下腿の筋群は、骨、骨間膜、筋膜により4つの区画(コンパートメント)に分けられます。この教材は左下腿を上1/3付近で切断し、切り口を観察したものです。区画は、①前区画、②外側区画、③後方浅区画、④後方深区画に分けられ、区画ごとにそれぞれ、屈筋群、伸筋群、腓骨筋群が入っています。
前区画には、前脛骨筋、長母指伸筋、長指伸筋が入っていますが、この教材は下腿の上1/3の高さのため、長母指伸筋は含まれていません。
A: 前脛骨筋
B: 長指伸筋
外側区画には、長腓骨筋、短腓骨筋が入っていますが、こちらも下腿の上1/3の高さのため、短腓骨筋は含まれていません。
C: 長腓骨筋
後方浅区画には、腓腹筋、ヒラメ筋が入っています。腓腹筋は二頭筋で、それぞれの名前を外側頭、内側頭といいます。
D: 腓腹筋外側頭
E: 腓腹筋内側頭
F:ヒラメ筋
後方深区画には、外側から長母指屈筋、後脛骨筋、長指屈筋が並んでいます。一番外側にある長母指屈筋はゆくゆくは足の母指末節骨底に停止するため、この3筋の位置関係は高さによって大きく変わります。内果の後方を通過する際は、前方から後脛骨筋、長指屈筋、長母指屈筋となります。
G: 長母指屈筋
H: 後脛骨筋
I:  長指屈筋
伸筋群である前区画と、屈筋群である後方深区画の間には下腿骨間膜(↑上の画像)が存在します。
伸筋群と腓骨筋群の間の肥厚した筋膜を前下腿筋間中隔(↑上の画像)といいます。
屈筋群と腓骨筋群の間の肥厚した筋膜を後下腿筋間中隔(上の画像)といいます。
屈筋群の浅層と深層の間の肥厚した筋膜を横下腿筋間中隔(↑上の画像)といいます。

コンパートメント症候群(compartment syndrome、区画症候群)とは、何らかの外力(骨折など)で区画内の筋断裂や内出血が起こったり、運動負荷による透過性の亢進、各区画の内圧が上昇することにより、循環障害が起こり、神経や血管が圧迫され、痛みや腫れ、重だるさやしびれなどが生じたものです。
区画の壁を構成する骨、骨間膜、筋膜はいずれも強靱なので、区画内に出血、浮腫などが起こると圧が上昇します。よって、この中を通る血管や神経は圧迫され障害されます。循環障害により壊死をきたしたり、神経障害が後遺障害となることもあります。いったん組織が壊死に陥ると、機能障害は永久的になるため初期の迅速な判断が重要です。
needle manometer法で、針を各区画に刺して計測し、内圧が30mmHg以上の場合、本症とみなします。
もっとも多く発症する前方部コンパートメントの場合、下腿前外側部の痛みのほかに、足関節の背屈制限なども生じます。

特に前腕に起こるものは、フォルクマン拘縮(Volkmann拘縮)といいます。これは、肘周辺の骨折や脱臼により、区画の内圧が上昇し、循環不全が起こり、筋の壊死、末梢神経麻痺、肘から手にかけての拘縮、橈骨動脈拍動が触れない、などの症状が起こります。
拘縮肢位は、①前腕回内、②手関節屈曲、③CM関節伸展、④母指内転、⑤IP関節屈曲となります。

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