ゼロからの物語3
隆弘が2つの世界を行き来して半年がたった。
この長い間に隆弘にはたくさんの思い出ができていた。
陸と転校生の伊藤 ミサと一緒にピクニックに行ったこと。
そこで陸が川に頭から落ちて大笑いしたこと。
それが原因で大喧嘩したこと。
仲直りのしるしに一生一緒にいようと約束を交わしたこと。
ミサと遊園地に行ったこと。
手をつないでお化け屋敷にはいり、あまりの怖さに気絶しそうになったこと。
数え切れないほどの思い出が隆弘の中に残った。それは隆弘の宝物になった。
そんな幸せな日々をすごしていた隆弘に、ついに異変が起きた。
いつも7時には現実世界にもどっていた。しかし今日はなぜかもどれなかった。
隆弘は不思議に思ったが、べつに問題はないだろうと思い、帰らなかった。
そんな日が一週間も続いたのだ。さすがにおかしいと思った隆弘は陸やミサに相談してみた。
陸もミサも最初は知らないと言っていた。しかし隆弘の困った表情を見て、ミサが言った。
「実はね、隆弘には隠していたけど、この世界になんども来てるともどれなくなっちゃうんだよ・・・・。」
隆弘は「なんだよそれ!冗談だろ・・・?」と陸とミサにたずねたが、二人は黙ったままだった。
隆弘が頭をかかえていると、ミサが「でもね、一つ帰る方法があるの・・・。」と言った。
隆弘は「なんだよ、それを早く言ってくれよ。」とホッとした表情で言った。
「ずっとここにいてくれ・・・。」と陸が言った。
隆弘には意味がわからなかった。帰れるならそれでいいじゃないかと思っていた。
「んで、その方法ってのはなんなんだよ。」と隆弘が言った。
ミサは今にも泣きそうだった。「私達を忘れて、この世界を消せばいいんだよ・・・。」
ミサの言葉に隆弘は言葉も出なかった。
「なんだよそれ・・・・嘘だろ?!嘘だろ?!」
隆弘は嘘ではないということをわかっていた。
しかし、嘘だと言ってほしかった。
隆弘にとって苦渋の選択だった。現実世界にもどってみんなともう一回仲良くやりたいという気持ちが、隆弘の中には残っていたのだ。
しかし、陸やミサとも一緒にいたい。
すると「ずっと一緒だっていったよな?!」陸が泣きながら言った。
「陸、ダメだよ。隆弘には隆弘の世界があるんだから・・・。ずっと一緒なんてムリだよ・・・・。」ミサも泣きながら言った。
ふと下をみると、ミサの足がなかった。隆弘は何が起きたのかわからなかった。
「そろそろお別れだね。」ミサが言った。「ごめん。ずっと一緒にいたかったけど、もうダメみたいだ。」陸が言った。
隆弘は「おい!何が起きてるんだよ!なんで二人とも足がないんだよ・・・。」と言った。
隆弘の心の迷いにより、隆弘によって作られてた陸やミサに影響がでたようだ。
「私達はずっと隆弘の心の中にいるから。」 「オレだって一緒だぜ。困ったときはいつだって助けに行く!」二人が隆弘へ別れの言葉を言い出した。
「そんなこと言うなよ・・・・ずっと一緒だろ!」隆弘は涙で前が見えなかった。
だが、かすかに二人が消えていくのがわかった。
「じゃあね。また会えたらいいね。」 「じゃあな。約束破ったわけじゃねぇぞ。オレはいつもお前と一緒だ。ミサもこの世界のみんなはお前と一つだからな!」
隆弘は何も言えなかった。目の前の悲しい現実に何も言えなかった。
二人の姿はなかった。残ったのは二人の大粒の涙だけだった。
真っ白な世界がある。そこには隆弘が一人で立っていた。
「オレ、学校行くよ。」そう言って、真っ白な世界を後にした。
目が覚めた。さわやかな目覚めだ。
今日は始業式。新しく最上級生となる日だ。
チャイムが鳴った。みんなは体育館にいるようだ。
みんな新しいクラスになり、うきうきしながら教室へ入っていく。
チャイムがなり、みんなが席についた。ドアが開き、先生が一人の男の子をつれて入ってきた。
「みなさん、知ってると思いますが。一時期わけがあって学校には来ていませんでしたが、また来てくれることになりました。」
「一言いう?」先生に聞かれ、その男の子は深くうなずいた。
「神崎 隆弘です!よろしくお願いします!!」
教室へ響き渡る、大きな声だ。
すると一人の子が拍手をした。マサキだった。
そして教室中が拍手でいっぱいになった。隆弘は笑顔で席についた。
マサキが話しかけてきた。「ごめんな。いじめたりして・・・また友達になってくれるか?」
隆弘は「ゴメンっていうのはオレのほうだよ。ホントにゴメン!!また一緒に遊ぼう!」と言った。
そして二人は仲直りをした。
隆弘は空を見上げ陸とミサのことを考えながら言った。
「ありがとう。」
「ゼロからの物語」完。
ゼロからの物語2
隆弘が学校へ行かなくなって2ヶ月たった。
家でやることはゲームくらいしかなかった。さすがに毎日ゲームをしていたら誰だって飽きるものだ。
本を読んだりしていたが、やはりダメだった。
そこで、隆弘は毎日学校のことを考えた。マサキと遊んでいる様子や、授業を受けている様子などを毎日頭の中に描いた。
それは日に日にリアルなものになっていき、ついに音、色など全てのものが鮮明に描かれるようになった。
隆弘はあることを思いついた。それは自分で世界を創るということだ。
まず真っ白な世界を頭の中へつくった。そこには隆弘しかいない。
次に隆弘は何を創ろうか考えた。真っ先にでてきたのは、「友達」だった。
それは今、隆弘が一番ほしいものであり、一番大切なものだった。
白い世界の遠くから、一人の男の子が現れた。
年は隆弘と同じくらいで、身長は少し小さい。茶色っぽい髪の毛で、目はくりくりしていて、かわいらしい顔つきだ。
彼の名前は、小川 陸といい、この世界でできた初めての友達だ。
隆弘は陸と何を作ろうか話した。まず最初にでたのは家だ。
さすがに二人で暮らすのも現実味がないので、それぞれれに家族をつくった。
隆弘は、父と母の三人家族で、陸は父と母と妹の4人家族だ。
こうして、隆弘は次々に人や、建物をつくっていった。
この世界に来て、5時間がたったとき、そこは地球そのものとなり、現実世界と変わりなかった。
変わっていることといえば、隆弘に友達ができたことだ。
急に隆弘の世界が消えた。長時間の創造に隆弘は疲れてしまったのだ。
隆弘は焦った。もう二度と陸に会えないのだろうかと。
しかしその心配はいらなかった。夕食を食べたあと部屋にもどり、急いで布団に潜りこみ、あの世界を考えた。
すると目の前には陸がいて、「おかえり。」と一言いってくれた。
ホッとして、笑いながら「ただいま。」と陸に返した。
どうやら隆弘は現実世界と、この世界を行き来できるようだ。
このことに気づいた隆弘は現実世界へもどり、疲れた頭を休めるため寝た。
続く。
~ゼロからの物語~
なにもない世界。
全ては真っ白。
そこに一人の少年がいる。彼は小学校5年生くらいの子だ。
この世界には彼しかいない。そう、ここは彼の頭の中の世界だ。
彼の名前は 神崎 隆弘。普通の男の子だ。
学校ではそこそこの人気があり、友達もたくさんいた。
しかし、今は一人もいない。今、隆弘を友達と思うのは世界に一人もいないわけだ。
なぜ友達がいなくなったのか。それはちょっとした嘘から始まったことだった。
ある日、隆弘が学校に登校しているときのことだった。
親友の 宇野 マサキが隆弘に声をかけた。
「おはよう!」 隆弘もおはようと返した。
その日は隆弘の誕生日だった。しかしマサキは気づいてくれてはいなかった。
隆弘は少し気を落としながらも学校へマサキと向かった。
歩いている途中もマサキのほうを見ながら、気づいてくれオーラを出し続けている。
だがマサキは気づかないまま教室へ着いてしまった。
朝からブルーな隆弘は席に着き、1冊の本を取り出し、読み始めた。
マサキやほかの友達は黒板の前で話しているようだ。
チャイムが鳴り、先生が入ってきた。なぜか先生は怒り気味だった。
隆弘は嫌な予感がしていた。実は昨日、隆弘は一人の女の子を泣かせたのだ。
その子を泣かせた理由、それは「気持ちが悪い。」という単純で最悪の理由だった。
その子は前にも何回かいじめられていて、自殺まで追い込まれるほど大変なことになっていたらしい。
隆弘はそれを知っていたが、関係なくいじめたのだ。
気まずい雰囲気の中、先生が話し始めた。
「昨日、安藤さんの机に落書きをしたり、靴を隠した人がいますね?」安藤さんとは例のいじめられた子のことだ。
「正直に立ちなさい。」と先生は怒った口調で言った。
隆弘は思った。安藤には気づかれていないのだから、このままなら逃げ切れると。
するとマサキが立った。隆弘は驚いた顔でマサキを見た。
マサキもいじめには参加していたが、まさか正直に立つとは思っていなかった。
するとマサキに続き、1人2人とドンドン立っていき、ついに残るは隆弘だけになった。
隆弘は焦った。今まで先生に怒れれたことはなかったし、親にも怒られたことはなかった。
このままでは先生の信用をなくしてしまう。しかしマサキをはじめ、みんなが隆弘を見ている。
すると「さっきからみんなが隆弘君のほうを見ていますが、隆弘君はやったんですか?」と先生が言った。
「や、やってません。」隆弘は言った。
「わかりました。それでは今立っている人はこの後先生のところに来なさい。」そう先生は行って教室から出て行った。
みんなは先生のもとへ向かった。そして3時間目まで自習になり、マサキ達は帰ってこなかった。
隆弘はものすごい罪悪感に襲われた。今頃、先生のところへ行くわけにはいかないだろう。
とりあえず隆弘はみんなに謝ることにした。
4時間目になりマサキ達が帰ってきた。隆弘はマサキ達のもとへ行き「ごめん。」と言った。
しかし、聞こえてないかのように、マサキ達は振舞った。
隆弘は何回も謝ったが、マサキ達には届いてはいなかった。
この日から隆弘は友達がいなくなった。
周りからは「嘘つき隆弘」なんて呼ばれたり、酷いときは「あれ」だの「これ」だの人として扱ってはくれなくなった。
こうして毎日いじめられ、ついに隆弘は学校へ行かなくなった。
続く。
