会社が役員又は従業員に対し、福利厚生施設の運営費等を負担した場合、利用者が受ける経済的利益(所得)には課税されません。
また、法人が負担した福利厚生費の運営費等は、法人の損金になるため節税に繋がります。
この節税方法は、「お金の支出を伴い、税金を減らす節税」であるため、資金繰りには注意が必要です。
ただし、この福利厚生費の運営費等は、場合によっては税務署から給与とみなされてしまう可能性があります。この場合には会社と従業員のどちらも負担となってしまいます。
今回のブログでは、福利厚生施設の運営費等が給与とされないための要件についてご紹介させて頂きます。
1.福利厚生施設について
福利厚生施設とは、具体的には下記のような施設が該当します。
体育館、運動場、娯楽室、売店、食堂、診療室、宿泊所、保養所等
上記施設は、「事業活動上必要な施設」と「専ら従業者の福利厚生のために設けられる施設」とに区分されます。
福利厚生施設は、事業の性質、施設の利用の実態等から判定を行ないます。
上記のような施設が、事業活動上必要な施設と認められなければ、福利厚生施設となります。
例えば、下記のような場合が「事業活動上必要な施設」に該当します。
(1)長時間労働であるため、途中で仮眠を入れないと業務に差し支えるなど、業務遂行上必要な施設として就業規則等に基づいて設置されている休憩室や仮眠室
(2)必要に応じて会議室や研修室として使用する場合の休憩室
事業活動上必要な施設は給与となることはありませんが、福利厚生施設は給与とみなされる場合がありますので注意が必要です。
税務署が、福利厚生施設の運営費を給与として認定した場合、源泉徴収義務者である会社は、不納付加算税と延滞税が課せられる場合があります。
2.福利厚生施設の運営費が給与となる場合
福利厚生施設を利用した役員及び従業員が受けた経済的利益は、上記で説明したとおり原則的に給与とはならず所得税及び住民税が課されません。
ただし、所得税法基本通達36-29によって、下記の場合には給与となるため注意が必要です。
(1)経済的利益が多額である場合
福利厚生施設の運営費の金額と利用者の実際の負担金額との差が多額である場合は、その差額が給与とみなされ所得税及び住民税が課税されます。
(2)会社役員だけを対象としている場合
実際の利用者が役員のみであった場合には所得税及び住民税が課税されます。
上記のように福利厚生施設は使い方を誤れば、給与となってしまい会社と従業員のどちらも負担となってしまいます。
3.おわりに
会社は、福利厚生施設を運営することで様々なメリットを享受することができます。
他社よりも魅力的な福利厚生があれば、働きやすさに繋がり、人材確保にも繋がりますので、要件を踏まえた上で一度検討してみてはいかがでしょうか。
【参考URL】
国税庁HP
「給与等に係る経済的利益」
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm