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ジェットが雲の上でクルージングに入ると、もう機内はパビロンそのまま。コカ インを飲む。椅子を倒して人目もかまわず、あちこちでおっぱじまる。横を誰が通ろうがお構いなし。声と匂い。そんな中で最後の男だけが周囲にまるで無関心で黙って本を読んでいる。

あとでカポーティが、あの男は誰なんだい? と聞くと、ああ、あれ?ステュだよ 。イアン・ステュアートだ。ピアノを弾いてるんだという答え。

ストーンズがローリンストーンズと名乗っていた頃からいる男。6人目のストー ンと言われた男です。もう亡くなった。そのときカボーティは、彼がストーンズのメンバーになれなかった理由が分かるような気がしたそうです。

カポーティは晩年、作家の仮借ない目で見てきた上流社会の真実を出版しようと した。ところが、自分のことが書かれていると知るや、出版社には脅しの電話が続々と入ってきた。脅しと言ったって上流社会ですからね。弁護士を使って慇懃にやる。結局、出版社はカポーティの本を出すのを諦める。

私が作家であることは承知だったはずだ。今さら本を出すななんて。これが出版されればベストセラー間違いなしなのに。そう言ってカポーティは口惜しがった そうです。

原稿に書かれている人物がみんなあの世に行った後で、この本は出版されるはずだ。ワタシはたぶん読めないでしょうね。残念だ。