(神奈川松田ハーブガーデン。季節には前後左右すべてがこの風景に。)

 

 

以前に書いた以下の記事、「一字一句の重要性を知る」ですが、

本記事作成時において、未だ税理士試験のハッシュタグで上位に残っています。

 

多くの方に読んで頂いていること、感謝の至りです。

今回は、御礼の意味も込めて第二弾を投下します。

 

お題目は「カッコ書きの役割」です。

普段何気なく通り過ぎる部分であり、講義内でもさらっと確認して終わりの部分。

 

いわれてみれば当たり前の話ばかりですが、

何点か「再確認」してみましょう。

 

なお、条文は以前のものに合わせ所得税法から採り出します。

予めご容赦下さい。

 

 

1.カッコ書きは直前の語句を補足する

 

カッコ書きの最も重要な役割は、直前の言葉を補足(修飾)することです。

限定をする場合、何かを排除する場合等、幅広く用いられます。

 

構文としては、例えば以下のケースがこれに該当します。

(1) 「~である者(××に該当する者に限る)は、~」

(2) 「~の金額(××により補てんされる部分の金額を除く。)を~」

 

では、参考条文をアップして、例示を確認します。

 

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【参考条文:所得税法第73条、医療費控除】

第七十三条 居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払つた場合において、その年中に支払つた当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(…)を超えるときは、その超える部分の金額(…)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

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カッコ書きが補足したり修飾する範囲はどのように判断すればよいでしょうか。

これは残念ながら文脈から判断するしかありません。

 

上記の条文ならどこまでがその範囲となるでしょうか。

それは「その年中に支払つた当該医療費の金額」となるでしょう。

 

条文が所得税であること、所得税が暦年単位で課税することを考えれば、

医療費を支払った年が軸、保険金等はそれに合わせる形が基本だからです。

 

 

1.一度カッコ書きで定義する「以下同様」

 

条文は、一度定義した言葉を類似する別の言葉で置き換え「以下同」とし、

文章の冗長さや文章量が膨大になることを避けています。

 

条文上、そのような書き方がなされた場合には、

その状態を維持したまま読み下すことが強制されます。

 

構文としては「A、B及びC(以下「A等」という。)がある場合には~」

このようなケースが該当します。

 

では、参考条文をアップして、例示を確認します。

 

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【参考条文:所得税法第30条、退職所得】

第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。

2 退職所得の金額は、その年中の退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(…)とする。

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上記では、第一項のカッコ書きで定義付けを行った上で別の言葉に置き換え、

以後の文章ではすべて置き換えた言葉を使い、定義付けを引き継いでいます。

 

この場合、第一項で「退職手当等」という言葉の置き換えをしないと、

以下のような文章となり、読みづらくなりますよね。

 

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【置き換えをしなかった場合】

第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(→このカッコを削除)に係る所得をいう。

2 退職所得の金額は、その年中の退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の二分の一に相当する金額(…)とする。

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この場合には「退職手当等」の範囲をまとめていないため、

何度も同じ言い回しを繰り返すこととなります。

 

だけでなく、第一項と第二項の「給与」が同じものなのか、

一々一字一句照合する必要も生じます。

 

カッコ書きで「退職手当等」という言葉に置き換えるだけで、

無駄な文章と大幅な手間が排除されるのです。

 

 

1.似たような文章で扱いが異なる(カッコの位置の大切さ)

 

続いて、似たような文章なのに

カッコ書きの場所で扱いが変わるケースを確認します。

 

対象となる参考条文が非常に長いため、

要点のみ記すこととします。

 

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【参考条文1:所得税法第73条、医療費控除の抜粋】

 ~支払った医療費の額(控除される額を除く)の合計額が

【参考条文2:所得税法第76条、生命保険料控除の抜粋】

 ~支払った生命保険料の額の合計額(控除される額を除く)

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両者の構文は同じ流れですが、

合計額とカッコ書きの位置がずれています。

 

これによって「控除される額」が個々の額に対応するのか、

それとも合計額に対応するのかが変わります。

 

医療費控除の場合には、個々の金額にカッコ書きが付いていますから、

個々に控除処理をした後の額を合計せよと指示しています。

 

一方、生命保険料控除の場合には、合計額にカッコが付いていますから、

合計後の額に対し一括して控除処理をせよと指示しています。

 

これはいわゆる「個別対応」「トータル対応」のどちらに該当するかを示したものですが、カッコ書きの位置関係一つで処理が変わる部分です。

 

 

ここに限らずですが、カッコ書きの位置を大切にせよという根拠は、

こういった読み下しが必要になるからです。

 

理論暗記の際は、ちょっと意味を考えながら位置を確定させましょう。

 

 

 

続きはまた次回。

今回もお付き合い、ありがとうございました。