10月。私は緊急下船にて急いで自宅へ帰ってきた。
「おーい。帰ってきたぞ。」
何度、呼びかけても返事が来ないのはすでにわかっていた。
「お~い。」
いるはずのない相手に分かっていながらも何度も声をかけた。
奥の部屋へ移った。
奥の部屋。いつも必ずここにいたお袋はすでにいなかった。
なぜならば、お袋は救急車で運ばれていった。私はそれを二日前に妹から聞いていた。
お袋は20年間、必ずこの場所を動かなかった。もう2年以上、玄関から外へもでていなかったはずだ。
涙がこみあげてきそうになった。
しかし、まだ、このときはお袋は生きていた。
本当にお袋と俺は仲が悪すぎた。
そして、お袋は二度とここには戻ってはこなかった。