。

毎日新聞 2008年11月12日 東京朝刊


http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081112ddm005070105000c.html


<ブログ管理者注釈>

(※1) つまり自衛隊外への公表ばかりでなく、自衛隊内の訓話も全てチェックし、政府見解たる「村山談話」に沿っていなければならないと、毎日は主張しているわけだ。
 1984,1984・・・・Big Brother is Watching You.
(※2) ・・・・言葉も無い。言っている事が判っているのか。防衛大臣はその責任で以って村山談話に示されている大日本帝国悪玉論の強制を、徹底しろと、言っているのだぞ。
 毎日の記者の質が落ちている、とは先の変態英文記事でも示されていたが、まさか此処まで腐っているとは。
(※3) 先述の村山談話強制徹底に比べればかわいいものだが、此処では大日本帝国擁護論者は空幕長にするな、と。思想信条で差別しろと、堂々と抜かしている。
(※4) 両論併記しているだけ、少なくとも毎日のこの社説よりはるかにましであろうに。
 「一書に曰く」と異説を認め、併記するのは、日本書紀にもあるところ。古人の知恵さえも、ないがしろにするか、毎日よ。
(※5) 田母神氏は、その主張を絶対視していない。異説を認め、議論の対象とする以上、第2第3の田母神氏は、登場して当然で、登場しても何も問題ない。
 民主的な歴史観を持つ自衛隊こそ、最強なのである。


1-2.読売社説 前空幕長招致 「言論の自由」をはき違えるな(11月12日付・読売社説)
 つい先月末まで自衛隊の最高幹部を務めていた人物とは思えないような発言が相次いだ。

 田母神俊雄・前航空幕僚長は参院外交防衛委員会での参考人招致で、終始、「我が国が侵略国家というのは濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)だ」などとする自らの懸賞論文の内容を正当化しようとした。(※1)

 「私の書いたものは、いささかも間違っていないし、日本が正しい方向に行くために必要だ」「日本には、日本の国が悪かったという論が多すぎる。日本の国は良い国だったという見直しがあってもいいのではないか」(※2)――。

 昭和戦争などの史実を客観的に研究し、必要に応じて歴史認識を見直す作業は否定すべきものではない。だが、それは空幕長の職務ではなく、歴史家の役目だ。(※3)

 自衛隊員に対する愛国心教育は必要としても、過去の歴史を一方的に美化することを通じて行うことではあるまい。

 田母神氏が身勝手な主張を続けることは、むしろ防衛省・自衛隊が長年、国際平和協力活動や災害派遣で地道に築いていた実績や国内外の評価を損なう。(※4)

 集団的自衛権の行使や武器使用権限の拡大など、安全保障上の課題の実現も遠のきかねない。(※5)

 こうした冷静な現状分析を欠いていること自体、自衛隊の指揮官としての適格性のなさを露呈していると言わざるを得ない。(※6)

 田母神氏は「自衛官も言論の自由が認められているはずだ」「自由な議論も出来ないのでは、日本は民主主義国家か」と、「政府見解による言論統制」を批判した。

 「言論の自由」を完全にはき違えた議論だ。一私人なら、日本の植民地支配や侵略を認めた村山首相談話と異なる見解を表明しても、何ら問題はなかろう。

 しかし、4万5000人を率いる空自トップが政府見解に公然と反旗を翻すのでは(※7)、政府も、自衛隊も、組織として成り立たなくなってしまう(※8)。政治による文民統制(シビリアンコントロール)の精神にも反している。(※9)

 空自では、同じ懸賞論文に、隊員94人が組織的に応募していたことが判明している。田母神氏の指示はなかったとされるが、徹底した事実関係の調査が必要だ。(※10)

 自衛隊幹部は、軍事的知見や統率力に加え、高い見識、広い視野とバランス感覚が求められる。(※11)

 防衛省は、自衛隊の幹部教育や人事管理(※12)を抜本的に見直し、検討中の省改革の計画に的確に反映すべきだ。それが国民の信頼回復につながる道だ。

(2008年11月12日01時49分 読売新聞)


http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081111-OYT1T00871.htm?from=any


<ブログ管理者注釈>

(※1) 田母神氏は、自らの歴史認識に従って従来の主張を繰り返しただけだ。歴史認識の相違を更迭の理由にする事から間違いなのだから、田母神氏は「正当化」等する必要は無い。
(※2) 何が問題なんだ?ましてや今や田母神氏は市井の人だ。大手を振って持論を展開して、何の咎があるものか。
 それとも、更迭された事を反省し、おとなしく村山談話を受け入れろとでも言うのか?そうする理由は、全く見当たらないが。
(※3) 異議あり。歴史観が社会艦の根幹をなす以上、歴史認識を自ら構築するのは、民主主義国家の国民の義務である。勿論田母神氏も自衛官であったころから一国民だ。
 大体、歴史認識などという極めて個人的な思想を、学者に任せて事足りるなどと言う知的怠慢では、商売としての物書きは勤まるまい。
 まあ、新聞記者は「物書き」ではなくなっているのかもしれないが。
(※4) 逆だな。長年の実績あればこそ、あの箸にも棒にもかからない「政府見解」たる村山談話を脱却できるのだ。
(※5) おやおや、村山談話を強制され、思想を統一された自衛隊なら安心だから武器使用権限も集団的自衛権も拡大できる、と言いたいのか?
 なるほど、そんな腰抜けの自衛隊なら、集団的自衛権も、武器使用権限も、あっても使えない、と言う訳か。
 あっても使えない権限(今の集団的自衛権はまさにそうだが)なぞ、無いも同じだろう。
(※6) つまり、おとなしくしていればよかったのに、と言う「忠告」のつもりか。
(※7) 歴史認識という社会認識の根源を、政府が規制しようと言うのがまず図々しい。
 「公然と反旗を翻す」と息巻いているが、田母神氏は大日本帝国擁護論を絶対視などしていない。
 政府見解を絶対視し、それへの異論を排するとは、読売こそ「発行部数世界一」の新聞社かと問いたい。
(※8) 歴史認識を統一しないと機能しないような政府なら解体すべきだし、軍隊なら負け戦決定だ。
(※9) 文民統制には範囲がある。外交・開戦・休戦・大戦略と言う上位レベルこそ文民が決定すべきだが、下位レベル軍人に任せるべきだ。
 況や軍人の思想を統制する権利など、文官だろうが天ちゃんだろうが、ありはしない。(※10) 自衛官は懸賞論文にも応募するなと言う事か。戦前の帝国海軍がSilent Navyでありすぎたと言う批判を知らないか。
(※11) そのバランス感覚のためにこそ、歴史認識は議論の対象とすべきである。増してや、われらの先人たる大日本帝国を貶める事しか許さないような状況は、絶対に改善すべきである。
(※12) 思想・信教の自由など吹き飛ばせ、と言うわけだ。それでもマスコミか。