密林の語り部(岩波文庫):マリオ・バルガス=リョサ | 夜の旅と朝の夢

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密林の語り部 (岩波文庫)/バルガス=リョサ

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風邪引いてしまったガーン

さて、2010年のノーベル文学賞作家バルガス=リョサ(1936‐)の作品です。本ブログでは、『楽園への道』に続いて2作目の紹介です。去年ノーベル賞を獲ってから再版や新刊が数多く出版されていて、未読のものは全て買っているのですが、読むのは本書が初めて(汗 ああ積読本が溜まっていく・・・

本書は1987年に出版され、日本では以前新潮社から出ていましたが、本書はその改訳版です。

作者の分身とも言うべき主人公がアマゾンに住むマチゲンガ族の写真を見ると、そこには、学生時代の友人と思しき人物が写っていた。友人は、顔に痣があるユダヤ人であったが、マチゲンガ族との交流を経て、分散して暮らしているマチゲンガ族に神話などを語り歩く語り部になっていた。

1章と8章とがそれぞれ、プロローグとエピローグになって、それ以外の章では、主人公の昔の思い出と、マチゲンガ族の語り部の話が交互に描かれています。別々の話を交互に描く手法は『楽園への道』でも取られていて、リョサのお得意な手法かもしれません。

メインは、どちらかと言えば、マチゲンガ族の語り部の方でしょうか。主人公の思い出は、要するに語り部の話の一環としても取れますから。

本書で一番驚くところは、インディアンであるマチゲンガ族の描き方。ヨーロッパ的な未開人としての描き方とは別の、本当に部族内部から語っているような語り部の話は他に類を見ないと思います。そこに、文明の衝突というか搾取に関する問題などを加えた本作は、流石はノーベル賞作家というべき傑作でしょう。文庫で840円。お得である。