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「ヤッさん」を読んで(原宏一 双葉文庫)〜路上生活の方々に関わりのある方と夢舞いランナーにおくります

ヤッさんは、元料理人のホームレス。しかし、ただのホームレスではない。元料理人ということもあり、銀座・築地の料亭の試食・批評・助言・仲介をしており、食のコーディネーターとして料理人から厚い信頼を寄せられている。
筋トレやランニングを欠かさない。ホームレスは健康が第一という信念を持ち、銀座・築地周辺をランニングで移動する。
とても人間味にあふれている。ホームレスといっても人にへりくだったところはなく、はっきりとものを言い、むしろ尊敬されている。単に世間から脱落したのではない。自分から世間に一線をひいて毅然として生きている(原作より引用)。人間関係は良好であり、むしろ人との関係性はたいへん魅力的である。ホームレスという行き方があっているのであろう。
この話はウソくさいところもあるが、主に現実的な社会問題を土台としてストーリーが展開されるので、どこかリアルにも感じられるのである。食べものを扱っていることから、孤独なグルメや深夜食堂に通ずるところもあるのだが、いまいちそういったはやりのグルメもの路線にのれないのはホームレスを扱っているからであろうか(テレビドラマにはなっている。)。
私がこの小説に惹かれる理由の一つに、夢舞マラソンの関わりがある。夢舞マラソンは、首都圏を信号待ちをし歩道を走る独特なフルマラソンの大会だ。銀座、築地、豊洲、というのは夢舞ランナーにとって馴染みのある場所である。ほぼ毎年コースは変わるのだが、銀座周辺は必ず通過する。
夢舞ランナーは、コンビニ前でたむろし、おにぎりやアイスを食べる。銀座の料亭とは関わりは少ないが、たいへん身近なのは銭湯だ。新宿、銀座近辺の銭湯はおさえてあるというランナーは多い。
小説に出てくる店を調べたが、どうやら実在しない店名がほとんどのようだ(モデルになる店はあるかもしれない。)。しかし、銭湯は実在する名前が出てきた。そのうちの一つ、k湯に行ってみた。番台に座る補聴器をつけたおばあさんに「この本を見てきました」と話しかけたが、「そうですか」で終わってしまった。
私はひと昔、都心の路上生活の方々に味噌汁とビラを配るボランティアをしたことがある。近年は、隅田川でもブルーシートの家はあまり目のつくところにはなくなってきたが、当時は今より多かった。その多くは男性だが、中には若い女性もおられた。まだネットカフェ難民ということばがなかった頃だ。その女性がそれと知ると、こういっては何だかドキッとした記憶がある。そのボランティアをどのくらい続けただろうか。多くの方は同じ場所におられいくらかは会話を繰り返したが、私との会話が弾んだことや私のことを気にとめてくださることはほとんどおられなかった。
そのボランティアをやらなくなって数年後、私は東京マラソンに参加することになる。多分であるが、私が関わった路上で生活する方々は、東京マラソン実施前、強制撤退されることになる。残念ながら、ランナーと路上の方々との関係は、そういうことになる。
暖かくなったら、職場から銀座まで走りたいと思っている。春が来るのが待ち遠しい。