今から約二十数年前、私は半導体製造装置を製造する企業の下請け(人材派遣企業)に在籍していた。

現在半導体製造装置製造企業は年商約二兆円と世界的に有名なメーカーである。

私はその新規開発試作部の下請けに所属していた。

 

退職する数か月は月に残業200時間を超えていた。製造した機械の納期を合わせる為に休日出勤も正月も盆休みも関係ない。

機械を納品する二、三日前に設計から仕様変更書が届き徹夜も余儀なくやったことも数回あった。

 

しかし親会社はしっかり週休二日制で長期休暇も大企業並みだった。

研修という名のもとに朝の八時から翌日の朝四時まで勤務し、また朝八時から四時までという日が四日間続いた。人材派遣会社から親会社までの区間は車で一時間半くらいの距離。仕事が終わってすぐに風呂に入り軽く食事、30分くらい横になってまた人材派遣会社へそれから親会社に向かう。

もちろん自宅から人材派遣会社まで車で30分はかかっていた。

 

これらの出来事はよくある事かも知れない。しかしいちばんこたえたのは親会社の派遣社員に対する姿勢だった。

 

当時の親会社の新規開発部担当課長Sは某大学の柔道部主将という肩書だった。

オリンピックで名を馳せた山下をご存じだろうか。彼はそんな感じ。結構社内でも強面で有名だった。彼が作った人材派遣業社員があるべきルールがある。

親会社に来社する際はジーンズ禁止、茶髪禁止、髭の剃り残しはNG、親会社社員への挨拶の励行その他。しかし親会社の社員はジーンズ、茶髪、髭を伸ばしている社員がたくさんいた。

 

反抗的な態度を取ったという名指しの報告書が派遣会社に送ってくる。機械を納める際にクリーンスーツを着るのだが首元を止めるホックが外れていたと指摘され出入り禁止二か月を言い渡され辞めた派遣社員もいた。

 

親会社新規開発試作部社員の一部に下請け会社のKMとK電子のリーダーと親密な社員がいた。彼らは休み時間によくポーカーやUNOをやって遊んでいた。彼らはよくチラチラこちらを見ながらひそひそ話をしていた。私の会社の後輩がよくターゲットにされていた。そして私も。そんな研修を三回経験した。

 

後に私は精神疾患を患い妻と離婚、その地を離れ精神療養施設に世話になった。

 

いかに世界的に有名なメーカーになろうとも根本はそういうところだ。上がそういう姿勢だから下もそうなる。この親会社の他の事業部下請けの話を聞いても良い噂は無かった。残業も私の会社より多かった。

 

この半導体製造装置メーカーはさまざまな礎の元で大きくなった会社である。  

 

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